57 歌って踊れるアイドル姫の可愛さ爆裂キメ顔ピース(物理)
誤字報告ありがとうございます!
書き終わって確認した時にはもう誤字なんてないな、ヨシ!
となってるんですが、沢山の誤字報告をいただいてます。
有り難く修正させていただいてますので、これからも応援よろしくお願いします!
一戦目に勝利した俺達は作戦会議を挟み、二戦目に挑んだ。
いわば、これが俺の初ステージ。
本当の意味でのデビュー戦だ。
さっきの対戦は……うん、策が上手く機能してなんか勢いで勝っちゃっただけだから。
箱を一回出しただけで可愛さをアピール出来るとはとても思えない。
そして始まった二回目の対戦。
さっきの作戦は思ったよりもハマったので、急遽作戦変更。
サンゾウが突っ込んで攪乱と魔法職を封じるのはそのままに、残りのメンバーは俺を先頭に前進する。
これは相手を舐めたプレイではない。
これは、俺達が俺達である為の戦法だ。
少なくともこのイベントではどれだけの強敵と戦おうとも、以降この戦法以外に変更することはないだろう。
可愛さを貫く。それが俺達の戦いだ。
「おらぁ!」
歌い、踊りながら進む俺の目前に戦士が一人。
既に長剣を振りかぶっている。
ダンスのステップの方向を修正して右に跳ぶ。
「おはようみんな」
「そこだ!」
歌は前奏を終えて、一番の歌詞へ突入した。
何度聞いても良い歌だ。何度歌っても俺に勇気をくれる。
やや斜めに振り下ろされた長剣が、さっきまで俺の居た位置を通り過ぎた。
接近戦はまだ怖いけどやれる。
ここで逃げたら俺の作戦に従ってくれた皆に顔向け出来ない。
やや後ろでバックダンサーを務めてくれてる皆の想いも背負ってるんだ!
下から切り上げられた剣を躱すことは諦めて前に出る。
「何っ!?」
「夢から覚めても夢はずっとそこにある~♪」
≪lucky≫という文字のエフェクトが出現しただけで、長剣はノーダメージで俺の身体をすり抜ける。
戦士っぽい男が驚きの声を挙げたのは、俺の動きに対してか、発動した完全回避に対してか。
両方だったら面白い。
距離を詰めた戦士に向かって笑顔でピースを決める。
詠唱が始まり終わる。歌ってる最中だからスキル名を叫ぶ必要はなく、後は俺の意思一つで発射出来る。
オマケにウインクも付けておくぜ!
「お気に入りの、自分らしさで♪」
「ぐぅっ!」
至近距離で炸裂したピンクの光弾は、戦士の胸部にぶつかって弾けた。
結構な威力があったらしいそれは相手の身体を後退させた。
「この野郎!」
「お洒落してさあ出掛けよ~♪」
「おっしゃあ!」
「ひーめーさーま!」
後ろへ突撃しようとしていたもう一人の戦士っぽいのが向かって来るのを確認して、俺も後ろへ下がる。
それと入れ替わるように、ダリとダイナが前へ。
ぎこちないながらも俺の歌に合わせてステップを刻む様は、立派な筋肉ダンサーだ。
俺は歌っているから声を掛ける事は出来ないが、二人ともすれ違い様に視線をくれた。
ダイナに至ってはコールまで入れている。
嬉しいので大剣に≪エンチャントファイア≫を使用して、巨大サイリウムにしておいた。
これはばっちり目立つだろう。
ちなみにこの火属性付与、最初はただの赤い炎が武器に纏わりつくエフェクトだった。
しかし、なんとか色を変えられないかと頑張ってみたら出来た。
それでもピンクにしかならなかったが、俺のイメージカラーはピンクだから問題ない。
「くそっ、当たらねぇ!」
「こっちはかてぇ! おい、魔法がこねぇぞ! ウチの後衛共は何やってんだ!」
「あいつら一体何を――っと危ぐふっ!?」
片方の戦士をダリとリリィが抑え込み、もう片方は俺が受け持つ。
≪プリンセスブーツ≫の効果で速度が上がっている俺は、≪敏捷≫無振りにしては速く動ける。
だから相手の攻撃もそれなりに捌けるのだ。
どうしても躱せない攻撃は≪完全回避≫に任せて無視する。
そして、一向に援護の来ないチームメイトを気にした戦士の脳天を、俺の可愛さで撃ち抜いた。
ダイナの一撃を回避して油断したところをズドンだ。
そして、試合開始から五分が経過した。
結果は、俺達の判定勝ち。
攻撃力のあるダイナの攻撃は命中に不安があり、俺の≪チャーミングショット≫もあまり連発すると対応されてしまう。
レンの魔法は俺を巻き込む危険性が高い。
だから俺達の戦法は、判定勝ち狙いだ。
俺が歌って踊って、隙あらば≪チャーミングショット≫をばら撒く。
皆はそれが途切れないよう、全力でサポートする。
特に魔法攻撃は完全回避では避けられないので、サンゾウに優先的に貼り付くようお願いした。
ステージを貫き通せば俺達の勝ち。
妨害され続ければ負け。シンプルな話だ。
ちなみに、箱で相手を閉じ込めることはしない。
それをするとアイドルライブというよりは、新手の拷問か精神攻撃となってしまうので、却下した。
姫が取る戦法としては、どう考えても極悪非道過ぎる。
俺達はこのイベントで俺の可愛さをアピールすると決めたからな。
対戦回数によるポイントゲットは捨てて、投票によるポイントゲットで入賞を目指す!
「負けたのは悔しいけど、いいものを見れたよ。ありがとう」
「ほんと、特等席だったな」
「お前は間近でぶっ倒れてたもんな」
「それは言わないでくれよ……」
「でもマジうらやましいぜ。俺達なんて、近くで跳び回るサンゾウさんの相手でいっぱいいっぱいだったんだぜ?」
「お、俺、カオルちゃんのファンになりました! めっちゃ可愛いです! これからも応援してますです!」
「神」
「あはは、対戦ありがとうございました」
対戦相手の≪悪意のあるペロス≫の皆さんも、負けたけど楽しそうな笑顔を浮かべている。
俺達の戦い方を楽しんでくれたようだ。
一人は俺を崇めるように跪いて祈りを捧げるポーズを取っていてちょっと怖い。
そんな相手チームの反応を見て、我らが≪可愛い姫様のギルド≫のメンバーも満足そうに頷いている。
俺だけに相手をさせてるのは、握手会か何かのノリだろうか。
多分俺を主役として立ててくれているのは間違いない。
皆の協力があるからこそ、こんな戦法をとれるんだけどな。
ま、イベントはまだ始まったばかりだ。
皆へのお礼はイベントが終わってから、感想でも話し合いながらたっぷり言うとしよう。
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