60 アイドルと言えば人気投票!
本日三回目の更新です!
指名を優先して対戦を楽しんでいたら、廃人ギルドから指名が入った。
もしやる気が漲り過ぎて殺気立つようだったらマズいと思って意見を聞いてみると、メンバーは対戦したくないとの意見が十割だった。
曰く、姫様と同じステージという特等席に上がる権利を奴らに送るのは勿体無い。
曰く、奴らは相応しくない。
曰く、モニターで見ることが出来るだけでも感謝し一日三回感謝の祈りを捧げるべきである。
要約したが、概ねこんな感じだった。
というわけで指名は受けないことに決定した。
ついでに、最初に転送されたイベントエリアで絡んできたやつの所属する≪明鏡止水≫からの指名も拒否。
これで完璧だ。
▽
休憩を挟みつつもいくつもの激戦を繰り返す内に、対戦終了の時間となった。
その時点でマッチングも終了。
開始されている対戦は続行されるがそれが最後の試合となる。
『みんなお疲れ様ー。これで対戦は終了だよ。一時間の間に、自分が気に入った相手に投票してね』
そうして全ての対戦が終わり次第、投票タイムが始まった。
対戦パートは二時間。投票タイムは一時間だ。
俺達は二十くらい試合を行い、得たポイントは三十七。
多分十五くらいは勝利で得た筈だ。多分。
俺達は揃って、試合会場の外のエリアに転送されていた。
同じように戻ってきた人達で賑わっている。
「皆さん、お疲れ様でした。一旦ログアウトして、休憩しましょう」
休憩を挟んでたとは言っても、二時間近く対戦に励んでいたら疲れてしまう。
皆元気一杯に見えるけど、休憩は大事だ。
俺の意見に皆も同意してくれたので、一度ログアウトすることに決まった。
集合は三十分後だ。
「それでは皆さん、また後で」
皆を見送った後、ずっと別行動をしていたアズにメッセージを送り、俺もログアウトした。
▽
トイレと水分補給を済ませ、ついでに身体を軽くほぐす。
VRMMOは運動した気分にはなるけど、実際の身体は全く動いていない。
だから小まめに休憩をしてストレッチをしないと、不調が出てしまう。
俺みたいなニートは特に注意が必要だ。
ゲームに完全にのめり込んでしまったらほぼ寝たきり生活になってしまうからな。
その時は楽しくても、三か月もしたらすっかり衰弱してしまいそうだ。
「ダイブスタート」
キーワードを呟くと、すぐに視界に見慣れた光景が広がっていく。
今やこっちが俺の本当の世界だと認識してしまう。
現実なんて俺の中では、栄養補給と体調管理の為にしか存在していない。
幸いなことに遊んで暮らすだけの金はある。
元気にこの世界を楽しみながらのんびり暮らすぞ俺は!
ログアウトしたらたまり場近くのセーブ位置に戻っていた為、イベント会場に戻る。
中央の噴水広場にいるモグラに話しかけたらすぐに転送してくれた。
約束の五分程前に集合場所に到着すると、もう皆揃っていた。
「すみません、お待たせしましたか?」
「おかえりなさいお姉様! 大丈夫です、お姉様に会えることを思えば数時間だろうと、楽しんで待てます!」
「あ、はい」
どうやら少し待たせていたらしい。
本人達は気にしないらしいが、もう少し早めに行動するようにするか。
時間があると思ってつい屋台に寄ってしまったのがいけなかったな。
「あ、美味しそうなので買ったんですよ。皆も一緒に食べましょう」
ストレージから綿あめを取り出して皆に配る。
買った食べ物はストレージに入るから七人分だろうと一人で運べるのは、ゲームならではの便利さだ。
皆お礼を言いながら受け取ってくれる。
「わーい! 綿あめだー!」
綿あめに人一倍喜んだのは、アズだ。
リリィとサンゾウも引くほど喜んでいたけど、綿あめ自体というよりは俺が買って渡したことに喜んでたみたいだからノーカウント。
アズは幸せそうに綿あめにかぶり付いては、幸せそうに味わっている。
女の子らしく甘い物が大好きっぽいからな。買ってきて良かった。
そうだ、良い事思い付いた。
「まだ発表まで時間もあるようですから、皆で屋台を巡りませんか?」
「行く! 行きたい!」
「いいアイディアですね、流石お姉様」
「でござるな」
「うおっしゃ! 肉食おうぜ肉!」
「運動の後はタンパク質ですからね!」
「僕はリンゴ飴食べたいなー」
皆テンション爆上げ状態だ。
アズも喜んでくれてるし、提案してみるものだ。
発表までの間に屋台を巡ることに決めた俺達は、早速行動を開始した。
色々な屋台があり、食べ物の種類も豊富だ。
全員で歩きながら、試合の思い出を話す。
思い出したように各自投票も済ませた。
俺も特に印象に残ったチームへしっかりと投票した。
サンゾウの特攻を逆に一人で抑え込んだ魔法職のいたギルド、俺達と一緒になって歌って踊ってくれたギルド、武器とスキルで演奏を始めたギルドの三つだ。
……キャラが濃いが、俺達もどっちかと言うと色物ギルドなので細かいことは気にしない。
ゲームなんだから楽しんだ者勝ちだ。
あ、美味しそうな焼きそばがある。
やっぱり屋台と言ったら焼きそばだよな。
ジュウジュウと音を立てて、香ばしいソースの香りが俺の足を止めた。
なんてこった、俺の≪チャーミングミスト≫並の阻害効果だぞこれは。
あれをずるずるっと食べたら美味しいだろうな。
いやしかし、今の俺は姫だ。
そんなはしたない食べ方をしてはいけない。
少しずつ纏めて口に放り込むんだ。
よし、買おう。
「おい」
「ん?」
つい足を止めて焼きそばを見つめて、購入を決めたところで声を掛けられた。
振り向くと、≪明鏡止水≫の≪ブレッド≫がそこにいた。
イベントの開始前に絡んできた奴だ。
「何か用でござるか?」
「あ? オレはそこのカオルちゃんに用があるんだよ。関係ないやつは引っ込んでてくれねーかな?」
いつの間にか戻ってきたサンゾウが間に割って入ってくれた。
なんて素早いんだ。かっこいいぜサンゾウ!
しかし、ブレッドはサンゾウに怯んだ様子もなく更に絡んで来る。
せっかく楽しい気分に浸ってたのに、勘弁してほしい。
「拙者は姫の僕でござる。何か用があるのなら拙者が聞くでござるよ」
「ちっ、鬱陶しい奴だな。オレ達のギルドからの指名なんで受け取らなかったんだよ?」
「それは――」
サンゾウが言いかけたのを、肩に手を置いて止める。
ここは俺がギルドマスターとして、冷静に話を付けるべきだ。
「すみません、他に指名が沢山あったもので」
「へー、そうかい。歌ったり踊ったりして、間近で見るのはさぞ面白かっただろうからな」
「はい、皆さんに楽しんでもらえたようで良かったです」
「でもさ、ギルド対抗戦だよ? なんで真面目に戦わないの?」
「私達は真面目に戦いましたよ。今回のイベントに、私達は真剣に取り組みました」
「いやいやいや、どう考えてもふざけてたでしょ。あれで真剣なわけないじゃん。オレ達やFKと戦うのを避けたのも、ボコボコにされるのを避けたからでしょ?」
「好きに受け取ってもらって大丈夫ですよ」
「はんっ、じゃあそうさせてもらうわ。カオルちゃん達はふざけることしか出来ない、臆病者ギルドだって、仲間には伝えとくぜ」
「……今回は交流イベントだったので、ああいう形で取り組んだだけです。この先戦闘力を競い合うイベントが開催されれば、そこで証明します。私達のギルドは最高のチームだと」
▽
『それじゃあ、結果発表するよー。結果は得票数十に対して一ポイントをプラスして合計を算出してるよ』
「お姉様、やりましたよお姉様!」
「やったでござる!」
「はい、みなさんのお陰です! ありがとうございます!」
「うっしゃあ! 筋肉感謝祭だ!」
「姫様と全ての筋肉へ感謝を捧げましょう!」
「やったー! ばんざーい!」
最終的な結果がウインドウとなって、参加者達の前に表示された。
それを見た俺達は大はしゃぎ。
全員で肩を組んだり飛び跳ねたり、人目なんか関係なく喜んだ。
≪最強可愛い姫様のギルド≫
・対戦ポイント:22
・勝利ポイント:15
・得票数:4861
・投票ポイント:486
・ポイント合計:523
・ランキング:3位
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