25 悪役令嬢に転生した干物女はお祭で農民鍋を作る手伝いをする。
前回までのあらすじ
コリンのお願いでシュークリームを作ったよ。
クリティアです。
今日は領地運営のお仕事ですわ。
父上が農村部の人口減少を食い止めるための事業を開始したから、その手伝いだ。
田舎の若者が大都市に憧れて出て行ってしまうように、都会の喧騒が苦手で静かなところで暮らしたい人がいる。
だから、田舎でのんびり暮らしたい個人や家族を数組募った。
移住費用をフローレンス家が持つ。
その代わりに最低五年はフローレンスの村で暮らすこと。
今日はその移住者の方たちがやってくる日なのだ。
村のみんなが歓迎のお祭りを開きたいと言って、私は秒でオーケーを出した。
田舎のとれたて野菜うまい!
自然の中で遊べるの最高!
この村の人たちみんな朗らかでいいな。
と思ってもらえるように。
デールとクックは調理係、ジーニャとルールーには会場の手伝いに来てもらった。
村の大きな広場では、村の男性陣がイスとテーブルを並べていく。
女性陣とジーニャ、ルールーがテーブルクロスを広げる。
孫の手を作ってくれたこの村は、クックの故郷。
クックは久しぶりに故郷の両親に会って、いつもよりしまりない顔をしている。
歓迎会の主役は村人たち。歓迎の料理を作るつもりだと聞いている。
農民鍋、ゆでたポテト、燻製ベーコンなどなど。
クロムは移住者の案内、私は調理手伝いだ。
父上と母上は開会のころ到着する。
「へへっ。皆さん定住してくれるといいですね、お嬢様。移住してくる皆様に、俺の故郷を好きになってもらいたいです」
「農民鍋ってどんな料理? 私も手伝うから教えて」
「もちろんです! いやあ俺が教える立場になれるなんて嬉しいです! 料理人冥利に尽きます」
「クックの故郷ならぼくが花持たせないとな。クック。今日はお前が料理長でぼくが補助だ」
デールも袖をまくってクックの手伝いをする気満々だ。
クックが玉ねぎを手に宣言する。
「それでは、農民鍋作り開始します!」
クックがメイン、私とデールが補助。いつもと違うけどこういうのもいいね。
デールがトマトの皮をむいて細かく切り分け、ボウルにあげておく。
私は玉ねぎ、ニンニクっぽいやつ、芋、赤ピーマンをざっくり切り分けていく。
今日お祭で出す料理に使うのは、全部村でとれる野菜たち。うちの領地は自然の恵みが豊かでうれしいね。
切った玉ねぎとニンニクをフライパンで炒めて、ベーコンを細長く切って香りづけする。
ハーブを少々ちらして、芋を追加。きつね色になるまでじっくり焼いていく。
「はー。この時点でもう食べたい」
「だめですよお嬢様。まだトマトを入れていません」
「言ってみただけよ。歓迎の料理をつまみ食いなんてできないわ」
炒めた野菜とベーコンを鍋に移して、トマトを投入。じっくり煮詰めて鳥骨でとったスープを注ぎ、塩とスパイスで調味して、完成。
「なんておいしそう! 私、そぼくな鍋料理って大好き」
実家にいた頃は何鍋にするかで家族でジャンケンして決めるくらい、高頻度で鍋料理を食べていた。豆乳鍋、愛してる。
小皿にちょっととって一口味見。
「おいしい、すごくおいしい! トマトの風味が凝縮されていて、野菜の甘みとベーコンの香ばしさ。……いいわね、農民鍋! これなら絶対、移住者のみんな喜んでくれるわ」
「ぼくもこの鍋好きだな。こんど使用人のみんなのまかないにしてみるか」
「ほんとですか? やったー!」
クックは子どもみたいに喜ぶ。
ほかの料理を用意していた女性陣の中から、クックのお母さんがやってきた。
「ごきげんよう、クリティアさま。うちの息子がご迷惑かけていませんか?」
「そんなことないわ。いまだって、ほら。こんなに美味しく料理を作ってくれたもの。お母さんも食べてみてくださいな」
別の小皿に盛って、クックのお母さんに渡す。お母さんはコクリと飲んで涙を浮かべる。
「あれまあ。クック、いつのまに農民鍋をこんなにうまく作れるようになったんだい。母さんうれしくて涙が出るよ」
「やめてくれよみんなの前で。俺、ちゃんと領主様のところで頑張っているから泣かないでくれよ」
異世界でも、母親っていつでも子どものこと心配しているのね。いいもの見せてもらったわ。
できた料理を会場のテーブルに並べていき、移住者の皆さんも卓につく。
父上と母上、村長が歓迎の挨拶をして、飲めや歌えやのパーティーが始まる。
クックとジーニャはご両親とならんで座り、村の人たちが代わる代わるクックに話しかけている。
ルールーは私のとなりで取れたてニンジンを生でかじってご満悦。
クロムは私の隣で農民鍋を食べ、お茶を飲んでいる。普段固い感じだけど、笑いあう村の人たちを見る顔はうれしそう。
うん。クロムならいい次期領主になれる。お姉ちゃん保証するよ。
「まさかお嬢様と坊ちゃまが祭りの手伝いに直接参加してくださるなんてなあ」
「また来てくださいよ、子爵様、奥方様も、お嬢様と坊ちゃまも。我々はいつでも歓迎しますゆえ」
「ありがとう。私もまた来たいわ。次は農民鍋以外の料理も教えて」
和食とこの世界の料理を融合させた創作料理をするのも楽しそうだ。
私も、両親やクロム、村人たちと同じ。移住してくれた人たちにここを好きになってもらいたい。
もっと領地を豊かにできるよう、頑張って稼ごう。
みんなで楽しく笑い、歌い、宴は夜遅くまで続いた。
農民鍋・ドイツの伝統料理。
本来はひき肉を使うけれど、今回はベーコンで代用。
パプリカやズッキーニなどありもの野菜を入れましょう。
皆さんのところに郷土鍋ってあるでしょうか。うちの土地の名物、これ食ってうちの町を好きになれ! ってやつ。
私は芋煮が好きです。醤油ベース味噌ベースどちらも好き。とろとろスープうま!





