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諸問題対策会議


アルパカ一族、もといリンカ族が来てから三日ほどが過ぎた。戦いで傷を負った人もパレィーア司祭の奇跡で回復し、だいたいがまともに動けるようになっているらしい。


「てなわけで、次の問題は食費なのよね」


工房でトンカチを振るう俺の横で何かの果物のジュースを飲みながらるるセンパイがボヤいた。これでビールでも呑んでたら完全に仕事をサボってるサラリーマンだ。ジュースを置くために持ってきたサイドテーブルには処理しなければいけない書類がどっさり積みあがっている。気分転換にここでやろうとしたのだろうが手は一切進んでいない。


その向こうには改造『アルム』一号の、俺用の機体がほぼ仕上がって試験稼働を待っていた。オプション装備の槍ではなく射撃武器のハンドカノンを持ち、左手のシールドも大型化している。予備の球は15発。心もとない数字だがリロード速度も速くはないため現実的な数だと思うことにする。


「街の人も事情は理解してくれたみたいだけど、あんまりダラダラタダ飯食わしとくわけにもいかないし……とは言え元いたところに突っ返すわけにもいかないし……」


「あの人たち、何食うんですか?」


カンカンと鉄板に反りを入れながら俺は聞いた。力仕事はめっきり苦手だが、バネや仕掛け物の加工ならここの人たちよりは俺の方が上手い。自分こそタダ飯食らいと言われないようにせねば。


「基本的にベジタリアンみたいだけど流石にその辺の雑草までは食べないみたい。村では畑をやったり、あと鳥を狩ってたまに食べるみたいね。今はこないだ回収した桃ニンジンを上げてるけどもう底をつきかけてるし……」


リラバティは鉱石や竜の鱗を売って外貨を得ている国だ。逆に比較的土地は痩せていて農産物は他の街や村に依存している割合が多い。たかが40人とはいえ急な人口増加は結構この城下町の食料事情を圧迫している。


「そうそう、アルパカさん達と言えば漣太郎くんにちょっとお使いを頼みたくて」


「なんですか?」


人手不足のリラバティに来て以来、便利な使いっぱしりにされるのも慣れてきた。るるセンパイはサイドテーブルの書類から器用に一枚紙を引っこ抜いた。


「えー、リンカ……革……生き別れ……10枚……」


「まだまだ駄目ね」


頭の悪い中学生の英訳みたいに喋る俺にセンパイはきっぱりとダメ出しした。


「テ・レト達をその辺で野宿させとくのも可哀そうだし、せめて寝床だけでもって事で大きなテントを作ることにしたの。それで、骨組みはこの工房や街の鍛冶屋ですぐ用意できるんだけど陽射しや雨風に耐えられる丈夫な天幕を作る必要があってね」


「ふむふむ」


「大臣に適任者を探してもらったら、街に革細工の仕事が得意な人がいるんだって。キーナさんって言ったかな。その人のところに発注書持っていって欲しいんだ」


きれいな白い封筒を、はい、と渡してくる姫様。


「革職人さんですか」


「旦那を一年前の戦いで亡くして未亡人だけど、噂だと若くて綺麗な人だって。浮気しちゃダメよ、漣太郎くん」


「しませんよ!」


からかうように言うセンパイにきっぱりと言ってやっている所に明るいミティの声が入り口から聞こえてきた。


「姫様ぁ~、いらっしゃいますかぁ?」


「ここだよー」


気だるそうに手を振るセンパイの所にパタパタとやってきながら、またミティが胸元から書簡を取り出した。見覚えのある筒に見覚えのある封がされている。


「お手紙です」


「またオムソー王?」


「はい」


露骨に嫌な顔をしながら書簡を受け取るセンパイ。あの一件がまだトラウマになっているのだろう。乱暴に封を切り、だらけた格好で手紙に目を通す。


「……ゴーレムの大量生産と同時コントロールが出来るようになったんだって。こないだ会えなかったから見学ついでにまた来ないかって」


「そりゃあ凄い話ですね」


いつぞや会ったネイ士とかいうゴーレム術者の顔を思い出しながら俺は驚いた。性格はちょっとアレだったが、そんな才能の持ち主だったとは。


「仕方ない、これも外交だと思って行ってやるか。ミティ、竜肝の薫製あったでしょ。手土産にするからアレ少し包んでおいて」


「了解でーす」


シュタタと走り去っていくくのいちと入れ違いに羽のついた豚がふわふわと工房に入ってきた。


「お出かけかね姫様」


「ちょっとゴーレム見学にね」


立ち上がって伸びをするるるセンパイの手元の手紙に目を通すベゥヘレム。


「ふむふむ、面白そうじゃな。最近城にばかりいたしワシもついていくかのう」


「別にいいけど、アンタいつまでウチの城に居つくつもりなの?」


「豚一匹くらい住ませておいても良いではないか。狭量な姫様じゃのう」


「ウチは余所みたいに裕福な国家じゃないのよ」


またどうでもいいことで二人が揉め始めた。どっちの味方をしても面倒なので先に『パステルツェン』の準備をして、それから革職人の人の所へ行くことしよう。豚の分まで水を入れて食料も詰め込まねば。


(確かに、るるセンパイの言う通りいつまでいる気なんだろう)


まだ短い付き合いだが飛ぶ豚ベゥヘレムの知識は賢人(豚)の自称通り城の誰よりも広範だった。このワゥカール大陸の事だけでなく他の大陸の事までよく知っている。あのエルノパさんがいろいろ話を聞いていたのも納得だ。それだけにその出自や経歴が気になる。いくら喋れて飛べるとは言え、その辺の雑草も食べないグルメな豚がどこで見聞を広めながらここまでやってきたのか。


(異世界だからそういう種族がいるのかも知れない、けどなぁ)


何か普通の生き物とは……あのリンカ族も含めた、一般的な種族とは違う浮世離れしたものをあの豚からは感じる。俗っぽい発言しかしないせいで普段は気にもしていないが。


「まぁ、食費以外は大して実害も無いようだから良いんだろうけど」


それよりゴーレム見学だ。さっさと済ませて帰国して作業に戻れるようにしないと。馬車に向かう俺にボッズ師が近づいてきた。


「また遠征かね」


「すみません、全然お手伝いできないで……」


「仕方なあるまい、図面を描いてもらえるだけでも何とかなる。それよりアレを持っていかんか?」


ボッズ師はそう言うと親指で俺の『アルム』を指差した。


「試運転は終わったが、足回りの歯車を変えたせいで長めの慣らしが必要じゃ。この誘導杖を使えば自動で馬車について歩行することができる。いざというときには技師殿が乗って姫様守れるしな」


「なるほど……」


ボッズ師から短いロッドを受け取る。元々『アルム』についているオプション品らしい。高いだけあってなかなかの便利商品だ。


「わかりました。できるだけ早く帰ります」


「よろしく頼むぞ」




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