73 シノビというよりフードプロセッサー!
本日二回目の更新です!
クエストを完了させた俺達は、丁度昼過ぎだったので一度ログアウトすることにした。
サンゾウは昼食に。
俺は早めに済ませていたが、理想の女子ムーブ的に話を合わせておいた。
仕方ないのでストレッチをして時間を潰した。
程々の時間が経過したところでログインし、ギルドホームへと帰って来た。
既に応接間の天井に張り付いていたサンゾウと再度合流し、先程のクエストの報酬の分け前の話になったのだが。
「姫、拙者、これがどうしても欲しいでござる! どうか譲ってはござらぬか!? 難しいと言うなら有り金全て叩いても良いでござる。故にどうか、どうか」
「むしろそれだけでいいんですか? 二等分には足りないと思うんですけど」
「これがもらえるのならば、拙者にはそれで十分でござるよ」
アイテムを積んだテーブルを挟んで、俺とサンゾウは向かい合っていた。
今回のクエストのクリアで得たものはいくつかある。
まずは、それぞれにいくつかの経験値と、お金。
これは依頼表に書いてあった通りの報酬だ。
そして迷惑料代わりの追加のお金。
依頼人は貴族の当主だったんだが、その配下である騎士が暴走して俺を拉致した。
脱出出来ていたしサンゾウも助けに来てくれていたが、下手すると売り払われて十八禁エロゲルートだった可能性もある。
このゲームでそんなルートがあるかは謎だが、まぁその分のお金だ。
これは追加で俺が受け取った。
最後に、山賊のアジトで手に入れた、いくつかの装備品とアイテム。
装備品は≪光の杖≫と≪幸運の剣≫、≪重厚な大盾≫。
アイテムは、≪引き寄せスティック≫と≪クラス装備の素≫。
サンゾウが欲しがったのは、≪クラス装備の素≫ただ一つだけ。
「それって、どんなアイテムなんですか?」
各アイテムの説明は、ほとんど読んでいない。
とりあえずテーブルの上に並べたところでサンゾウが素を欲しがった為だ。
「これは、素材にすることで簡単にクラス専用の装備が作れるという、夢のようなアイテムなのでござる!」
「なるほど」
「しかも、使用して難易度が下がった分素材を投入することで、性能を盛ることが出来るのでござる!」
「なるほど」
サンゾウはとても嬉しそうにアイテムの説明をしてくれる。
どうやらあの素とやらを使うと、それぞれのクラスに応じた性能、そして見た目の装備が作れるらしい。
しかも高性能に出来るとかなんとか。
「拙者、立派な忍者になりたいというのにお金が足りず、この布しか買えなかったでござる。ようやく幾何かのお金が貯まったと思えば、初期で手に入る装備は性能が足りず……」
「見た目だけでも合わせるのじゃダメだったんですか?」
「それも考えたのでござるが……拙者がお金を稼げたのは姫のお力あってこそ。ただの見た目の為に使うのは忍ばれたのでござる。忍者だけに」
「そんなに気にしなくても大丈夫ですよ?」
「それは無理でござる。しかし、このアイテムさえあれば立派な忍者っぽくて高性能な装備が作れるでござる! だから是非譲って欲しいのでござる!」
サンゾウが改めて俺に頭を下げた。
サンゾウの装備は、武器はともかく防具はほぼ初期装備だ。
口元に布を巻いているだけだから、正直忍者というよりはゲリラって感じだ。
だからサンゾウの気持ちは分かる。
俺だって姫狂いのNPCからもらっていなければ、姫様っぽい装備に憧れを抱いて悶えていたかもしれない。
でも、流石にちょっと行き過ぎだ。
「サンゾウさん、そのアイテムは勿論差し上げます」
「有難き幸せにござる!」
「けど、それだけじゃ私の分が多すぎます」
「しかし、拙者はこれをいただければそれだけで十分なのでござる」
「それじゃあ私が納得出来ません。なので、一緒に狩りに行きましょう」
「狩り、ですか?」
「新しい装備に必要な素材を集めるお手伝いをさせてください。そうじゃないと、お金や装備を押し付けますよ」
「ううむ、でござる……」
皆俺に気を遣い過ぎだ。
報酬を余分にもらったって、嬉しくない。
今まではギルド資産にすることで流していたが、もう我慢の限界だ。
素材集めを手伝わせないと山分けだと、固い意思を目に込めてみた。
サンゾウは困ったように腕を組んだまま唸っている。
やがて、ゆっくりと口を開いた。
「それでは、よろしくお願いするでござる」
「はい、任せてください」
「こんにちはー! 何の話をしてるの?」
「こんにちはアズさん。丁度良いところに来てくれましたね」
「正にナイスタイミング、でござるな!」
「へ?」
俺とサンゾウの言葉を聞いて、ログインしたばかりのアズはコテンと首を傾げた。
細いツインテールがふわっと揺れて、大変可愛らしい。
▽
「うおおおお! 素材寄越せでござるうううううう!!」
「すごい張り切り方ですね」
「サンゾウくんすっごーい!」
「はーははは! 姫やアズ殿の協力があるならば、拙者にとっては万人力でござるううううう!!」
サンゾウはまるで高速で跳び回るフードプロセッサーのように、高速で敵に接近しては粉砕していく。
普通の移動速度が速い上に、今は瞬間移動するスキルを習得している。
クールタイムはそこそこ長いようだがそれでもかなり強力であることは間違いない。
この程度の狩場のモンスターじゃ相手にならないな。
お陰で俺とアズはせっせとアイテム拾い係だ。
「≪苦無投げ≫! ≪苦無投げ≫! ≪瞬歩≫! ≪乱れ霞≫!」
苦無を二回投げて遠くの敵を倒し、瞬間移動で遠くにいた敵に接近し、一瞬五人に分身して同時に切り付けた。
サンゾウの暴れっぷりがすごい。
「アズさん、帰ったら装備の制作をお願いしますね」
「うん! サンゾウ君の為にもアズ頑張るよ!」
サンゾウの無双を横目で見ながら、アズの満開の笑顔に癒される。
うんうん、このカオスっぷりが我がギルドらしい。
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