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46 最強の可愛さ目指します!


 戦力増強を目指した俺は、プリンセス装備を手に入れる為に街をうろうろした。

 しかし、望んだ装備は手に入らなかった。


 こんな時に頼れるのはトラストルしかいないということで、今度は≪東の森≫に。

 そして俺はそこで、助言をもらうことが出来た。

 曰く、


「ご自分の強さを信じてください。答えはきっと、その先にあります」


 だそうだ。

 何か知っている口ぶりだったし、きっとヒントに違いない。

 俺の強さ、まずはそれを探すところから始めてみるか!





 早めに起きた反動で眠くなったので、一度ログアウトしたのが午前十時。

 仮眠して起きたら午後三時だった。

 ちょっと寝過ぎたな。


 遅めの昼ごはんを適当に済ませ、ついでに少し身体を動かしてからベッドへ。

 ふっふっふ、どれだけ悩んでいても結局はゲーム。

 今が楽しくて仕方がないぜ。


「ダイブスタート!」


 視界に広がっていく景色は、ギルドホームのリビングにあたる部屋だった。

 何人かが話をしているのが目に入った。

 誰もが難しい顔をしている。


「こんにちは」


「あ、お姉様、こんにちは」


「おっす姫さん」


「こんにちは、姫様」


「姫ちゃんだ。こんにちは」


 挨拶をすると皆も返してくれる。

 やっぱり仲間っていいものだな。皆俺を慕ってくれているから余計にそう思う。


「私達はこれから狩りに行きますけど、お姉様は昨日と同じくクエスト巡りですか? 必要なら荷物持ちを付けますが」


「ええ、荷物でもなんでも、僕にお任せください」


 リリィの言葉に、ダイナが不敵に笑う。

 知的な感じで筋肉をムキッとさせるのはギャップがすごいから止めて欲しい。

 噴き出しそうになるだろ。


「リリィさん、私の良さってなんだと思いますか?」


「それはもう可愛い事ですね」


「あ、はい」


 割と唐突だったと思うけど、即答された。

 逆に俺がびっくりした。ぶれないなこの人。


「姫様の良いところといえば、確かにその容姿ですね」


「ああ、姫さんと言えばまず最初に出てくるわな」


「僕もそう思う。だけど、それだけじゃないよね」


「勿論。僕もダリも、その優しさに救われました」


「悪いことは悪いからきちんと謝れって説教してもらったっけな」


「はは、姫ちゃんらしいな。そういえば僕も、狩りが上手くいかなくて困ってたところを助けてもらったなぁ」


 何故か皆が俺の話で盛り上がり出した。

 俺から振った話ではあるんだけど、よくよく考えるとなんか恥ずかしくなってきた。

 ひたすら褒められるとか慣れてないんだよ俺は。

 あれ、でもこのギルドに関しては前からこうだったな。


 なんとなく分かった気がする。トラストルの言いたかったことが。


「お姉様は本当にいつ見ても作画が崩れていないし可愛いし美しいし狐耳がアクセントになってその可憐さはケミストリーからのギャラクシーコミュニケーションと言わざるを――」


「リリィさん」


「はい! なんでしょうお姉様!」


 俺の良さを、皆は可愛さだと言った。

 俺も、この美少女の身体を手に入れて、可愛くプレイすると決めた筈だ。

 なら、それを極めることこそが俺の戦いに違いない。


「決めました。次のイベントは、私の可愛さを振りまく為に頑張りましょう」


「いいですね! そうしましょう!」


「……いいの?」


 自分でも突拍子もないこと言ったと思ったのに、相変わらずリリィは即答だった。

 廃人ギルドへの恨みはどこへ行ったのか。


「お姉様の方針がギルドの方針であり、それが私の方針です。それが、≪最強可愛い姫様のギルド≫のメンバーである、私の誇りです! おそらく、他の人たちもそうだと思いますよ?」


「そうだね。姫ちゃんの可愛さをアピールするなんて、とてもいいアイディアだと思う」


「オレぁ何すりゃいいんだ? 筋肉を添える役目か!?」


「それなら僕も力になれますね」


「服は脱がなくていいわよ! 着なさい!」


 レンがイケメンスマイルを浮かべ、鬼コンビがマッスル筋肉を浮かべる。

 そしてリリィが脱ぎ捨てられた装備を二人に叩きつけた。

 相変わらず騒がしい、けど楽しい人達だ。


「それでは方針は決定でいいですか?」


「異論はありません!」


 リリィが率先して声を挙げ、他の皆も笑顔で頷いている。

 決まりだ。

 次のイベントでは、俺達は俺の可愛さをアピールすることに全力を尽くす。


 元々、次のイベントも戦闘形式ではあるが交流がメインの目的らしい。

 だから対抗戦というよりは交流戦だな。

 参加登録したギルドから指名して対戦を申し込むことが出来る為、それを利用して廃人ギルドと直接対決するつもりだった。


 が、もう止めだ。

 そんなことしてても楽しくない。

 俺達は俺達の目標を持った上で、全力で挑む。


「そうと決まったら、早速買い出しに出かけましょう! プレイヤーの露店にお姉様の美しさを更に引き出すアイテムがあるかもしれません!」


「では僕達の筋肉を更に引き出すアイテムも探しに行きましょう」


「おう、そうしようぜ!」


「あはは、あるといいね」


「何を言ってるんですか、レンさんも一緒に探すんですよ」


「え?」


「そうだな、レンももっと筋肉つけようぜ!」


「いや僕は魔法使い系のクラスだからあの、えっと」


「レン、筋肉二人の世話は任せたわね。私はお姉様とゆっくりデートを楽しませてもらうわ」


「ふふ」


 皆の様子を見て、思わず笑みが零れた。


 ただ力で叩き潰そうとするなんて、姫としてあるまじき行いだ。

 そうだろ、トラストル?



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