92 一戦目を終えて
遅くなってすみません、更新です!
俺達の一戦目は無事に終わった。
相手はゲーム内でもトップと名高い廃人ギルド。
不安が無いと言えば嘘だったが、終えてみれば蹂躙に近い圧勝だった。
これはマジで最強いけるぞ。
俺の集中力さえ持てば。
試合終了後は控室に転移されるようで、俺達はそれなりの広さのある部屋へと戻って来ていた。
メンバー達も興奮冷めやらぬ様子でそれぞれで盛り上がっている。
「いやー、圧倒的でござるな! 流石我らが姫の采配にござる!」
「そうね。でも油断は禁物よ。お姉様が頑張ってくれてる分、私達も常に全力で答えるのが務めなんだから!」
「しかり、しかりでござるな。先の戦いでも拙者の反省点はいくつもあったでござる。勝ち抜く為に、穴を潰しておくでござる」
「その意気よ。お姉様の作戦を最大限活かす為には、あんたの全力が必要なんだから」
「ふふふ、承知の上でござる!」
リリィとサンゾウは反省会のようなものをしている。
今回のメイン戦法はサンゾウを突っ込ませて、俺が≪ポジションチェンジ≫で皆の場所を入れ替えまくるというもの。
サンゾウの全力の移動速度は目で追えないくらい速い。
俺の≪ポジションチェンジ≫はノータイムで連打可能。
その二つが組み合わされば、全員がサンゾウと同じ速さで移動出来ることと実質同じとなる。
配置を入れ替えまくるのも結構疲れるが、そこは流石のサンゾウ。
俺と同じくらい皆の位置を見てくれている。後方で待機している俺と違って、前線に突っ込んでいるのにだ。
そうして俺が入れ替えるであろうメンバーに相応しい位置取りを、常に行ってくれていた。
作戦の柱はスキルを連打してる俺なのは間違いないが、サンゾウが支えてくれているお陰で全力が出せている。
リリィの言う通りだ。
サンゾウがこの作戦の要であると、自信を持って断言できる。
しかし、他のメンバーも負けてはいない。
サンゾウ程ではないにせよ、頻繁に位置を入れ替えられて瞬時の判断を求められる。
そんな戦いの中で、大きな失敗も無く力となってくれた。
「ダリ、あそこのツーマンセルはいい感じでしたね。おかげで全力で攻撃出来ました」
「おう、ありゃあ我ながら見事な筋肉捌きだったと思うぜ。そう言うダイナの暴れっぷりも最高だったぜ!」
「ええ、我ながら素晴らしい筋肉捌きでしたよ。それに、マフラーも頑張ってくれました」
「おおそうだな。頑張ったなマフラー!」
ダリとダイナも、ポーズをキメながら先程の戦闘について話をしている。
お互いの筋肉と動きのキレについて花が咲いているようだ。
ダリとダイナの側にはアズとランコの姿もある。
「二人とも、すっごく強かったよー!」
「筋トレに付き合わされてた時はなんて酷い筋肉ダルマ達なんだと思ってたんですが、すごく強かったんですね! 攻撃から庇ってもらってありがとうございました!」
二人が言うように、筋肉コンビの活躍も凄かった。
片やメインアタッカー、片やメイン盾だからな。
攻撃のチャンスにはダイナを送り込んで、ぶん殴らせる。
逆に攻撃を受けそうな時には、ダリと入れ替えて攻撃を受け止める。
時には、ダイナとダリが組んで戦線を維持することもあった。
位置を入れ替えることもあるとは言え、基本的には俺やリリィ、レン等は後衛だからだ。
二人の動きは息がぴったりで、まさに阿吽の呼吸というやつだった。
ダイナ自身が言う通りマフラーの威力も存分に発揮されていた。三本目と四本目の腕があるって単純に手数は倍だからな。
そんな筋肉が防御を捨てて全力で殴りかかってくる。
恐怖でしかないな。
しかも攻撃は全て、隣に居る鉄壁の筋肉に阻まれる。
悪夢かな。
しかし、味方だと思うととても頼もしい。
ウチのギルドが誇る筋肉コンビだ。
視線を彷徨わせると、ソファでくつろぐ金髪イケメンを発見した。
レンだ。
一人で静かにしていたが、俺の視線に気付いて笑顔を浮かべた。
「あ、姫ちゃん。とりあえず一戦目お疲れ様」
「レンさんもお疲れ様です。皆さんのお陰で勝てました」
「僕はあんまり活躍してない気がするかな。やっぱり、姫ちゃんあっての勝利だよ」
「そんなことないですよ。私一人いてもただの機関銃ですからね。状態異常でもくらったら何も出来なくなっちゃいます」
「あはは」
俺の言葉に、レンは楽しそうに笑った。
何してもイケメンだなまったく。
実際、俺一人じゃこの戦法は使えない。
ギルドメンバーがいてこその入れ替えまくり戦術だからな。
状態異常対策も全く出来てないし。
ちなみに、今の戦術ならターゲットを絞らせないことで回避出来るし、万が一食らっても即座にリリィが解除してくれる手筈になっている。
リリィは俺の補助が主な役目だからな。
「でも姫ちゃん、大丈夫? ちょっと疲れてるように見えるけど」
「私ですか? 全然元気ですよ。因縁の相手に完勝出来て、テンションマックス状態です!」
「そっか、ならいいんだけどね」
僅かに心配そうな笑顔を浮かべていたレンも、俺の言葉で完全なイケメンスマイルに戻った。
俺が女なら惚れそうなくらい眩しい。溶けそう。
あの廃人ギルドに勝った訳だし、俺達は間違いなく強い。
どのギルドにも通用する。
これはこの勢いのままに勝ち進むしかない。
目指すは最強ギルドの称号だ!




