44 素敵な素敵なマイギルドホーム
本日四回目の更新です!
金策に明け暮れていたが、リリィが想定していたよりも金額を稼ぐことが出来なかった。
そこでトラストルを頼ってみたら、どこの宮殿だよと言いたくなるような豪邸をもらった。
トラストルが守りきることが出来なかったという、姫のものになる筈だった建物らしい。
結構バックストーリーが重たい。
散々装備をもらっている俺が言うのもなんだけど、お姫様怒らない? 大丈夫?
しかし、ギルドメンバーは全員喜んでいるし、結局もらってしまった。
だって皆押しが強いんだもの。
所有権の登録は冒険者組合で行った。
とは言っても少し話しただけで完了したから、ちょっと拍子抜けだった。
ゲームだし細かい作業は省略されているようだ。それもゲームの便利な部分ではある。
それが終わり、今度こそ豪邸へ。
門からして豪華であるが、そこまで庭は広くないように見えた。
が、見えただけだった。
「おお……」
「お姉様、すごいですよ! とても素敵です! まさにお姉様の為の物件ですね!」
「すっごーい! お花が一杯だよ!」
門をくぐると、若干の暗転があった。
それは、ログインした時や、転送の光景に似ていた。
多分、別の専用空間に飛ばされたんだろう。
その証拠とでも言うように、広い庭が広がっていた。
というかもはや庭園だ。花や草木が迷路でも作ってるかのように配置してあり、地面にはレンガが敷き詰めてあったりする。
明らかに、門の外で見たよりも十倍くらいは広い。
リリィもアズもテンションがぶっ飛んで行っている。
俺ですら驚いて間抜けな声を出してしまった。
豪邸すごい。
「これだけ広けりゃ訓練も余裕で出来るな!」
「そうですね。スキルの試し撃ちなんかも気軽に出来そうです」
「ちょっと! こんなところで特訓なんてしたら、お姉様の花々が筋肉臭くなっちゃうでしょ!」
「ご心配なく、裏手には訓練場もございますので」
「そう? それなら安心ね」
鬼コンビに食って掛かったリリィに、トラストルから補足が入った。
心底ほっとしているようだ。
「わーい! すごーい!」
「うん、すごいね。ほら、このお花も綺麗だよ」
アズがクルクルと回ったり走ったり。
植えてある花を見つめたり、飛び跳ねたり。余程楽しいようで、目一杯はしゃいでいる。
それを、一緒に歩いているレンが見事にエスコートしている。
しかも綺麗に咲いているお花を見せたりして、完全に王子様だ。
美形のエルフだから、庭園によく映えるぜ。
「ほんとだ! お姫様も、ほら! 見て見て!」
「ええ、本当に綺麗ですね」
「えっへへー!」
アズが無邪気な笑顔を向けてくる。
その指が指示しているのは、ピンク色のバラだ。
壁のように整えている緑に、沢山の花が咲いている。
素直に同意すると、アズは満面の笑顔を咲かせた。
なんだこれ可愛い。
どこか誇らしげで、そこがまた可愛い。
「では屋敷の方へ案内いたします」
この庭は本当に広い。
ギルドホームとして登録したこの敷地内の中では、ギルドメニューから決まった場所に転送出来るらしい。
しかし、今はトラストルを先頭にして皆で歩く。
せっかくだから、景色とか色々楽しみたい。
どれだけ歩いても疲れないのがゲームの良いところだ。
まず通されたのは玄関ホール。
大きくて豪華な扉をくぐった先に、大きな空間が広がっていた。
天井も高く、床は大理石っぽい。
吊るされているシャンデリアの光を鈍く反射して、高級感がやばい。
その後色々な部屋を案内してもらった。
すげぇよ。明らかに場違いだよ。
こんな大きい建物、学校くらいしか知らないよ俺。
ちなみに、ここはタダでもらったが、お金は残らなかった。
せっかくなので、設備を追加する為に使ったのだ。
まず最優先で設置したのは、アズの工房である。
これでアズは、ギルドホームのサポートでより高品質の装備品が作れるようになった。
続いて追加したのは、和室。
これはサンゾウが言い出したが、割とみんな肯定的だった為追加された。
やっぱりなんだかんだ言って日本人だしな。
今はすっかり数が少なくなったらしいが、あの藺草の匂いがたまらないんだ。
▽
「それでは姫様、ごゆっくり寛いでください」
「ありがとうございました」
俺がお礼を言ったのを追うように、メンバーの皆も口々にお礼の言葉を伝えた。
トラストルは満足そうに微笑み、去って行った。
豪華な部屋に残された俺達≪最強可愛い姫様のギルド≫のメンバーたちは、思い思いに寛ぎだした。
俺とリリィはふっかふかなソファーに横並びで腰掛け、対面のソファーにはレンとアズが。
サンゾウは何故か天井にぶら下がっており、鬼コンビはふわふわカーペットの上で競い合うように腕立て伏せをしていた。
筋トレをすると≪体力≫か≪筋力≫にしか振れない専用のステータスポイントが増えるらしい。
レベル上げをしなくてもステータスが増えるならお得だ。
俺も真似をしようと思ったが、リリィに泣いて止められた。
俺まで筋肉に染まってしまうかと思って怖くなったそうだ。
そこまでしてやりたい訳でもないし、筋トレは止めておこう。
「お姉様のお陰で立派なギルドホームが手に入りましたね」
「私というよりは、トラストルさんのご厚意ですけどね」
「いえ、お姉様の騎士であるなら、それはお姉様の功績です」
釈然としないが、皆喜んでいるしそれでいいか。
頑なに否定して空気を悪くするほどのことでもない。
「っしゃあ! これで、イベントに集中出来るな!」
「そうですね! 大人数で四六時中狩場を独占された恨み、晴らしてやりましょう!」
「そうだね。頑張ろう」
「ええ、お姉様の邪魔をした罪は重いわ」
「しかり!」
「おー……みんなこわーい……」
鬼コンビは筋肉を隆起させながら、熱く吠える。
他のみんなも、同意するように頷いたりしている。
アズだけは若干怯えているが、それがまた可愛い。
金策中、≪神々の鉄槌≫というギルドが大勢で押し寄せたせいで、効率がガクッと落ちた。
普通に狩りをするだけならまだしも、マナーが最悪だった。
人が狩っているモンスターに攻撃する、向かって来てるモンスターを奪っていく、大量にトレインして周る、本当に邪魔だった。
この辺はあくまでマナーであり、公式から何か処罰はないらしい。
だから俺達は、数日後に迫ったギルド対抗戦イベントに向けて、戦力を高めていく方針を決めた。
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