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幼馴染と遊びに行こう!

 夏休みになって、早数日。

気がつくと、日向とプールに行く日になっていた。


「陽愛ちゃん、ちょっと出てくるね」

「りょー。今日はどこ行くの?」

「プールに行って、兄は一人前の男になってくるぜ!」

「そういうところほんとキモい」


陽愛ちゃんにキモいって言われた!

泣きそう……。


「お土産、なんか買ってきてね」

「わかったー、楽しみにしててねー」


 * * *



「よーし! それじゃあいこっか!」


 相変わらず家の前ではなく、駅前で合流するという謎の儀式を経た俺たちは、

電車からバスに乗り換え、総合運動公園内にある市民プールへとやってきた。

ここは、競泳プールや波のプールにファミリープールなどがあるほか、

滝があったり霧が出るギミックがあったりとで、大人から子供まで楽しめるプールになっているので、とても人気があるプールなのだ。


「それじゃあ、着替えたら更衣室の前で集合ね!」

「了解、あんま遅くならないでくれよ?」

「ふふふ、女の子の準備には時間がかかるものなんだよ?」

「ま、期待してるわ」

「楽しみにしててね!」


 チケットを購入し、それぞれの更衣室へと向かう。

男子の着替えなんて脱いで穿いて終わりと簡単なものだ。

さて、日向はまだかなっと……。



 ……更衣室から出て、ゆうに10分ほど経ったが、まだ出てこない。

うーん、遅いな、何かあったのだろうか? と心配になってきたところに……。


「ごめんねヨウくん、お待たせ!」


ああ、やっぱりよく似合ってる……。

先日一緒に買いに行った、花柄のセパレートタイプの水着はやはり日向によく似合っていた。

そして何より!

何より!!

ポニーテールにしてるのがいいですよね!!


「やっぱりその水着、よく似合ってるな。髪形も可愛いぞ!」

「え、えへへ……そうかな? ありがと!」

「おお、この前の浴衣でも思ったけど、うなじが見えてるのがいい」

「ちょっと、それ変態っぽいよヨウくん……!」

「知らなかったのか? 俺がうなじフェチだと!」

「もう! 変な事言ってないで、泳ぎにいこ!」


 というわけで。

まずは定番の、流れるプールから行こうか、ということになった。

流れに実を任せてぼーっと浮かびながら、日向と色々と話す。

内容は本当にどうでもいいことばかりだ。


「あーヤバイ、この流れるプール超気持ちいいよな……」

「浮き輪とか持ってくればよかったかなぁ、それならもっと気持ちよかったかも」


そういいながら、俺の肩に掴まりプカプカと浮いている日向が恨めしい。

くそっ、水でもかけてやるか!


「おりゃっ」

「わぁっ! ちょ、ちょっとやめてよぉー!」


そして俺も水をくら…くらうってちょっとやりすぎじゃないの日向さん!?


「ふふふ、お返しだよ! おりゃー!!」

「バカお前、沈めるのはダメだろがぼぼぼぼ……!!」

「あはははは!」

「くそっ、お前も沈め!」

「足っ、足掴むのはダメーー!!」


 そうして俺たちは、流れるプールからウォータースライダー、

波のプールへと次々渡り歩いていく。

ああ、なんか懐かしいなぁこの感じ。

最後に日向とここに来たのって、中学1年の夏だっけ?

あの時もこんな風に、走り回ったなぁ……。


「ん? どうしたのヨウくん」

「いや、なんか懐かしいなって思って。昔もこうやって、ここで二人で走り回っただろ?」

「琵琶湖もね」

「琵琶湖はさすがに、俺と日向と二人でいける距離じゃなかったからなぁ……」


あの頃は、繁華街に出るのにもおっかなびっくりだったのを覚えている。

ハブ駅の乗り換えなんて、どこに何があるかわからないし、

うっかりバスにのったら山の中で降ろされて途方にくれたこともあった。


「今思うと、ものすっごくヨウくんに振り回されてた気がする……」

「いや、振り回してたの間違いなくお前だからな?」


部活の休みで寝てたいのに、人の家に上がりこんで俺を連れまわしていたのは誰だ。

おかげであの頃は、休みなのに休みが全然なかったんだぞ!


「だって、ヨウくんと一緒にいると、すっごい楽しかったんだもん」

「そのせいで、あの頃の俺は疲労困憊だったけどな」

「ふふふ。でも、今思うとヨウくんと一緒だったら、あの時はなんでも楽しかったんだよ」

「お前今、恥ずかしいこと言ってるぞ?」

「いーの、なんかそういうこと、言いたい気分なの!」

「……さよか」

「ふふふ、もちろん今もすっごい楽しいよ! 今ならなんだって楽しめちゃいそう!」


 水に反射した日の光を浴びて、日向がキラキラと輝いているように見える。

本当に、今が楽しくて嬉しくて仕方がない、という感情が明け透けに見えて、

正直、今の俺には、日向が眩しすぎる……。

俺はこんな日向に、何を返してやれるんだろう?

……俺の中に、日向に返せるものが、あるんだろうか?


「なら、久しぶりに近所の某戦国武将の最後の地の肝試しでも行って見るか!」

「うっ……あ、あれはちょっと……スイマセン……」


日向の表情が目に見えてガクッと曇ったのを見て、笑ってやると水を掛けられた。

また、日向の表情が輝く太陽のような笑顔になる。


やっぱり、日向には笑顔が一番似合うなと、本気で思った。


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