20 悪役令嬢に転生した干物女はコロッケを食べたい。 ☆挿絵あり
前回までのあらすじ。
王子から出張依頼を受けたよ!
出張キッチンカーで両陛下にWASHOKUを作ることになった。
なんと、ミラとヨイも話を聞き駆けつけてくれた。
「お姉様、このミラに手伝わせてくださいませ! 陛下にもWASHOKUの良さを知っていただきたいです!」
「クリティア様、ミラ様、わたしもお力添えしたいですわ!」
ミラが来るなら当然ミゲルも来る。
「楽しそー! 手伝う手伝う! だからおれにもわけて!」
さらには、クロムも「姉上に任せるのは心配だから一緒に行きます」と言い出した。
いつの間にやらキッチンカーチームは、有志メンバーで大所帯になっている。
ありがたい限りだ。
本番を3日後に控え、今日は事前準備の会議を開いた。
私の調理場は改築が進み、隣に小上がりを作った。ちゃぶ台2号も設置している。
メンバーに加えて、依頼主であるカインも出席した。
全員でちゃぶ台について、陛下をおもてなしするメニューを決める。
「みんな。僕のわがままを聞いてくれてありがとう。当日はよろしく頼むよ」
カインに言われてみんなやる気だ。
「陛下にご賞味いただく品なら、おにぎりは欠かせませんわ! わたくし、おにぎり作りならお手伝いできます!」
ミラが鼻息荒く言う。
「ならわたしはタコの唐揚げを作ります! いいタコを持ってきますわ!」
ヨイも手を挙げる。
「なら俺は何をしようか、姉上」
「クロムはミラ様とヨイ様が作りやすいようサポートをお願いするわ」
「わかった。陛下とお妃様をおもてなしできるよう、尽力しよう」
最近のクロムは、「料理は使用人の仕事。俺たち貴族がすることじゃない」なんてことはもう言わない。いい傾向だ。
「クリティア様は何を作るんですか。焼き鳥? それとも串かつ?」
「私はコロッケを作ろうと思います」
「お姉様。コロッケ、というのも女神様からの啓示かしら?」
「そうです。これから作るから、みんなの感想を聞きたいわ」
啓示というか私が食べたいし食べてもらいたいだけである。
手軽に食べ歩きできて、美味しい日本のグルメといえばこれだ。
高校の帰り道。肉屋のコロッケを買って店の前のベンチに座って食べるのが日課だった。
店のおばちゃんや近所のおばあちゃんと他愛ないおしゃべりする、あの空気感がたまらなく良かった。
「いいなー! ねぇねぇクリティア。おれ、コロッケ作るの手伝う! だからおれのを多めに作って!」
「そうね。サポートはミゲルに頼むわ」
みんなにはお茶を飲んで待っていてもらう。何も言わずともみんなにお茶を出してくれるジーニャ、できた侍女だわ。
私とミゲルで調理場に立ち、コロッケ作りに取り掛かる。
ジャージの袖をまくりあげて、包丁を手に芋の皮むきをはじめる。
「私はマッシュポテトを作るから、ミゲルはひき肉と玉ねぎを炒めてくれる?」
「おっけー」
ミゲルは鼻歌交じりに玉ねぎをみじん切りにしていく。
「おれさ、部活帰りに友だちと惣菜屋に行くの好きだったな。おれはもっぱらからあげだったけど、コロッケもたまに食ってた。友だちはアジフライ一択だったし」
「わかるー。美味いよね、学校帰りの買い食い。私は肉屋でコロッケ買うか、おばあちゃん家に行ってうどん食べてた。おばあちゃんが手打ちうどん屋でさ」
前世の年齢は10歳くらい離れているようだけど、こういう話題って年齢関係なく楽しい。
どこの家の犬が吠えるから道を変えて帰ったとか、寄り道でゲームセンターに行ったとか。
雑談している間に芋が茹で上がった。マッシャーがないからコップのお尻でつぶして塩をひとつまみ。
「よし。ミゲル、炒めた玉ねぎとひき肉をここに入れて」
「おっけー」
マッシュポテトにひき肉と玉ねぎを入れて、混ぜこむ。
「私は衣を用意するから、コロッケの形にしてくれる?」
「小判型ね。あちちち」
「やけどしないように気をつけて」
「わかった」
子どもの手だから、ほどよいサイズの小判型が皿に並ぶ。
小麦粉をつけてとき卵にくぐらせ、さらにパン粉をまぶしたら揚げる。
屋台で立ち食い形式になる前提だから、紙を折って揚げ物袋を作った。
「できたわ! コロッケ!」
「おれは頑張ったからおれの分3つね!」
「いいわよ」
「やりぃ!!!! はぐ、むぐむぐ。うめー!! おれ料理の才能ある!」
前世以来のコロッケで、ミゲルのテンションが高い。
ミラが興味津々でかぶりつく。
「これがコロッケ。衣は串かつと同じなのですわね。はふ。あちち、ホクホクですわ!!」
「はふ、はふ、お芋はスープやフライドポテト以外でも美味しいんですのね」
ヨイも顔がほころんでいる。この国でポテト料理というと、ポトフやフライドポテトが主。
「美味い……」
クロムも気に入ったようで、口の周りに衣をくっつけて黙々と食べている。
カインにも確認を取る。
「殿下。これを陛下にお出ししても大丈夫かしら?」
「バッチリだよ! 父上も母上も、これなら絶対美味しいって言う。もう1つもらってもいいかな」
「……焼き鳥のときも思いましたけど、殿下って意外と大食いですよね」
「あ、だめだよ殿下! それおれの分!」
王子様に抗議するミゲル。
「じゃあ半分こしよう」
カインがコロッケを半分に割って、片割れをミゲルに渡す。
「ヤローと仲良くはんぶんこなんて。せめてかわい子ちゃんであれ」
本音ダダ漏れてるぞヒモ。
出勤してきたルールーが緑茶を運んできた。
「クリティア様のお茶はルールーがいれますの。って…………アフロさんですのーーー!!」
カインを見たとたんルールーが後ずさった。
彼はこの国の王太子様よ、とジーニャに説明されて二度驚いた。
奇抜すぎる変装でうろついていた人が次期国王様だなんて、信じたくない気持ちはわかる。
☆皆様がお好きな、学校帰りの買い食いメニューは何でしょう?
私はからあげ○んでした。





