86 魔神王からのプレゼント
続けて本日二話目の更新です!
『ほう。いいのか? おっちゃんが言うのもなんだが、おっちゃんが授けるスキルは激レアの激レアだよ? 他ではお目にかかれないくらい強力だったりするんだけどなぁ?』
「オレは構わねぇぜ」
「え、いえそんな、せっかくのスキルをもらうなんて出来ませんよ」
しかも超強力だってさ。
ぶっちゃけこいつ胡散臭いけど、本当かもしれない。
「そう言わずにもらってくれよ姫さん。ダイナの奴が一緒なら喜んで受け取るが、オレだけ強くなるつもりはねぇんだ。そんな強力なスキルだってんなら、尚更だぜ」
ダリはいつも通りの筋肉質な笑顔を浮かべた。
本気でいらないらしい。
ダイナと仲が良いとは思ってたけど、思ってた以上の絆があるようだ。
俺に同じことが言えるだろうか。
友情って素晴らしいね。
しかし、そんなことシステム的に出来るのか?
男の様子を窺って見る。
『筋肉ダルマ君へ渡す分をこの華麗なプリンセスに? おいおいそいつは――』
眉間に皺を寄せて、渋い顔をしている。
やっぱりダメか。
『なんて素晴らしいアイディアなんだ! やるね筋肉ダルマ君』
「おう、オレの筋肉はやるぜ」
男はご機嫌に笑い出した。
出来るのか。
しかも何故だか上機嫌で、ダリの肩をバシバシ叩いている。
ダリもまんざらでもなさそうだ。
『そこの御嬢さんも、プリンセスに譲ってみないかい?』
「あ、いえ、私はせっかくもらえるものは有難く頂戴したいと思います。是非とも幸運を更に上げるスキルを私にください!」
『おうけいおうけい。一度口にしたことを取り消す程野暮じゃないからな、そんな必死にならなくって大丈夫だよ。何せおっちゃん、懐広いからね』
ランコが切実過ぎてなんか泣けてくる。
男の方も、俺に向かって一々キメ顔をしてこないで欲しい。
厳ついおっさんにそんな顔向けられても、全く嬉しくないからな!
「それじゃあ私も、長所を伸ばす方でお願いします」
『筋肉ダルマ君からの分はどうする?』
「そちらも長所を伸ばす方向で」
『いやー、ますます魅力的になっちゃうね、プリンセス。そうだ、おまけにレアな装備もつけてあげようかな』
おっさんのウインク。
うっ、俺の心のHPにダメージが。
チャラいキャラってアニメとかでもよくいるけど、女キャラの大変さがちょっと分かった気がする。
しんどい。
『条件を満たした為、称号≪魔神王を撃墜せし者≫を手に入れました。
クラススキル≪更にその先へ≫を習得しました』
『条件を満たした為、称号≪魔神王を撃墜せし者≫を手に入れました。
クラススキル≪更にその先へ≫を習得しました』
『称号≪魔神王を撃墜せし者≫は既に手に入れている為、統合されました』
『クラススキル≪更にその先へ≫は既に手に習得している為、統合されました』
『条件を満たした為、称号≪深淵へと歩む者≫を手に入れました。
クラススキル≪ロードオブプリンセス≫を習得しました』
『条件を満たした為、称号≪収集家≫を手に入れました。
クラススキル≪プリンセスコーディネイト≫を習得しました』
おお、なんか色々増えた。
おっさんの気色悪い笑顔は無視だ無視。
『それじゃあ、名残惜しいけどお別れかな。またその内会える日を楽しみにしてるよプリンセス!』
「あ、ちょっとま――って……?」
言葉を言い終わる前に視界が暗転して、気付けば森に居た。
目の前には見慣れたいつものメンバーがいる。
何故か泣きそうになっているリリィを筆頭に、サンゾウ、レン、ダイナ、アズ。
隣にはダイナとランコもちゃんといる。
どうやら、地上へ転送されたようだ。
「お姉様ぁ!! 心配、心配してましたよお姉様!!」
「わ。リリィさん、どうしたんですか?」
「何事も無く、ホッとしましたぁぁぁ……!!」
飛び込んで来たリリィを受け止めて、聞いてみるもまともな返事がない。
他のメンバーに目を向けてみると、レンが困ったような顔で教えてくれた。
なんと、俺達が探索を開始した頃、穴が閉じてしまったらしい。
それで慌ててメッセージを送ってみるが、俺達からの返事はない。
話を聞きながらメニューを開くと、確かにメッセージが届いている。
ログは……ない。
もしかしたあの洞窟は特殊なイベントダンジョンだったのかもしれない。
そんな状況の中、心配の余り錯乱したリリィの指示で、皆で穴を掘っていたそうだ。
どうりでリリィの手が泥だらけなんだな。
っていうかそんな細かいところまで表現されてるのかこのゲーム。
「大丈夫ですから、安心してください。皆さんに何があったか説明するので、お店に移動しましょう。美味しいものでも食べながら、ランコさんの歓迎会の続きです」
「はい、お姉様……!! みんな、何をぼさっとしてるの、戻るわよ!」
「わー、リリィさんが復活したー! やったー!」
リリィがきびきびと指示を出し、アズは嬉しそうにはしゃいでいる。
サンゾウは既に索敵に出発し、筋肉コンビは置いていた道具を仕舞い、レンは微笑みながら周囲を警戒
している。
そこにあわあわしているランコが加わって、これが俺達のギルドだ。
もっと楽しくなりそうだ。
歓迎会が終わったら、新しく入手したスキルの性能を確認しておかないとな。




