幕間 いざ作戦会議
ギルド≪最強可愛い姫様のギルド≫の控室に、彼らはいた。
≪最強可愛い姫様のギルド≫のメンバーである。
最愛の姫様のとの話し合いに残っていた三人が戻ってきたことによって、決勝戦前最後の作戦会議の幕が上がった。
「第十五回! お姉様の為の作戦会議!」
「最強ギルド決定戦決勝編! でござる」
自称義理の妹と自称忍者。どちらも姫の僕である。
そんな二人のテンションに引っ張られるように、他のメンバーもハイテンションで応える。
拍手や歓声が沸き上がり、熱量は既に最高潮だ。
「というわけで、今回の議題はもうみんな分かってるわよね」
「姫ちゃんに負担を掛けずに勝つ為の方法、だよね」
「流石ファン一号、正解よ!」
「あはは、ありがとう」
「流石レン君だね!」
「え、ずっとこのテンションで行くんですかこわい」
終始笑顔のリリィの姿を見て、会議の出席が初めてであるランコは怯えていた。
しかし、誰もそんな彼女のことを気にしない。
進行役であるリリィも華麗にスルーして、本題に入るべく口を開いた。
「今回の大会で、お姉様の活躍によって私達は決勝まで勝ち抜いて来たわ。勿論、お姉様の実力を考えると当然の結果ね」
「でござるな」
「そうだぜ。なんせウチの姫さんは最強に可愛いからな」
「ええ、姫様のような、筋肉よりも可愛い存在は他に中々いません」
「えっ!? 例えば私なんかも筋肉以下なんですか!?」
「何言ってんだよ当たり前だろ」
「愚問ですね。まずは大腿筋や上腕筋を鍛えた方がいいですよ」
「筋肉以下……。筋肉以下……?」
「だけど、お姉様は倒れてしまったわ。何故か分かるかしら?」
リリィは、他のメンバーをぐるっと見回す。
筋肉以下であることにショックを受けているランコ以外全員が、悔しがるような表情をしていた。
「皆分かってるようね。そう、私達が不甲斐ないからよ……!」
「え、あ、す、すみません!」
「貴方だけが謝る必要は無いわ。出来るだけのことはしてたのはちゃんと見てたから」
「あ、ありがとうございます?」
「ただ、それでも足りなかったということよ。お姉様の負担になってしまったというのは間違いないのだから」
「そうでござるな。拙者が不甲斐なかったばかりに、姫は――!!」
「だから、次の試合では全員に今まで以上の力を発揮してもらう必要があるわ。その為の作戦会議よ」
リリィの言葉に、全員が納得した。
一つの目的の元に、メンバー全員の心が一つになったのだ。
姫に勝利を捧げる、その為に。
「ここはゲームの中だから、数値以上の能力を発揮することは出来ないわ。けど、常に最高のパフォーマンスが出来るように整えないと、せっかくの数値も腐ってしまう」
「つまり、さっきまでは全力で頑張っているつもりでも、それが出来ていなかった、ということですね!?」
「正解よランコ。私も勿論そうだし、皆も覚えはあるんじゃないかしら?」
「覚えがありすぎてつらいぜ」
「全くですね。この筋肉をもっとこうすれば、ああしておけばと、反省してばかりです」
「アズも、もっと頑張れたと思う」
「皆が全力で頑張ってるのは私も理解してるわ。私自身頑張ったし、お姉様もきっとそう思ってくれてる筈。だから、努力が足りないって責めてるんじゃないのは分かってね」
リリィはそこで一度言葉を区切った。
メンバーは加入時期の違いがあるだけで、立場は対等だ。
偉ぶってると思われないよう配慮しつつ、しかし思いが伝わるよう慎重に言葉を選ぶ。
「だけど、これが私達の限界じゃないとも思ってるの。お姉様の為なら、私達の限界はもっと先にあるって信じてるわ」
「しかり。拙者も皆も、まだまだこんなものじゃないでござる!」
「おうよ! まだまだいけるぜ!」
「ええ、筋肉痛にはまだ程遠いですね!」
「僕ももっと頑張れる気がしてきたよ」
「アズも! アズも頑張る!」
「わ、私だってきっと何かの役に立てるといいなぁと思うんですけどあ、なるべく頑張ってはみます……!」
「ええ、その意気よ!」
メンバー全員がやる気を漲らせたのを確認して、リリィは笑みを浮かべた。
「それじゃあ具体的な作戦を練っていくわ。相手はお姉様に無礼な態度を取った最低最悪のチーム。お姉様のお力が無くても完勝するのよ!」
「無論でござる!」
「それと、ランコちゃんに酷い事してたお礼もしてあげなくちゃね」
「リリィさん……! ええ、けちょんけちょんにしてやりましょう! もうメチョメチョのミッチャミチャですよ!」
こうして、テンションが最高潮のまま会議は具体的な作戦立案へと突入した。
全ては敬愛する姫の為。
ギルドメンバー達は最善を尽くす為に全力を注ぎこむ。




