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95 回想:第四回戦開始!

本日二回目の更新です!


 準決勝も俺達は勝利した。

 とは言っても、圧勝ではない。

 どうしようもなく追い詰められた末の、限りなく無茶をした結果の辛勝だった。

 何がどうなってそうなったのか。

 思い出してみるとしよう。



 


 歌って踊って無詠唱無ディレイによるスキルを連打する戦法は脳への負担が大きく、操作に支障が出てしまった。

 最悪は現実(リアル)の身体にも影響が出るらしい。

 そんな風に管理AIのナインから説明を受けたものだから、ギルドメンバー達からは無理しないように言われてしまっていた。


 歌って踊ってのスキル連打は禁止。

 そうなるとディレイや詠唱時間がゼロなのは変わらないが、モーションとスキル名の発声は必要になる。

 つまりこの準決勝は、全力で戦うことは出来ない。


『それじゃあ準決勝を始めようと思うけど、準備はいいかな?』


「大丈夫です」


「こっちも大丈夫だ! なあ兄者!」


「そうだな弟者! リベンジマッチといかせてもらうぜ!」


 しかし、今回の相手も相当に手強い。始まる前から分かっている。

 ≪FK≫に引けを取らないと言われている大手トップギルド、≪七海の覇者≫。もずく兄弟の所属するギルドでもある。


「あんなモヒカン共を警戒するのは(しゃく)だけど、間違いなく強敵よ。各自、全力を越えて挑みなさい!」


「「「「おー!」」」」


 このイベントに向けての特訓は、彼らがみっちりと付き合ってくれたことで完成した。

 つまり手の内はイベント前から知られていたわけだ。

 

 俺さえ万全なら、それでも勝てるだろうと踏んでいた。

 しかし、ここに来ての不調。 

 どれだけ警戒しても足りないってことはないだろう。リリィの鼓舞にも力が入っている。


 身体の感触を確かめるように、軽く足踏み。

 まだ身体は重い。視界もややぼんやりしてる……ような気がする。

 だけど動く。

 立てるし、腕も上がる。

 これなら普通に戦闘するくらいなら問題ない。


「なんとなく予想はしてたけど、やっぱり当たったね。もずく兄弟にはお世話になったけど、負けられないかな」


「はい。勝ちましょう」


「うん、勝つよ」


 レンがいつものイケメンスマイルで話しかけてくる。

 最初にもずく兄弟と縁が出来たのは俺達だから、何か思うことがあるんだろう。

 俺の短い返事にも、闘志のこもった笑顔をくれた。


『それじゃあ行くよ。――試合開始!』


「突撃してください!」


 試合開始と同時に全員が前に向かって走る。

 ただまっすぐ、一丸となって。


 これは、事前に決めていた作戦の通りだ。

 単純に俺達と相手の戦力を比べた場合、明らかにこっちが負けている。

 人数が上限の十人に足りてない上に、非戦闘員が二人もいるんだから当然だ。

 勝っている部分があるとすれば極振りしたステータス。

 それを活かす為に、俺達は一つになって突撃する。


 しかし、サンゾウは別だ。

 俺達鈍足組に付き合ってあの速度を活かさない手は無い。


「先陣はもらったでござる!」


「忍者接近!」


「≪ジョイフルソング≫!」


「タイミング合わせろ! ――二、一、やれ!」


 俺達の三歩先に出たサンゾウが、そのまま空中を駆けて行く。

 一瞬で敵陣目の前だ。


「≪ストーンウォール≫!」

「≪グラビティーウォール≫!」

「≪ファイアーウォール≫!」


「ござ!?」

 

 突如、相手陣地寄りの位置に大きな土壁が出現した。

 それはサンゾウの姿をすっかり隠してしまっている。まだ距離があるからなんとも言えないが、土壁の両端からは別のスキルのエフェクトが見える。

 囲まれてしまった可能性が高い。


「姫さん、オレを向こうに!」


「ダメです、対象が見えないとスキルが使えません」


「ちぃっ、やってくれるじゃねぇか――!!」


 必死に走ってはいるが、まだ遠い。

 俺だけなら倍の速度で迎えるがそれも各個撃破されるだけで意味がない。

 歯がゆい。


「開始早々死ぬかと思ったでござる!!」


 と思ったら、俺達の横にサンゾウが現れた。

 無事だったらしい。

 プシューという音を立てて蒸気が噴き出した。開いていた装甲が元の位置へ戻って行く。

 どうやら≪加速形態(アクセルモード)≫のスキルの効果時間が終了したようだ。


「サンゾウさん、大丈夫ですか?」


「ギリギリだったでござるな。突っ込む寸前に≪加速形態≫を起動していて助かったでござる。しかし、それでも二時間に一度の回避スキルを切らされてしまったでござる。やはり一筋縄ではいかんでござるな」


 サンゾウはからからと笑っている。

 ≪七海の覇者≫の面々はサンゾウを深追いはしなかったらしく、動かずにこちらを見据えている。

 何人かが動いている様子とスキルエフェクトから、バフを掛けて回っているようだ。


「まったく、アンタがいなくなったらかなり厳しくなるってこと自覚してるのかしら?」


「面目ないでござる」


「でも、切り札を切ってでも生き残ったのはいい判断だわ。流石お姉様の下僕ね」


「紙一重でござったが、姫に仕える忍として及第点はもらえたようで安心でござる。次はプランBで行くでござる」


「はい、お願いします!」


 サンゾウが今度は斜め方向に走って行く。

 先行して切り崩すのがプランA。

 プランBは俺達と相手がぶつかったところで横から突撃する作戦。

 スピードを活かした奇襲戦法だ。

 それに備えて、こっちも陣形を組み替える。


「ダリさん、お願いします!」


「おうよ!」


 俺の呼び掛けに応じて、ダリが先頭になる。

 皆はその後に続く形だ。

 まだこれで終わりではない。


「≪姫は臣下の為に≫!」


「――――≪臣下は姫の為に≫!!」


 俺がスキルを発動する。

 すると、メンバー全員の身体が淡く光る。

 そしてダリもまたスキルを発動する。

 これは、俺が≪真のプリンセス≫の称号を得たことで手に入れた新たなスキル。


 簡単に言えば、一定範囲内にいるギルドメンバーのダメージを俺が肩代わりするスキルだ。

 ダメージの数値は素のままこっちに来て、俺の防御力やその他もろもろで計算される。

 ヒットストップや詠唱の中断も俺が引き受ける事になる。


 このままだと俺がHPタンクになるだけだ。

 それはそれで便利だが、重要なのはもう一つのスキル。


 ≪姫は臣下の為に≫を受けたメンバーが得る≪臣下は姫の為に≫の効果も、凄く簡単だ。

 ≪姫は臣下の為に≫の効果を、反転させる。

 つまり、俺が受けたダメージを肩代わりすることが出来るスキルだ。


 これをダリだけが発動することにより、メンバーが受けたダメージは俺を経由して全てダリが引き受けることになる。

 勿論ステータスや防御力、スキルによる補正も全てダリのもので計算される。

 実質、全員がダリの筋肉を纏ったのと同じことだ。


「撃てー!」

「≪グラビトンショット≫!」

「≪アースマシンガン≫!」

「≪ラピッドファイア≫!」


「はっははぁー! 効かねぇぜぇ!」


 距離がある程度詰まったところで迎撃が飛んで来る。

 大半はダリが弾く上に、後続に当たったところでダメージは全てダリへと移る。

 しかもその防御力のおかげでHPはほとんど減っていない。


 このスキルは効果範囲が広くない為、各自で突撃していたこれまでの戦いでは使う機会が無かった。

 しかし、間違いなく俺達の切り札だ。


 万全じゃなくとも、俺達の力を合わせて勝つ。

 極振りの意地を見せてやる!


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[気になる点] >準決勝も俺達は勝利した >それじゃあ準決勝を始めようと思うけど、準備はいいかな? 頭が少し混乱しました。 終わった準決勝が、また始まるのか!? って。 前話でも終わった話って感じに…
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