27 悪役令嬢に転生した干物女は刺身を食べたい。(夏合宿編1)
前回までのあらすじ
冷しゃぶサラダは夏に食べたいね!
「おかしい、こんなの絶対おかしいよ!!!!」
ミゲルが涙目で叫んでいる。
「何をおっしゃいますかミゲル様。健康な肉体に健康な精神が宿るのですよ! 良き領主となるためにも、さぁ、あと50往復ですわ!」
体操着姿のヨイが叱咤激励して、砂浜を走り出す。
何が起きているかといいますと。
私たちジャージ隊は、ユージーン家の別荘に招待された。
さすが海辺の領地をお持ちの貴族。
プライベートビーチがある。
そしてみんなで砂浜に集まって何をするのかと思ったら、体育会系部活的な合宿だった。
筋トレに目覚めて以来、日々ムキムキになっているヨイは今、かつてないほど幸せそうに笑いながら走っている。
砂浜は日光の熱を吸収してめちゃくちゃあっつい。
公務があるからと断ったカイン、命拾いしたな。
真っ先に脱落したのはミゲルだった。
そして砂浜に膝をついてさっきの弱音。
「おかしいわねー。あたしの知るユージーン別荘イベントって、みんなでわいわい水着をきてはしゃぐものだったはずなのだけど。一番好感度の高い相手と夜の砂浜でデートするスチルつき」
コリンは一人だけパラソルの下でチェアに座り、冷え冷えのフルーツジュースを飲んでいる。
しかも、侍女二人に扇子であおいでもらっている。
家格の違い!
「ま。それはあくまでもゲームの話で、実際のヨイはそんな乙女チックな子じゃなかったってことね。転生ものあるある」
「コリン、割りきるのはやくない?!」
普段インドアな我が弟、ミラの前だからか必死でついていっている。
「ふ、ふふ。そうですね、ヨイ様の意見に賛同します。これから領主になる者がひ弱では、領民が不安になる。俺も鍛えましょう!」
「わたくしもがんばりますわ! ヨイ様!」
ミラも嫌な顔せず走っている。
貴族の子息令嬢が体操着姿で砂浜をひた走るこの光景。
誰が異世界系乙女ゲームのイベントだと思うだろう。
「うふふ。クリティア様がデザインされたジャージと体操着、動きやすいからトレーニングにとっても最適で、わたし五着ずつ持っていますのよ」
「まー。大得意様。うれしいわー……」
私、熱中症になりそう。頭と足がいたい。
「昼食はうちの料理人が腕をふるってくれます!」
「わー、たのし、み……」
今、胃袋に食べ物が入る気がしない。
ミゲルのテンションはもはや最底辺だ。
「うう。おれが見たかったのはこういうのじゃないよ……。この手の恋愛ゲーってさぁ、海辺で水着じゃないの? ポロリイベントないの? せっかく美女揃いなのにみんながクソダサ体操着ってあり得ねー」
例え着ているものが水着だったとしても、ヨイの脳筋は変わらないから砂浜ダッシュは避けられない。
そんなこんなでヨイとコリン以外のみんながボロボロになって別荘に帰還した。
夕食はステーキ! パエリア! とにかくごちそうだ。
めちゃくちゃジューシーで美味しいけど、できたら元気なときに食べたい。
「ビールもありましてよ、クリティア様!」
ヨイが手を叩くと、メイドが冷え冷えビールを運んできた。
「わーいビールだー!」
水がわりに一気飲み!
ビールがあれば元気100倍!
タコの唐揚げもでてきた。ウマー!
「ちょっと私も一品つくっていい?」
「もちろんですわ、クリティア様。誰か調理器具を揃えて」
ヨイの一声で使用人一同が動き出す。
ちょっくらテーブルを借りて、領地の水揚げされた魚を持ってきてもらった。
ひらいて内蔵をとり三枚にしたら皮をはぎ、薄くスライスして皿に盛る。
大根も薄く切って千切りしてツマにする。
そして私の作った醤油!
「刺身よ! いきのいい魚は焼かずに刺身でも美味しいの!」
「わーい! 刺身!」
ミゲルが復活して刺身を取りに来た。
日本人の血が騒ぐわー!
異世界組は生魚に拒絶反応を示すかと思いきや、
「まー! 美味しいですわ!」
「焼かない魚はプリプリしてますのね。食感が好みです!」
ミラもヨイも、もりもり食べている。
「おいっしー! あたし、刺身なんてクリスマスしか食べられなかったわよー。はー、おいしぃー、おいしー!」
刺身を一番いっぱい食べていたのはコリンだった。
みんなで楽しく夕食、のあとは。
「はいはいはーーい! せっかくの夏合宿、とくれば! 怪談ナイトだー!! みんな怖い話しよー!!」
なぜか、ミゲルの提案で百物語をすることになった。
もしかして「キャー怖い、ミゲル助けて」って姉かヨイに抱きつかれるムフフ展開を期待してるのか。
私も怪談ナイトに強制参加させられることになった。
作者が一番好きな刺身はアジである。
皆さんが好きな刺身はどれですか。





