62 マッスルクエスト!
本日二回目の更新です!
「おっす姫さん! 他の連中はまだか?」
「こんにちは。はい、まだ私だけですね」
スキルの効果をじっくり読み込んでいる内に、ダリことダリラガンがログインしてきた。
昨日打ち上げからそのまま解散したから彼もここでログアウトしていたようだ。
「そっかー。もうすぐダイナの奴も来ると思うぜ。誰も来ねぇようなら三人でまたどこか行くか?」
「いいですね、是非お供させてください」
「はっはっは! 姫さん、お供っつうんならそりゃオレらの方だぜ!」
「そう言われると、そうですね?」
俺の言葉を聞いて、ダリは笑い出した。
どうやらダリの中では彼の方が付き従うイメージらしい。
なるほど。
俺がお姫様だとするとそうなるのか。
感心していると、光の柱が現れて中に人影が見える。
ダリが言っていた通りログインしてきたのはダイナだった。
「おや、姫様もおられたんですね。こんにちは」
「はい、こんにちは」
「おっす!」
「ダリの方は相変わらずうるさい筋肉してますね。あんまり大声出してるとエネルギーの無駄ですよ」
「お前の方こそ、ちょっと筋肉が冷静過ぎるっていつも言ってんだろ。もっと陽気に行こうぜ」
「冷静沈着なのが僕の筋肉の売りなんですよ」
二人はいつも通り仲が良い。
仲が良すぎて会話が若干意味不明だ。
これはいつものことなので、あまり気にしないことにする。
ひとしきり話して満足したのか、ダリが思い出したような顔をしてから、口を開いた。
「そういや、姫さんも暇してるっぽいし誰も来ねぇようだったら三人でどこか行かねぇか?」
「是非是非。姫様とご一緒出来るなら喜んで」
「ありがとうございます」
「お礼を言うのは僕らの方だと思うんですけどね」
「だよな。変な姫さんだぜ」
二人の中では俺が二人に付き合う形のようだ。
一人だとつまらないし、むしろ俺の方が仲間に入れてもらって有難いんだけどなぁ。
「やっほー! みんなこんにちは!」
「こんにちは」
少しだけ待ってみると、元気なロリ、アズがログインした。
他のメンバーはログインしてくる様子も無かったので、四人で出かけることに決定した。
「ねーねー、どこ行くの?」
「そうですねー。お二人は、何かする予定があったんですか?」
「ダイナが気になるクエストを見つけたっつってたよな」
「ええ。実は、僕の筋肉が昂るような、素敵な予感のするクエストを発見しましてね。今日はダリと二人でそれに挑む予定でした」
アズに聞かれるも、特に俺には意見がない。
二人に振ってみるとダイナがニヤリと笑いながら元々の予定を話してくれた。
筋肉が昂るクエストってどんなのだろう。
若干嫌な予感はするが、予定があったのならそれを変える必要もない。
「では皆さんさえ良ければそのクエストに四人で挑戦してみませんか?」
「アズやりたい!」
「ありがとうございます。お二人はどうですか?」
元々はダイナがやりたがっていたクエストだし、アズが興味があるかは分からない。
俺の一存で決めるのもあれなので意見を聞いてみると、まずアズが元気よく手を上げて意思を表明してくれた。
「姫様やアズさんが一緒にやってくれるというのは、とても有難いです。是非お願いします」
「おう、オレも文句なんてあるわけねぇぜ。こういうのは皆で筋肉を合わせて突破するのが楽しいんだ」
「流石ダリ、偶には良い事言いますね」
「オレはいつだっていい事言ってるぜ?」
こうして俺達は、四人でクエストへと出発した。
まずは≪冒険者協会≫にてクエストを受ける。
大きな掲示板の隅に貼ってあった紙を取って、受付に持っていくだけで処理は完了だ。
ダイナが目的のものを取って俺に差し出してくれたので、俺名義で受注した。
皆に言われたのでパーティーリーダーは俺だ。
俺がリーダーだと報酬が沢山増えるので、特に異論はない。
やって来たのは二層、≪港街アルベイト≫。
ここは商売が盛んらしく、商業系の施設が多い。
建物は白いコンクリートのようなもので作られている上に、地面も白い石畳。
太陽光を浴びて、街全体が白く輝いているように見える。
潮風の気持ち良い、まさに海の街だ。
転送サービスを利用して移動した俺達は、街の中でも立派な建物の立ち並ぶ方へ。
他の区画に比べて大きかったり、装飾が見事だったり。
俗に言う貴族街というやつだろうか。
「ここですね。では入りましょう」
ダイナの先導で一軒の屋敷へ。
立派な門を潜ると、一瞬視界が暗転して建物の中にいた。
それも、玄関とかでもなく応接間のような場所だ。
ゲーム的な都合で門から直接移動したらしい。
そこには、白髪をオールバックに撫でつけて、豊かなヒゲを生やした≪ザ・執事≫といった感じの老人が待ち構えていた。
歳は分からないがピンと伸びた背筋に、執事服を盛り上げる程の肉体の厚み。
明らかに強者のオーラを放っている。
「初めまして。冒険者協会から来ましたカオルです」
「初めまして。依頼を受けて頂けるとのことで、まことにありがとうございます」
執事は俺達に対して一礼した。
その貫禄のある佇まいとは似合わないくらい、しょんぼりとした雰囲気が滲み出ている。
明らかに訳あり顔だ。
「お話を聞かせてもらっても良いですか?」
「はい。貴女方には、筋肉花という植物を採取してきていただきたいのです」
静かに聞いている俺の後ろで、ダイナとダリのテンションが上がった気配がした。
少しでも面白いと思っていただければ、↓から評価をお願いします!
ブックマークや感想、レビュー等をいただけますと、よりいっそうの励みになりますので是非よろしくお願いします!




