23 悪役令嬢に転生した干物女は2人目の転生者と出会う。 ☆挿絵あり
前回までのあらすじ
ヨイが筋肉を活かして作ったうどんは絶品だった。
今日も元気にレシピ本の作業だ。
カインから、「うどんと同じくらいサラサラ食べられるものがほしい」というリクエストがあったから、お茶漬けを作ろうと思う。
ヨイからもらった魚の一夜干しが魔法冷凍庫に保管してあるから、それを焼いて身をほぐす。
手製の七輪で焼き魚〜。
はー、いい香りだわ。
うちわ代わりの扇子で仰いでいると、ジーニャが私を呼びに来た。
「クリティア様。公爵家のコリン・チョコザイナー様がお見えです。客間でお待ちいただいております」
「わかったわ」
ミラの家の集まりや王城のパーティでいろんな令嬢と挨拶を交わしたけれど、コリンという令嬢とは出会わなかった気がするわ。
私の記憶にないだけで、一度くらいは会っているかもしれない。
料理の手を止めてコリンさんに会いに行く。
客間にいたのは10歳にもならない女の子だった。
長い赤毛を結い上げていて、釣り目で勝ち気そう。真っ青なフリルドレスがよく似合っている。
人払いをしてから、コリンは私を見上げて言う。
「はじめまして、クリティア。あたしはコリン・チョコザイナー。前世の名前は功利彩夏。あなたも日本人でしょう? あなたが作るものってジャージだの焼き鳥だの、日本人ぽいものばかりだもの」
転生人2人目、遭遇。
ごまかす必要もないし、もしかしたらコリンなら、ここが何を原作にした世界なのか知っているかもしれない。
「私は栗田玲奈。お察しの通り日本人よ。でも、ゲームとかアニメとかそういう趣味がなかったから、ここがなんの世界かわからないのよ。あなたは知っている?」
私の質問に、コリンは深くうなずく。
「ええ。20代の頃ハマっていた乙女ゲーム“真実の愛を探す乙女”略してシンオトの世界だと思う。主人公のミラがいるし、悪役令嬢クリティアがいるし、ミラの友達のヨイもいる。それと、クリティアの弟も攻略キャラなの」
「そうなのね。でも、私がクリティアとして日本食を作るようになってからだいぶ経つけれど、なぜ今になって会いに来たのかしら?」
「あたしが記憶を取り戻したのはちょうどひと月前よ。熱を出して寝込んでいる間に、前世のことやゲームの知識、コリンとして生きてきた記憶が次々と頭の中に入ってくるんだもの、驚いてしまったわ」
「なぜその展開が私に訪れなかった……」
クリティアとして生きた20年の記憶なんて流れてこないし、婚約破棄イベントの回避方法がなんにもわからんかったわ。
この世界の神様は不平等だな。
「あたしのゲーム知識だとクリティアは婚約破棄されたあとミラに逆恨みしていびり倒す悪役なの。それで家の名に傷をつけたとして、フローレンス家を追われる」
「お花畑に未練なんてあるわけないじゃない」
むしろパーティの会場で婚約破棄宣言してくれてセンキュー。
あんなのと夫婦になるなんてまっぴらよ。
「お互い転生者だとわかったところで、あなたは何を求めてここに来たの? 日本を懐かしんで話したいわけじゃない、のよね?」
「ええ。物分りが良くて助かるわ! あたし、銀座のカフェで出てくるようなフルーツと生クリームとアイスがデコられたオシャレ可愛いスイーツが食べたいの。ここの世界のは紅茶にスコーンのようなシンプルなもので物足りないの。オシャレパフェ、作れないかしら? 作りたくてもあたし、料理あんまり得意じゃなくて。材料費はあたしがもつからお願い! 同郷のよしみで!」
ザギンのカフェでパフェなんて食ったことねーわ。ひとつ3000円くらいしそうだ。
私は半額シール200円の焼き鳥で満足してた干物ぞ。
昼飯は立ち食いそば屋で300円のかけそば食ってる女よ。
頼む相手を間違えている。
「……………材料が手に入るかどうかの問題もあるから、考えさせてほしいなぁ、なんて」
「そうね、流通の問題もあるものね。パフェが無理なら、いちごたっぷりのマリトッツォ」
「ま、まりもっさん?」
「マリトッツォよ。マ・リ・トッ・ツォ! もしくはいちごとバナナとチョコソースにブラウニーを乗せたクレープでもいいわ!」
えーと、新しく出会った転生者は、
干物と180度違う方向のオシャレ女子でした。





