56 記念すべき初ステージ!
早速とばかりにランダム対戦に挑んだ俺達は、記念すべき一戦目のパーティーと相対した。
ギルド名は≪明日も青空≫。
なんとなく爽やかな感じがする。
メンバーも六人中二人が女子。
魔法使いと軽戦士が女の子だ。
うちのパーティーもパッと見は女の子二人いるけど、俺はおっさんだしリリィは怖い。
なんだこの違いは。リア充殺すべし。
なんて思ってたのが洩れた訳ではないだろうが、勢いのままに勝ってしまった。
これはサンゾウの攪乱が上手くいったお陰だ。
二人もいる遠距離職を一人で引きつけてくれたのは大きい。
勝敗を決する方法は、いくつかある。
対戦相手を全滅させる。
降参させる。
五分経過した時に、相手よりも残存HPの割合が大きい状態でいる。
上二つはそのままで、最後のやつもようは判定勝ちだ。
俺達にとって、この判定勝ちが大きな意味を持つ。
「いやー、負けた負けた。いいチームワークだった。特にそこの、サンゾウさん? 彼の動きがとても厄介だったよ」
「いやー、照れるでござる」
「はい、うちのサンゾウは頼りになる忍者ですから」
「ひゃはー、照れるでござるなぁ!!」
≪明日も青空≫のリーダーっぽい支援職の男が爽やかに笑っている。
そしてサンゾウをべた褒めである。
確かに凄かったからな。
敏捷に極振りしただけであんな動きが出来るものだろうか。
俺も乗っかってみたら、更に照れた。
他のメンバー達も、それぞれ何かしら話している。
戦士トリオは鬼コンビと。
魔法使いはレンと。
弓手はリーダーと一緒に、俺とサンゾウと話をしている。
リリィは俺の背後に立っているようだ。
もしかして、人見知りでもするんだろうか。
「お姫様は――や、なんでもなかったよ」
「?」
今は、勝敗が付いたあとの交流タイムだ。
イベントの目的が交流である為、一分程時間をとってくれるらしい。
ちなみに、これを拒否することも出来るが、それをすると対戦でもらえる一ポイントが消える。
ポイントが欲しければ交流しろという圧力を感じるな。
「それじゃあまた、是非仲良くしてくれ」
「はい、それでは」
一分はあっという間に過ぎて、視界が暗転した。
色が戻ってきたと思ったら舞台の前に転送されていた。
アズはどこかで観戦しているようで、姿は見えない。
「皆さん、作戦タイムでお願いします」
どんどん次へと行きたいところだが、大事なことがある。
作戦会議だ。
皆特に反対も無いようで、ささっと輪になってくれた。
俺の意見を汲んでくれて、名前は少し恥ずかしいけど本当に有難いギルドだ。
さっきの対戦で、俺はほぼ何もしなかった。
最初に正面に箱を出しただけだ。
それを皆が上手く使ってくれたお陰で流れを一気に持っていけて、そのまま勝ってしまった。
勝つことは悪くない。
だけど、後ろでほぼ見てるだけで勝ってしまうのは俺が許せない。
それに、こんなことでは俺の可愛さをアピール出来ない。
だから作戦を変更する。
「こういう感じでいきたいんですけど、どうですか?」
俺の案を簡潔に話してから、皆の意見を窺う。
誰よりも早く、サンゾウが動いた。
「大賛成でござる。拙者は、姫様の覚悟を応援するでござる」
「はい、私も賛成です。危険はありますが、お姉様の魅力を伝えるには一番有効だと思います。流石お姉様です! 危険に関しては、忍者や筋肉達が死力を尽くして防ぎますから!」
「しかりでござる」
「おう、任せといてくれ!」
「ええ、僕の全筋力を振り絞りますよ」
すかさずリリィも意見を述べてくれた。
丸投げに聞こえなくもないが、リリィは≪魔力≫極振りの支援特化。
攻撃を防ぐのは彼女の役目ではない。
適材適所って奴だな。
極振りしかいない俺達は、誰かが苦手なことを、得意な誰かがやる。
そうすることで全員の能力をフルに発揮出来る、筈だ。
振られた三人も嫌そうじゃないしな。
むしろとても嬉しそうな笑顔を浮かべている。
「うん、僕も賛成だよ。姫ちゃんの可愛さを皆に見せつけてやりたいからね」
最後にイケメンエルフのレンが、これまたイケメンなスマイルを浮かべる。
レンってばほんとイケメン。
俺がブサメンのオッサンじゃなければ、レンに惚れてしまってギルド崩壊の危機まで有り得たわ。
「それでは、いきましょう!」
「ござる!」
「はい!」
「おう!!」
「はい!!」
「おー!」
▽
俺達は、ステージの上に立つ。
正面には六人のプレイヤー。
今回の相手は≪悪意のあるペロス≫というギルド名だ。一体どういう意味だろう?
前衛二、魔法職二、支援職二、というある意味バランスのとれた構成に見える。
強敵かもしれない。
魔法職が二人もいるのはしんどいし、支援職っぽいのも片方は神官系とは違った感じがする。
クラスが多すぎてパッと見での判別がつらいのが、このゲームの難点だな。
俺やリリィのように分かりやすいのもいるけど。
カウントがゼロになる。
さあ、試合開始だ。
「「なっ!?」」
前にならんでいた四人が、左右に分かれて道を空ける。
そのど真ん中に向けて足を踏み出す。
そう、これが俺の初ステージ、最初の一ステップだ!
「~~♪」
ダンスは前奏から練習した。
不器用な俺は途中から踊り出すなんて不可能。
だから前奏から俺の歌声をお届けするぜ!
幸い、歌詞があろうがなかろうが、声をメロディに乗せさえすれば歌ってる判定になる。
「怯むな、行くぞ!」
「~~♪」
ハッとしたように行動を開始した≪悪意のあるペロス≫達を余所に、≪最強可愛い姫様のギルド≫も動き出す。
まず俺は横にしたピースを目の隣に。
一瞬でゲージが溜まり、歌声に乗せて≪エンチャントファイア≫を発動する。
サンゾウの手にした二本の短剣がピンクの炎を纏い、輝きだした。
それを受けたサンゾウは、俺の歌声に合わせるように身体と武器を振り乱す。
「ござー! ござー! ござござござござ!」
「「うわっ!?」」
そしてそのまま高速で突っ込んで行く。
上半身と腕を大きく振りながらよくあんなスピードで動けるよな。
もう慣れたけど、初めて見た時は素直にキモいと思った。
俺は勿論歌いながら、そして踊りながら接近しているのだが、なんと他の皆もステップを刻んでいる。
俺の両隣には筋肉コンビ。
その後ろにはリリィとレン。
≪アイドルステップ≫と≪歌姫≫を発動させた俺が最前線に立つ。
これがさっき決めた新しい戦法だ。
サンゾウは、ステージ上を好きに暴れ回りつつ魔法職を抑えるように指示してある。
そしてうちの特攻隊長が二本のサイリウムの如く輝く短剣を振り回して後衛相手に暴れている隙に、俺達も相手チームの前衛とぶつかった。
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