81 遂に来た、ガチバトルイベント!
俺はダリの提案で、大剣を装備したダイナを装備した。
ちょっと何言ってるか俺も分からないが、それが一番端的に表現した言葉なんだから仕方ない。
もう少し詳しく説明するとしたら、大剣を持ったダイナの足首を両手で握り締めて持ち上げたのだ。
百八十センチを越えてそうな筋肉ムキムキのダイナを持ち上げてる姿は違和感でしかないだろうが、ゲームの仕様なんだから仕方ない。
装備品単体よりも、本体含めた方が軽く持てるってどんなバグだよって思うよな。
そんなこんなで、俺が剣と呼吸を合わせた一撃は、まさしく会心の手応えだった。
何か変な≪称号≫と≪スキル≫も得たし、せっかくなので俺達は西の一層ダンジョンへと向かって試し切りを行ったのだった。
▽
試し切りを終えた俺達は一度ログアウトすることにした。
そのままの勢いで狩りを結構長めに楽しんだので、休憩を挟んだのだ。
もう九時を回っているからな。
鬼コンビは今日はもう落ちるということで、そのままログアウトしていった。
明日は日曜日だというのに、何か用事でもあるんだろうか。
俺も一旦ログアウトして、三十分程してから戻ってきたところだ。
「ただいまです」
「おかえりなさいお姉様!」
「おかでござるー」
リビングにはリリィとサンゾウがいた。
リリィはソファでくつろぎ、サンゾウは天井に逆さになって張り付いている。
いつもの光景だ。
リリィの向かいのソファに腰かける。
ズモッと身体が沈んでフカッと支えてくれる、相変わらず高級そうな感触だ。
リリィは俺が座るのを待ってから、目を輝かせて身体を起こした。
テーブルを挟んでいるので、そのまま手をついて前のめりの体勢だ。
「お姉様、次のイベントの詳細が出ましたよ!」
「おお、本当ですか」
「はい、先程更新されたお知らせに載っていました!」
「拙者も確認したでござる。遂にこの時がやってきたでござるな」
「そうね。私達≪最強可愛い姫様のギルド≫の存在を世界に知らしめるチャンスよ!」
「どんなイベントなんですか?」
「ふふふふふ、第三回イベントの内容はなんと、≪第一回 最強ギルド決定戦≫と、≪第一回 最強プレイヤー決定戦≫、です!」
最後に一呼吸溜めたリリィは、ババーン! と効果音が付きそうな勢いで立ち上がった。
イベントを説明するのがよっぽど楽しいらしい。
確かに、今の台詞はとても興味を引かれるものがあった。
「今回のイベントは二つなんですか?」
「そう、今回は豪華二本立てなのでござる!」
「お姉様が率いる≪最強可愛い姫様のギルド≫なら、最強ギルドという称号ですら手中に収めることは可能な筈です!」
「うむ。拙者も全力を尽くすでござる!」
「お姉様なら最強プレイヤーもいけるかもしれません!」
「姫ならば難しくはないでござろうな。拙者も、最強プレイヤーの方にエントリーしてみる所存でござる」
「そうね。お姉様は殿堂入りの別格として、ウチのギルドだとソロ最強はあんただろうから、しっかりやりなさい。お姉様の僕として恥ずかしくない成績を歴史に刻み付けてやるのよ!」
「ふっ、言われるまでもないでござる!」
「私は支援職なんですけどね」
思わず苦笑いが零れてしまった。
だって、俺は≪魅力≫に全振りしてるお姫様だ。
支援系のスキルは数が揃ってるけど、その反面攻撃力は無いに等しい。
一応攻撃スキルもあるけど、ソロで戦う場合は中の下って感じだと思う。
「それでも、お姉様は最強に可愛いのですから、それはすなわち最強ということです!」
「しかり!」
しかし、サンゾウとリリィの中では違うようだ。
可愛いは最強。俺は最強可愛い。つまり、俺が最強。
そういうことらしい。
サンゾウと俺が一対一で戦ったら絶対勝てないと思うんだけどなぁ。
まぁ、盛り上がってるところにこれ以上水を差すのもあれだ。
お姫様らしく微笑んでお茶を濁すとしよう。
「イベントのこと、もう少し詳しく聞いてもいいですか?」
「はい! 再来週の土曜日と日曜日に、一日ずつの開催だそうです。予選はその前の平日五日間を利用して行われて、勝ち抜いた者達だけがメインイベントへ参加出来るようです」
「なるほど。流石に一日で全部消化は難しいと判断したんですね」
「そのようです。何せ今回は、前回と違って最強を決める戦いですから、前回のイベントをスルーした廃人やガチ勢と呼ばれる連中も多数参加すると思われます。まぁ、勝つのは勿論お姉様ですが!」
「あはは、ありがとうございます?」
今回は、リリィの言う通りガチ勢が本気で挑むイベントになるだろう。
前回も圧倒的な強さで勝ちまくっていた≪FK≫に、まだ見ぬ廃人達。
もずく兄弟達も張り切るに違いない。
せっかくのイベント、参加するのは当然として、参加するからには全力でぶつかりたい。
そして叶うならば、勝ちたい。
その為にどうするか。このギルドのマスターであり姫として、方針を決めないといけないな。
「それでお姉様、今回はどのような作戦でいきますか? やはり、お姉様の美しいダンスと可憐なるダンスを見せつけてあげますか?」
「そうですね。今のところはそのつもりです」
前回のイベントでは、俺が歌って踊って前に出つつ支援をするという戦闘スタイルだった。
ネックになったのは、スキルを使う時に顔の横でピースを決めないといけないという点だ。
しかし、イベント後に習得した≪アイドルダンス≫の効果で、踊っていればモーションは必要なくなった。
これを活かさない手はないだろう。
実質ノーモーションで繰り出す支援と可愛さ(物理)を受けてみるがいい!
と、いうわけである。
「わかりました。お姉様のライブの特等席は、私達の勝利と引き換えて差し上げましょう!」
「ふふふ、拙者も腕が鳴るでござるなぁ!」
次のイベントへ向けて、俺達は動き出した。
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