64 企み
「ねぇ、アッキー……さすがにマズイよぉ。今、私の家、お兄ちゃんも帰って来てて、ユッチもいて、いっぱいいっぱいなんだから、お泊りなんて無理だよぉ。お父さんもお母さんも、絶対に駄目って言うよ」
ユッチが校長室に行ってから大分時間が経った頃、図書室での勉強会を予定より早く切り上げて帰り支度を始めるアッキーを引きとめながら、私は必死になって考え直してくれないかお願いした。
「え? なんで? 今日って唯の家、親いないんでしょ? 昨日、言ってたじゃん」
「いつ言ったのよ!? 言ってない! お父さんもお母さんもいるよ!!」
「えー? 何で? ほら、昨日の朝、『明日の夜は“お兄ちゃんと二人きり”で……二ヒヒ』って、『触るな危険』って張り紙したいくらいニヤニヤしてたじゃん?」
似てるのか似てないのかはよく分からないけど、だらしなく頬を緩めた笑い方と声真似をするアッキーを見て、そういえば……と思い出してしまう。
「ふぇっ? ……あううぅぅ、私、そんなニヤけてないもん!!」
「休み時間とか血走った目してメール打ってたよね? 教室うるさいから周りには聞こえてないと思うけど、『空気読め、女狐!』って舌打ちしたの見てマジ引いたわー。で、その後、確かこのノートの隅に……」
「え! ちょっと!?」
まだテーブルの上に置いてあった私の自習用のノートを取り上げたアッキーは、そのままパラパラとそのページを捲っていく。
「あー……やっぱ見間違いじゃなかった。そのとき、ここにコレを書き込んでたよね? その後、このノート抱きしめて気持ち悪いくらいニヤニヤしてたのよね。で、これが何を意味するかって言うと……」
そこには『父→おばあちゃん』『母→おじいちゃん』『姉1→仕事』『姉2→カレシ』と書かれている。
昨日、2人の姉に『明日は外泊して欲しい』とメールでお願いして、何度かの遣り取りで了承してもらったときにとってたメモだ。見られてたなんて……私のばかあああぁぁっ!!
「唯の家の親とかお姉さん、今日はこの矢印の先の所に行くんじゃないかな……て思ったんだけど、どうなのかな?」
鋭い。アッキー……鋭いよ。
「須藤ちゃんは気を利かせて実家だったかな? ……あ。でも、今日は私たちと一緒にお勉強だね」
違うんだよ。気を利かせるのは私の方なんだよ。でも、そんなこと、まだ言えないや。
アッキーは私の両肩に手を置くと、私の顔を真剣な面持ちで覗き込んできた。
「唯はお兄さん大好きだからねぇ……それも、異常なくらい。あの広いお家で2人きり……間違いがあったら駄目だから、今日は一緒に勉強しましょうね」
「ま……間違いって、何かな?」
「そりゃー……唯がお兄さんとやりたいこと、でしょ?」
「お兄ちゃんとヤリタイこと…………はぅっ!」
アレコレと想像して、顔が熱を帯びてきたのを感じたところで、アッキーの手が力強く私の頭をガシガシと乱暴に撫でて、現実に引き戻される。
「唯。マジで取り返しのつかないことだけはしないでね」
「しないってば! 髪ボサボサになるから、やーめーてー!」
アッキーの腕を掴んで止めさせようとしたけど、ビクともしない。
妹はしないよ。唯じゃ駄目だもん。それは“間違い”になるから!
だからね……結衣がするんだよ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
須藤家まで結衣の母親を送り届け、母娘の誘いで家に招かれ、珈琲をいただいていたときだった。
台所では結衣の妹が上機嫌で近所のスーパーで覚えたというBGMを口ずさみながら、姉の御下がりだという猫の絵がプリントされた黄色のエプロンを着て、お世辞にも慣れた手つきとはいえない危うげな手つきで誰が見ても不揃いなキャベツの千切りをこしらえていた。
見ていられないとばかりに妹のもとに駆け寄る結衣を見つつ、ふと運転中にマナーモードにしていた携帯電話が振動していたのを思い出して見てみると、既に3件のメールの着信が表示されていた。
携帯電話を操作して受信ボックスを開いて確認すると、それは唯からだった。時間帯からして、校長室を出る少し前から着信している。
その内容を確認して、俺は自分の頬が引きつっていくのを感じた。
新着メール:3件
003
16時09分
白瀬 唯(妹・三女)
件名:終わった?
本文:お兄ちゃん、先生たちとのお話は終わった?
あのね……困ったことになっちゃった
ユッチから、もう聞いてるかな?
友達がね、勉強会しようって、もうすぐ家に遊びに来るの
それでね、お泊りなの
どうしよう(>_<)
002
16時19分
白瀬 唯(妹・三女)
件名:メール届いてる?
本文:とりあえず、みんなにはユッチの家とは家族ぐるみの付き合いだってことにしてあるから
それでね、お兄ちゃんの部屋のクローゼットのユッチのスペースの下着とかパジャマとか、
私の部屋の方にうつしておいたからね
ユッチは私の部屋を使ってることにしとくから、ユッチに伝えておいてね
まだ時間的に余裕あるけど、他に何かしといた方がいいことあるかな?
001
16時51分
白瀬 唯(妹・三女)
件名:メール見てくれてる?? もう、みんな来ちゃったよ
本文:今、みんなで一緒に晩御飯作ってるの
今日はカレーだよ
今のところ、怪しまれてないみたい
もしかして、帰り、遅くなるの?
慌てて結衣に確認すると、彼女は今まで忘れていたのかハッとしたように目を見開き、学校での経緯を語ってくれた。
なんでも、唯と同学年の先輩がテスト勉強をしようと言い出し、結構強引な流れで急遽お泊り会をすることになったらしい。
一応、唯の方でギリギリまで阻止するつもりだったらしいのだが……このメールを見る限り無理だったようだ。
何がマズイかって?
まだ俺と結衣の関係を親類でもない第三者に感づかれるのは早い。
認知を広げる順序としては、まず俺や結衣の家族や親戚、次に俺の職場の上司等や結衣の学校といったもしもの際にフォローを要請する人や組織、次いで話が通じる特に親しい信頼の置ける交友関係、くらいで考えていた。
職場に関してはすでに所長が知ってくれていて、学校には今日話を通した。
なら、ここからは交友関係に認知を広げるのだからちょうど良いかとも思うが……結衣の話しぶりからして、泊まりにくるいう一行は“話が通じる特に親しい信頼の置ける交友関係”にあると言えるほど付き合いの長い面子ではなさそうだ。
変に誤解されて、誤解した内容そのままに噂でも立てられたら面倒だ。そういう心配のない所から事実を広げていきたかったのだ。
とりあえずメールを読む限り、その友人たちとやらには唯の方から、白瀬家と須藤家がここ最近家族ぐるみの付き合いをしていて、結衣が頻繁に泊まりに来ている……というような予め決めておいた設定を説明してくれているようだ。
となると、帰宅してからはそれらしく振舞うだけだが……“来客”という事態を想定していなかったわけではないが、“泊り”の可能性まで考えてなかった。
実家はそれなりに広い方だと思うが、両親と妹3人だけだったときならともかく、今はそこに俺と結衣も加わって7人もいるのだから宿泊なんてとてもできない。これは家の広さの問題ではなく、キャンプみたいに雑魚寝しようにも寝具の絶対数が足りないのだ。それに、そんな大家族のいる家に遊びに行くだけならともかく、泊まるというならかなり気を使うものではなかろうか?
(なのに……どういうことだ??)
いくらその先輩が唯と親しくて、強引にお泊り会をしようとしても、唯がそうした家の事情を話せば無理だと諦めがついたはずだ。無理でなくても気を使ったりしないだろうか?
それなのに、どうしてその先輩はそれを可能と判断したのだろう? そういう考えが及ばないほど抜けてるのか、楽観的なのか、それとも解決できるだけの策士(?)なのか?
いやいや、それ以前に両親が駄目と言うはずである。しかしメールの文面を見る限り、唯や彼女たちは夕食の準備を進めているのだから、既に容認されているのだ。いったい、何故?
メール送信
17時03分
件名:無題
本文:何でそんな事態になったの?
父さんと母さん、ダメって言わなかったの?
新着メール:1件
001
17時06分
白瀬 唯(妹・三女)
件名:ごめんなさい
本文:今日ね、お母さんもお父さんも、おじいちゃんとおばあちゃんの家に行っててね、
明日まで帰ってこないの
フミ姉ちゃんの学校もテスト期間らしくて、
仕事が忙しくて、どうせ遅くなるからって学校に泊まるって
サト姉ちゃんは彼氏の家だって
そのこと、アッキーに知られちゃったの(>_<)
ごめんなさい
……なんじゃそりゃ??
結衣に今日は家族がほとんど不在であることを知っていたか確認すると、全く知らなかったらしい。
メールでは埒があかないと判断して、俺は妹のケータイに電話をかけることにした。
『もしもし、お兄ちゃん? お話うまくいった? もしかしてまだ取り込み中? 遅くなるの??』
繋がるや否や妹は切羽詰った様子で切り出してきた。何やら扉を閉める音も聞こえた。
なかなかメールに返信がなかったので、こちらのことを大分心配していたようだ。
メールの返信が来て、さらに通話ができたことで、少しは安心したのか声が嬉しそうに弾んでいる。
とりあえず、学校での交渉は上手く纏った事、今は須藤家にいることを告げて、俺はすぐに現状を確認することにした。
「あのさ……今日、父さんと母さん帰らないって、マジ? てゆうか、文香も聡子も外泊するとか初耳なんだけど?」
両親だけが不在するならまだわかる。どちらも祖父母の様子を親戚で交代で見に行っているので、たまに重なる日はあった。文香や聡子もいい大人だし、仕事や交友関係の都合でいきなり外泊する事だってある。
しかし、こうも全員が全員そろって不在になるなんて考えられるだろうか?
しかも、唯の友達は事前にそれを知っていたからこそ『お泊まり会』を強行出来たというのだから、今日家族が不在することはかなり前から予定されていたのではないだろうか?
そのことも含めて聞いてみると、電話の向こうの妹はどこか泣きそうな小さな呻き声をあげたかと思うと、やがて小さくため息をついて話し始めた。
『そうだよ。今日はユッチとお兄ちゃんを家で二人っきりにしようって、一昨日の夜、お母さんたちと相談して決めたの』
一昨日というと、今日学校に挨拶に来ることを決めた日か。結構、最近だったんだな。
詳しく聞くと、母親が祖父の家に行くのは前から決まっていたようだが、そこに急遽父親を便乗させたらしい。俺が一旦帰宅して、しばらくしてから母の車で出たようだ。
『今日はお兄ちゃん、早く帰るって話だったから、フミ姉ちゃんもサト姉ちゃんも気を使ってくれたんだよ。ほら、私たちがいたら、その……エッチなことできないでしょ?』
「そういう気は使わんでよろしい!!」
「「「!!?」」」
「……あ」
急に大声を出したものだから、須藤家の母姉妹たちが驚いた様子でこちらに目を向けた。
未だに俺を時間が止まったかのように錯覚させる、よく似た黒くて大きな瞳をいつもの3倍向けられて、その涼しげな3対の双眸を直視したことで、ほんの一瞬だけど全身が凍てついたような錯覚を覚えた。
なんなんだろう、この家系? 遺伝子の力って凄いな。
すいません、と小さく謝ってから、俺は気持ちを落ち着けようと咳払いを一つして電話の向こうの妹に尋ねた。
「それで……その友達って、大丈夫なのか?」
『今のところはね。私とユッチが仲良しだって、学校ではよく知られてるからね……家族ぐるみの付き合いって説明で、皆なんとなくだけど納得してくれてるよ。でも、本当のことは“まだ”言わない方がいいし、知られたらまずいと思う』
(あれ? だったらやり過ごせるんじゃないか?)
ふと、ここで俺は落ち着いて考える。
そういえば唯のメールは最初こそこの事態に対して不安な様子が伺えたが、2つ目はそれに対して有効な対策をとっていることが伺えた。3つ目は現在の状況を伝えているものだが、それに対する不安よりは俺と結衣の学校との交渉の行方と帰宅時間を気にした内容だった。
つまり、今の状況は特に悪い訳ではない。“お泊まり会”という不測の事態が起きただけで、誰からも変な勘繰りも疑いもされていない。
最後のメールの「ごめんなさい」は、どうしようもない危機的事態を招いてしまってごめんなさい、ではなく、せっかく2人きりにするつもりだったのに邪魔を入れてしまってごめんなさい、ではないのか?
でもって、俺のここまでの焦りって……勝手に悪く考えていただけか?
「え~と……とりあえず、これから帰っても何とかなりそう?」
『うん。どうにかなると思う。でもね……今日はお兄ちゃん一人で寝ることになるでしょ? さみしくない?』
ほんの一瞬だけ、妹の気遣いにどう反応したものか迷った。俺、そんな寂しがりやか?
「……まぁ、そこは仕方ないだろ。てゆうか、そんな気を使わなくていいからね」
『本当にごめんなさい。それで、その……そういうわけだから、小夜子さんと麻衣ちゃんには、私が今日そっちに行けなくなったって伝えてくれないかな?』
なるほど……唯は唯で須藤家に泊まる予定だったのね。
当然といえば当然なのだろうけど、須藤家にも協力を求めていたようだ。
「あら……そうなの」
電話の向こうの唯の声は聞こえていないようだが、結衣の母親はここまでの俺の話しぶりから大体の事情を察したようだ。
「えーっ!? 先輩さん来ないの!? 何で? 何で? だったら私も先輩さんの家に泊まるー!!」
不揃いな千切りキャベツの山を小さなポリ袋に小分けにしていた結衣の妹が、信じられないとばかりに声を上げた。頬を膨らませて、唯が来るのを楽しみにしていたのか、涙目になりながら駄々をこねはじめた。
ちなみに、千切りキャベツの小分けはサラダ用に1食分ずつにしているらしい。必要なときに必要分をすぐに用意できる工夫らしいが……それ聡子が居酒屋とかでやってたな。とても小学生の女の子の発想とは思えない。
(てゆうか……あれが1食分?)
ファミレスとかのカツ定食の添え物のキャベツの実に4倍近い量が入ったポリ袋を見て、少し驚いた。
育ち盛りで食べ盛り、そして遊び盛りの子供なら確かにそのくらいは余裕で食せるのかもしれないが、あれだけで腹の殆どが膨れるのではないだろうか? 量を重視した食事かな? もしそうだとしたら、やっぱり家計が厳しいのだろうか? 一応、心配した俺の実家がずいぶん前に結衣の母親に援助を申し入れたようだが、丁重に断られたと聞いている。
(次に来るときは、何か美味しいお菓子でも持って来よう)
「麻衣。唯先輩を困らせちゃ駄目でしょ」
結衣は騒がしくなった妹を宥めるのに手一杯になっている。彼女の場合は唯の企みについては何も知らなかったので、この状況に少し複雑そうな表情を浮かべている。
携帯電話を結衣の妹に手渡し、唯と直接通話させると、二言三言何かを話して大きく頷いた後、先ほどの膨れ面が嘘のような笑顔になった。唯のやつ……慣れてるな。
キャベツの残渣がこびり付いた携帯電話が返ってきたときには、通話はもう切れていた。
代わりにメールが1件あった。「早く帰ってきてね」とだけあった。
「そんなわけなんで……そろそろ帰ります」
「あのね、お兄ちゃん?」
「?」
玄関まで見送りに来た結衣の妹が、俺の服の袖を掴んで引き留めるように呼んだ。
立ち止まって振り返ると、彼女は姉によく似た大きな瞳を不安そうに潤ませ見上げながら、チョイチョイっと指で何か合図している。
それが『耳を貸せ』という意味だと気付いて、とりあえず彼女の頭の高さに合わせて膝を曲げ、耳を傾ける。
「先輩さんがね、言ってたんだけど……お姉ちゃん、今日は“安全日”なんだって。だから今日は仲良くするのにとっても良い日なんだよ、って言ってたんだけど……どうして仲良くするのにお姉ちゃんが安全な日じゃないといけないの? もしかしてお姉ちゃん、最近機嫌悪いの? お兄ちゃん、お姉ちゃんと喧嘩とかしてないよね? 仲良くしてるよね? ちゃんと結婚するんだよね?」
「……!!? …………あー……え~っと……その……」
結衣に聞こえないように告げられた事実と誤解に、俺はどう答えたものかわからず、俺は痛み始めた額をおさえて唸った。
そんな俺の反応が余計に不安を煽ったのか、結衣の妹は姉によく似た綺麗な目を潤ませて、返答を催促するように俺の服を掴んで真剣な面持ちで見つめてくる。
そんな妹と俺の様子を、何も聞こえていない結衣は小首を傾げて不思議そうに眺めていた。
(唯のやつ…………そういう気遣いはせんでいいから!!)
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
通話を切った私はトイレを出て、アッキーたちのいる台所に戻った。
ふと気が付いて、ここまでの送信ボックスのメールを全部削除して、お兄ちゃんに「早く帰ってきてね」とだけメールする。
とりあえず、お兄ちゃんたちの学校でのお話は上手く纏まったみたいでホッとした。
でも、私の計画は失敗した。お兄ちゃんとユッチには、今日は2人きりになって欲しかった。
「唯……不貞腐れてる?」
サラダに使うレタスを千切りながら、アッキーが意地悪な笑みを私に向けてくる。
細身のジーンズに白の長袖シャツというシンプルで身体の線がよくわかる服装なので、彼女のスタイルの良さが際立って見える。その上にチェック柄のエプロンをつけているのだけど、胸の部分を押し上げている私にはない膨らみを見ると余計に腹が立つ。
(コイツサエイナケレバ……)
「当たり前でしょー!」
「わー、こわーい」
頬を膨らませて睨んで、これでもかと不機嫌であることをアピールしたのに、アッキーは楽しそうに笑っている。
「ぁの……先輩、ごめんなさい」
洗い物をしていた後輩の榊 綾香、通称:アーヤがオロオロしながら手を止めてこっちを見ている。
アッキーの提案に予定が合うからと乗ってきた子で、私やユッチなんかより頭一つ分は小さくて小学生のような女の子だ。部活は違う(文芸部だったかな?)けど、1学期はユッチのすぐ後ろの席に座っていて、ある日のお昼休みに一緒にお弁当を食べたことから、ちょっとずつユッチと仲良くなった。学年での成績はとにかく優秀らしくて、1学期は授業中にボーっとしていることの多かったユッチを勉強の面でよくフォローしてくれていたそうだ。
「もうこうなったら1人も2人も変わらないよ。気にしないで」
申し訳なさそうなアーヤを見て1つため息をついてから、私はカレンダーを見た。
(まぁ、いいか。まだまだチャンスはあるし……次こそは、ね)
今日の日付から次の機会を指折り数えて、これまでの観察結果も考慮して、予想する。
こんなことなら、もっと早く計画しておけばよかった。さすがに今回は急すぎたし、ちょっと我侭しすぎた気もする。ここ最近バタバタしてたから、こういう“重要な事”をすっかり忘れちゃっていたのも反省しなきゃ。
だから次は、お父さんやお母さん、お姉ちゃんたち、小夜子さんや麻衣ちゃんも協力しやすいように、慎重に計画的にお兄ちゃんとユッチを2人きりにしないとね。それに、お兄ちゃんとユッチがその気になるように、もう一押し何か準備が必要だったかもしれない。
(だって……お兄ちゃん、へタレだからなぁ。まぁ、そういうところも含めて好きなんだけど)
ねえ。お兄ちゃんは知ってた?
今日はユッチ、危険日だったんだよ♪
とりあえず、目標だった2話分の更新は達成。
異動の準備にとりあえずの目処が立ったので、次話も近いうちに出せる……と思います。
65話で一旦は打ち止めにして、66話の更新は夏になりそうです。
毎回待たせてばかりの作者ですが、気長に待っていただけますと幸いです。




