エピローグ:幼馴染と恋愛なんて……
あれから、早くも一年が経った。
日向とは、以前のように幼馴染として、普通に付き合っている。
毎日のように朝、一緒に学校に行くことはないけど、普通に話もするし、
休日になれば、陽愛ちゃんとひかりも交えた4人で、テスト勉強をしたり。
ひかりがあまりにもアホすぎて、日向が頭を抱えていたのには流石に笑った。
そして、一番変わったのは、日向と陽愛ちゃんとの関係かもしれない。
日向とまた付き合いが始まった当初は、陽愛ちゃんが日向と話そうともしていなかったが
最近では、二人だけで遊びに行くのを、まれに見かけるようになった。
曰く、
「兄につっちーを取られたから、ヒナちゃんと遊ぶようになった」
らしい。
俺のせいかよ。
そんな日向は、長かった髪を肩口でばっさりと切ってしまった。
綺麗な髪だったのにもったいない、というと
「暑いのにこんな長い髪なんてもうやってられない」
という返答だったが、一時、学校では大変な騒ぎになったのだ。
伊月さんが失恋したのではないか、相手は誰だ、どういうことだ、と。
実際、失恋したのでなんともいえないが、日向は全く気にしていないようだし
お手入れも楽になった、と言っていたのでいいんだろう。
いいということにしておこう。
それにしても。
「思うんだけどさ、お前って俺の幼馴染になんの?」
「なんですか、急にそんな事聞いて」
「いやさ、よくあるじゃん、幼馴染が後から出てきた女の子に、好きだった男の子を取られるって」
「あー、よくある物語のテンプレですよねぇそれ」
「今回はからずも、俺とお前と日向の三人でそんな感じになったわけだが……」
「うん……うん? そうなのかな……?」
状況的には、幼馴染の日向と、後から陽愛ちゃんが連れてきたひかりだから
そう違いはないと思うのだ。しかし、ここでひかりが幼馴染だとすると……
「そうなると、今度は俺かお前に、また後からライバルキャラが現れて……」
「なんですか浮気宣言ですか最低ですねセンパイ」
「お前がするかもしれないだろ?」
「ボクが何年センパイに片思いしてたと思ってるんですか、ありえませんね」
「さよか」
「それよりも! あと一つでインハイ本選出場ですよ! 負けたらマジで怒りますからね!」
「任せとけ、今の俺も絶好調だ!」
ぐっ、とひかりにサムズアップして、アピールすると、
ひかりも同じく、サムズアップして返してくる。
ひかりが見ていてくれるなら、俺は絶対負けない。
「出場枠に残れたら、あとでちゅーしてあげますよー!」
「それはもう散々してるから、他のモノくれ」
「えっ、他のモノって……」
「何をくれるのかは、お前に任せる! じゃ、行って来るわ」
「頑張ってくださいね、センパイ!」
幼馴染と恋愛なんて、一年前の俺は考えてもいなかった。
日向とは完全に疎遠になってたし、ひかりについてはウザい後輩としか思っていなかった。
そもそも、ひかりを幼馴染なんて思ったこともなかったしな。
それが気がつけば、こんな状況になっていて、笑うしかない。
それでも俺は、大切なものに、大切な人に気付く事が出来た。
観客席から、日向と陽愛ちゃんが手を振ってくれているのが見える。
俺にとっても、日向にとっても、初恋は苦いものとして終わってしまったけど。
それでもこれからは大切な友人として、付き合っていけるだろう。
そして、ひかり。
俺をこれまで支えてくれた、大切な女の子。
これからは一方的に支えられるだけではなく、俺もひかりを支えながら、走っていきたい。
ずっとずっと、何年たっても、何十年たっても。
ここまで読んで頂きまして、ありがとうございました!




