16 悪役令嬢に転生した干物女はウーロンハイでナスの煮浸しを食べたい。 ☆挿絵あり
前回までのあらすじ。
マゴノテという名の、フローレンス領名産品が爆誕した。
(見た目がちょっとアレです。 クロム談)
母上から禁酒命令がくだされて少し経ち、ヨイがやってきた。
あれ以来さらにジャージを追加注文してくれて、今日はお出かけ用ジャージ(ピンクのリボンつき)を着用している。
ヨイのピンクの髪色と相まって可愛らしい。
私が着ると“息子の中学生時代のジャージを寝間着にするおばちゃん”なのに、ヨイが着ていると最先端のオシャレ着に見えるのはなんだろう。
美少女補正?
内面からくる美しさがジャージを天女の羽衣のようにしているのかしら。
ヨイが桐箱をうやうやしく捧げ持つ。
「クリティア様。先日はタコの捕まえ方と調理法を伝授してくださってありがとうございます。こちら両親とわたし、領民からのお礼です」
「うふふ。お礼なんてそんな。大したことじゃないですよ」
あけてびっくり、箱に入っていたのは細長い瓶。ワインよりゴツい。これはたぶん酒だ。
「こ、これは!」
「海外の親類から取り寄せた、ショチューというお酒ですわ。お酒なのに透明で、芳しいのです。クリティア様はお酒がお好きでしょう? 金一封よりこういうもののほうがお好きかと思いまして」
「ありがとうヨイ様! すごく嬉しいわ!」
さすがに母上とて、友からの贈り物を飲むなとは言うまい。ふへへへ。
ジーニャをちらりと見る。
「わたくしは何も見ておりません」
「よし!」
告げ口されないのであれば心置きなく飲める。
「ヨイ様も一緒に飲みましょう」
「お礼として持ってきたのに、良いのかしら?」
「一人で飲むより一緒に飲みたいわ」
前にミラからもらったウローンティーもあることだし……。
これはウーロンハイを飲めという女神からの啓示ね。
ウーロンハイに合うオツマミも作りましょう。
食糧庫にはナスと大根。
ナスのヘタを取って縦切りにする。隠し包丁入れときましょう。
油をしいたフライパンで両面じっくり焼き上げる。
塩で調味した煮干し出汁で煮込んで、皿に盛り付けたら大根をすりおろして乗せる。
ナスの煮浸し完成!
お次はメインのウーロンハイ。
グラスに氷を入れて焼酎を注ぎ、スティックでよく混ぜる。それから冷たいウローンティーを注げば出来上がり。
「どうかしら、ヨイ様。ナスの煮浸しとウーロンハイよ」
「まあ、とってもいい香り! いただきます。あつつ、ふー、はふー」
できたて熱々をフォークで小さくして、ヨイが一口ぱくり。
「おいひいれふわ!」
「それは良かった」
「んぐんぐ。このお酒とも合います! オーキナ王国だとクリームソースやチーズで調理することが多いですが、魚介出汁で焼き煮するのも合うのですね」
「さすが海辺の領の民。ヨイ様は舌が肥えていますね。これはユージーン領からきた商人が市で販売している煮干しです」
「自領でとれる食物は一通り口にしております。味を知らないものを人様に売るなんてできませんもの」
「その心意気、見習いたいです」
ヨイはクリティアとそう年齢が変わらないのに、貴族としての心構えが段違い。
「わたしもクリティア様を見習って、最近は一人でもタコを倒せるように鍛えているんです!」
「ふむふむ、鍛え…………って、タコを……倒す!?」
「クリティア様は素早く仕留めておられたでしょう。ですから国外から武術の講師を呼んで、毎日腕立て伏せとスクワットを20回ずつ100セットしているんですの」
ヨイは、ドーン! と腕まくりして力こぶを見せてくれる。
ジャージに隠れていたからわからなかったけれど、ヨイの腕が、前回会ったときより太い。
ヒョロもやしから大根。
可愛いのに脳筋なのね……。私が原因だと思うと、ユージーンのご両親に申し訳ない。
気に入ってくれたようで、ナスの煮浸しのお皿は空っぽになる。
「ここに来る途中、ロブソン・リフジンスキー様にお会いしましたが、「神に愛された美しい僕がユージーン家の入り婿になってやらんでもない」とよくわからないことを仰っていたのでお引き取り願いました」
お引き取り願う(物理)
いい笑顔でウーロンハイ2杯目を飲むヨイ。
ユージーン領の将来は安泰ね。





