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55 記念すべき一戦目


 遂にイベント開始の時がやってきた。

 俺達はこの日の為に猛特訓を行った。

 全ては俺の可愛さを世に知らしめる、その為に。


 ギルド対抗戦という名前ではあるが、このイベントの目的は交流だ。

 それに、ゲームなんだし追加の目標を勝手に足すのも、楽しみ方の一つだろう。


「お姉様、指揮をお願いします」


「はい。それでは皆さん、行きましょう」


 リリィに促されて先導する。

 向かうのは、混雑していない少し離れた舞台。


 今回のイベントも対戦がメインになるが、対戦相手を決める方法は二通りある。

 ランダム対戦と指名対戦だ。

 どちらも名前の通りの方式となる。


 ランダムの場合は、舞台に上がれば自動的に対戦相手が決まる。

 勿論、同じように舞台に上がったチームの中から選出される。


 もう一方の指名対戦は、任意のギルドを指定することで対戦の申し込みが相手に送られる。

 相手が承諾すればそのまま対戦開始となるわけだ。


 指名の方法はいくつかある。

 ・視認出来る範囲にいる相手から選ぶ。

 ・参加者リストの名前から選ぶ。

 ・フレンドリストから選ぶ。

 ・モニターで映し出されている相手から選ぶ。


 この通りだ。

 交流が目的と言うだけあって、指名する手段が多く用意されている。

 偶々見掛けた相手に申し込んでも良いし、モニターで観戦して戦いたいと思った相手にも申し込める訳だ。

 

 とりあえず対戦しなければ俺達の目的は達成出来ない。

 俺達は指名される程有名なギルドでもないし、まずはさくっとランダム対戦だ。


 あまり混雑していない舞台の前に到着した。 

 突入する前に、アズへと向き直る。


「それではアズさん、行ってきます」


 俺の髪には、銀色の髪留めが装備されていた。

 アズ特製の俺専用可愛い装備だ。


 左側に流れる髪の一房(ひとふさ)を三つ編みにして、先端付近をそれで留めてある。

 お陰でお洒落な雰囲気が増して俺の可愛さが三割増しでアップした気がする。


「頑張ってね!」


「はい、応援お願いしますね」


「うん! 任せて!」


 アズの笑顔を背中に受けながら、皆で舞台に飛び乗る。

 景色が塗り替わって行って、気付けば謎の空間に到着していた。


 上がった舞台の上に立っているが、周囲は何も無いのだ。

 ただ土があるだけで、他の人や舞台は見えない。

 だだっぴろい荒野がどこまでも広がっている。


 たしか、前回もこんな感じだった。


「へぇ、こんな感じなのね」


「リリィさんは前回のイベント出てなかったんだっけ」


「そうよ。お昼の部は用事があったのと、支援特化の私じゃサバイバル方式なんてどう考えても無理だし」


 しばし会話をしていると、十メートル程向こうに対戦相手が現れた。

 しっかり六人いる。

 そして、俺達が向かい合う中央には≪10≫の字が浮かび上がった。


「あれが0になったら開始だな。前と同じで助かるぜ」


「ダリ、姫様への攻撃を全て受け止めるんですよ」


「わぁってるよ、任せときな。その代わりお前はがっつり暴れて来いよ」


「勿論。姫様に手を出す前にこの筋肉で叩き潰してやります」


「頼んだわよ筋肉馬鹿コンビ。精一杯お姉様の役に立ちなさい」


「おいおい筋肉馬鹿なんてお前、照れるじゃねぇか」


「ふふふ、これはもういつも以上に張り切るしかないですね」


 それでいいのか鬼コンビ。

 リリィも、二人がやる気を出してるなら一々水を差す必要もないだろう、という感じの呆れた顔で何も言わなかった。


 ステージは目測で二十メートル四方くらい。

 カウントが終わるまでは自由に動ける範囲は決まっている。

 その中でも俺は、真ん中に位置している。


 サンゾウが一番前で、そのすぐ後ろにダイナとレン。

 その後ろに私とダリ。

 一番後ろがリリィというフォーメーションだ。


 いつもの狩りなら俺も一番後ろで全体指揮をするが、今日は特別だ。

 なんと言ったって、前に出るからな。


「サンゾウさん、まずは突っ込んで攪乱をお願いします。ダイナさんとレンさんは一番近い敵を狙ってください。ダリさんはリリィさんへの攻撃を防いでください。リリィさんは支援と回復をお願いします。優先順位は作戦通りです」


 俺の言葉に、それぞれが返事を返してくれる。

 武器を構えて臨戦態勢だ。

 俺も、アズの作ってくれたマイクの頭のような飾りを先端に装着した≪プリンセスワンド≫を握りしめる。


「行くでござる!」


 カウントが0になると同時にサンゾウが駆けだした。

 俺達も負けじと走り出す。

 向こう側では、弓を構えたり魔法の詠唱を始めたりしているのが見える。


 相手の構成はさっきの待ち時間である程度把握している。

 戦士系が三人、魔法系一人、弓系一人、支援一人、って感じだ。

 戦士系の中でも重装備が二人いるからどっちかがタンクだとは思うが、三人共アタッカーの可能性もある。


 それよりも問題は、弓と魔法だ。

 こっちに遠距離攻撃持ちは俺しかいないから、相手に遠距離攻撃がいると厄介だ。

 レンは魔法職だけど、遠距離攻撃は使い所の難しいスキルしかないからな。

 単純な撃ちあいでは絶対に負ける。

 

「≪プリンセス・ボックス≫!」


()くでござる!」


 魔法と弓の射線上に箱を展開する。

 実はこのスキル、座標指定型だったりする。

 だから誰もいなくても箱だけ出せるのだ。


 この箱に隠れるように接近し、乱戦に持ち込む作戦が俺達の遠距離対策!

 そしてサンゾウは突然目の前に出現した箱に向かってジャンプ。箱を足場にして更に大きく跳びあがった。


「なっ!?」


「空中なら的だ! あいつを狙え!」


「はい!」


 魔法使いはサンゾウのアクロバティックな動きに動揺したようだが、弓使いはすぐに持ち直した。

 魔法使いに指示を出しながら自らの弓をサンゾウに向かって射出。

 遅れて魔法もサンゾウに向かって放たれた。


 しかし、俺達は誰も気にしていない。

 ただ相手との距離を詰める為に走る。

 何故なら、あれではサンゾウを仕留めることは出来ないと知っているからだ。


「甘いでござる!」


「はぁ!?」


 サンゾウは空中を蹴った。

 攻撃の軌道からずれると更に一歩。

 加速して後衛へ迫る。


「うらぁ!」


「なっ、こいつ、かてぇ!」


「とぉ! ≪振撃≫!」


「がっ、だ、ダメージがでかい!?」

 

「≪ショットガンブラスト≫!」


「痛っ!?」


 その隙に相手チームの前衛三人組と、こちらのアタッカー組がぶつかった。

 ダリは軽戦士の攻撃を弾き、ダイナは壁役に手痛い一撃を食らわせ、レンは重戦士を吹き飛ばしていた。

 

 あれ?

 俺最初に箱出した以外何もしてない。

 隙を見て≪チャーミングショット≫でも叩き込んでやろうと思った頃には、もうほとんど勝敗は決していた。


 と、とりあえず俺達の勝利だ!



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― 新着の感想 ―
[一言] 特化タイプはなんのかんの嵌まれば強いのだ 一人では大抵役に立たず気心の知れた仲間が必須なだけなのだ…… 全員キャラは濃いから今回の投票必須形式だと印象に残りやすいのは利点ですね テンプレ構…
[一言] やっぱりサンゾウの存在ってかなり助かりますよね。
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