25 リリース十日記念特別イベント当日
長くなったので分割します
皆と狩りをしたりしてる内に、気付けばイベントの当日になっていた。
そう、イベントの当日になっていた!
楽しい時間が過ぎるのはあっという間だ。
今日までで、イベントに備えて装備やスキルをしっかり準備出来た。
俺とレンの事情は他の皆にも話してあるから、とても応援してくれたお陰だ。
やる気が漲って仕方がない。
今なら勝てる気がする。
多分。
いや、絶対勝つ。その為の秘策もある。
今は、午前十一時を回ったところ。
イベントの昼の部の開始は正午。
少し早いが、遅れるよりはいいだろう。
「ダイブスタート!」
気合いをいれてキーワードを叫ぶと同時に、意識が遠のく。
ふっと切り替わった感覚に目を開くと、いつもの光景が広がっていた。
いつも通りだ。
イベントの賑わいがよく分からないな。
一層のスターレの街。その噴水広場にしては、むしろいつもよりも人が少ない気すらする。
「イベント開催まであと一時間ちょっと! イベント特設会場はこちらだよー!」
「うん?」
そんな時、陽気な声が聞こえてきた。
俺が立っているのは、噴水広場の隅の方。
中央付近に視線をやると、木の看板を掲げたモグラが、地面から上半身だけを覗かせている。
大きさは多分犬のコーギーくらいで、そう考えるとかなりでかい。
デフォルメされてヘルメットとサングラスを装備してるのが、いかにもゲームキャラって感じだ。
おそらくイベント会場は別にあって、あのNPCに話しかけたら移動出来るんだろう。
ゲームのことを公式情報ですら調べない癖が祟って、まさか別会場とは思っていなかった。
「すみません、イベント会場に行きたいんですけど」
『はーい。イベント特設会場はこちらだよ』
『イベント特設会場へ移動しますか?』
『YES NO』
イエスを選ぶと、視界が暗転した。
気付けば、賑やかな場所へと移動していた。
周囲には大量のプレイヤー達。
日曜のお昼前ということで、大量に集まっているらしい。
これ全部イベントに参加するのか? やばいな。
正面には謎の行列があり、幅広い道の両側には食べ物の屋台がずらっと並んでいる。
空には大量の半透明の板が浮いていて、イベント中はあれに映像が映し出されるようだ。
フレンドリストを開いてみると、レンは既にログインしていた。
メッセージを送って合流だ。
▽
もうすぐ正午。イベントが開始される時間だ。
今俺達がいるのは、ペア戦会場。
最初に飛ばされた場所から受付をすることで移動してきた、イベント特設会場の更に奥だ。
このイベントではソロ、ペア、チームの中から好みの場所を選んで参加出来る仕組みになっている。
そうしてやってきたのは、大きなスタジアムのような場所。
誰もいない観客席に囲われて、広いグラウンドがある。
そこに設置されているのは、高さ数十センチ程の四角いステージだ。
多分二十メートル四方くらい。
それが十個、三四三の並びで設置してある。
俺達プレイヤーがいるのはその舞台と舞台との間の空間だ。
「なんだかドキドキして来ましたね」
「僕もだよ」
「ワクワクして仕方ねぇな!」
「そうですね、僕の筋肉の力強さを見せつける良いチャンスです」
緊張が溜まり、言葉になって口から洩れる。
レンも同様なようで、いつもの笑顔が若干固い。
そんな俺達二人を余所に、鬼コンビは楽しそうだ。
まったく気負った様子はない。
ハートが強すぎる。
ちなみに、リリィは都合が合わなくてログイン出来ず。
サンゾウはソロの部へと参加している為、ここにはいない。
そして、十二時になった。
『やほやほー。皆さんこんにちはー』
ズボッと、舞台の一つを突き破ってマスコット的なモグラが現れた。
さっきイベント会場に飛ばしてくれたモグラだ。
『今イベントの司会進行を務めるモグラだよ、よろしくねー。これからルールを説明するよ』
事前に告知のあった内容を、確認するかのようにモグラは告げていく。
自分では調べていないが、レンやリリィがしっかりと教えてくれたからある程度は把握しているが、もう一度よく聞いておこう。
『今回のイベントは、対人戦! ただし、今回はあくまでも記念イベントだから、目的は交流だよー。そこはしっかり覚えておいてね』
「へー、交流が目的だったんですね」
「らしいね。河原でなぐり合ったら友情が生まれる、的なやつかな?」
「おお、なるほどな!」
「納得のイベント内容ですね!」
「……姫ちゃんもそう思う?」
「うーん、聞いたことはありますね」
「なるほど……」
レンは微妙な顔をしている。
いや、俺はよく知ってるし、理屈も分かるんだけどね。
俺の中の美少女像がそんなのよく知らないって言ったんだ。
『スタートの合図以降、好きな相手と二人でパーティーを組んで、舞台の上に上ってね。二組のペアが舞台の上に立った時から十秒後に戦闘開始になるよ』
モグラの解説は続く。
「相手ペア二人とものHPを0にする、二人ともを場外に出す、相手が降参する、三分経過してHPの損耗率が相手より低い。これらの条件を満たすと勝利。負けた方は舞台外へ移動させられて、勝った方は舞台に残るよ」
「おいダイナ、どういうことだ?」
「全員ぶっ飛ばせ、ってことですよ」
「なるほどな!」
『勝者はその場で待っていたら他のペアが現れて次の戦闘が開始される。三連勝すれば、準決勝会場に移動するよ。そこでも三連勝すれば、決勝会場。そこで三連勝すれば、入賞で賞品獲得だ!』
「「「おおおおおお!!」」」
「っ」
「すごい熱気だね」
「私達も、頑張りましょう」
「うん、全力でやるよ」
突然会場中から歓声が沸いて、ちょっとびっくりした。
それをフォローするかのように話しかけてくるレンは、やっぱり出来る男だ。
イケメンオーラに溢れている。
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