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閑話 ダイナ

本日二回目の更新です!

閑話です!


 とある病院のとある病室。

 広々とした部屋に、大きなベッド。

 個室であるそこには、一人の少年がいた。


 少年は最新ゲーム機でもあるヘルメットのようなものをクルクルと回しながら、ため息を一つ吐いた。

 しかしその顔は暗くはなく、むしろワクワクを抑えきれないといった表情だった。


「飛鳥、遅いですね」


 リハビリ代わりに弄んでいた最新ゲーム機を太ももに置いて、携帯端末を手に取る。

 予定されていた時間になっても連絡は何も無い。

 

 少年は友人と約束をしていた。

 少年は、とある難病を患っていた。

 筋肉が段々と衰えていく、とても厄介な病気。

 死亡率は現代の医療技術を以てしても100%という絶望的な数字がそれを示している。


 少年の病状もかなり悪化しており、自分の足だけで歩くのも難しくなった。

 大好きなゲームも、段々と指先が思い通りに動くのを思い知らせて来るようで、プレイすることに恐怖を感じるようになっていた。


 そんな時、少年はとあるゲームの広告を発見した。

 仮想現実の世界で、まるで自分の身体を動かすかのように操作出来る、フルダイブ型の最新VRゲーム。

 少年はこれだと確信した。


 ゲームに余り興味を示さない親友を巻き込んで、抽選に応募した。

 そして見事当選した。

 衰弱していく一方である少年からのおねだりに、両親は頷くしかなかったので、無事に購入することが出来た。


 ログインする為の準備も万端で、今は親友からの連絡を待っているところである。


「飛鳥のやつ、まさか他のクラスメイトとサッカーでもしてるんじゃないでしょうね……」


 親友への信頼が揺らぎかけた時、携帯端末に光が灯った。

 ディスプレイには親友の名前が表示されている。


『わりぃ、遅くなった!

 ゲーム機買う為に親の手伝いする約束してて、帰ったら即捕まっちまった!』


「はは、飛鳥らしいです」


 少年は思わず笑みを零しながら、携帯端末をゆっくり正確に操作する。

 

『気にしなくていいですよ。それよりも、準備は万端ですか?』


『オッケーだぜ!』


 送信すると、すぐに返事が届いた。

 この瞬間が待ちきれなかったのは友人も同じなんだと伝わってくるようで、それもまた少年の心を高鳴らせた。


「さて、ログインしますか」


 少年はヘルメットを被り、ベッドに横になった。

 待ちに待ったゲームの世界へ行く為に。





 少年は管理AIの案内に従って、キャラクターを作成した。

 色々な要素があるこのゲームにおいても少年はほぼ迷うことなく、十分程でキャラクターメイクは終了した。


『それでは、カスタムポジビリティオンラインの世界を、どうぞ楽しんでください!』


 管理AIに送り出された少年は、新たな世界に降り立った。

 そこは中世風ファンタジー世界のような町並みで、様々な種族のプレイヤー達が歩んでいた。その足で。


「ここが、≪CPO≫の世界……! ――おっと、感動してる場合じゃありませんね。まずは飛鳥と合流しないと」


 事前にIDを交換していた少年は、親友にメッセージを送った。

 そして無事に合流出来たのだが。


 そこには、二人の筋肉モリモリマッチョマンが揃っていた。


「お前、なんだそれ!」


「あ――あなたこそ、どうしてそんな見た目に」


 二人は同じような体格で、上半身は筋肉を見せつけるかのようにタンクトップのみ。

 額には小さな角が二つ。

 違うのは、顔の造り以外では肌の色くらいか。少年は青で、親友の方は赤。

 それは、≪鬼≫という種族の特徴だった。


「お、オレは、その、強そうだなって思ってよ! ゆう――」


「待ってください! ここでは本名は呼ばないようにしてください。それがマナーですから」


「お、おう、わりぃ。≪ダイナ≫って名前にしたんだな」


「はい。ダイナマイトからとりました。爆裂級の筋肉を目指すという、僕の決意の表れです。種族を鬼にしたのも、筋肉がいっぱい付きそうだったからです」


 ダイナは筋肉質かつ知的な顔で自慢げな笑みを浮かべた。

 対するダリラガンも笑顔だ。

 勿論同じになるかもという期待はあったが、まさかここまで予想通りになるとは思っていなかった為だ。


「なるほどなぁ」


「その名前はどういう由来なんですか?」


「オレか? これはなんつうか、強そうだろ? ダリラガーン! って感じで!」


「なるほど、ダリラガンらしいですね」


 単純な思考こそが親友の魅力だと感じていたダイナは、その理由に深く納得してしまった。

 確かに力強い響きだ、と。


「ようし、それじゃあまずは装備でも整えようぜ!」


「あ、ちょっと待ってください! まだそんなお金が――って、聞いてないですね。まったく、もう!」


 こうして、少年は新しい世界での一歩を踏み出した。

 自らの足で。

 


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― 新着の感想 ―
[一言] 良い話っぽく書いてるけど、結局のところは筋肉万歳。 そう唱えるために用意された下地としか見えんです(きっぱり)
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