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幼馴染の浴衣姿がヤバいという話

 7月14日。

今日は宵山、日向と約束した祭りの日である。

なぜか日向の強い希望で駅前の時計前に17時集合!

ということになったので、15分前に到着するように調整。

家の前で待ち合わせれば、面倒臭くないのになぜ外で待ち合わせねばならないのか。

日向もひかりも、俺には何を考えているのかさっぱりわからない!



 そうして日向を待つつもりだった時計の前で、

誰かに話しかけている二人組みの男が見えた。

あの位置的に考えても、まず間違いなく絡まれているのは日向だろう。

あいつ、なんでこんなに早く来てるんだよ……。

ため息をこぼしながら、待ち合わせ場所へと歩いていく。


「はいはい、ちょっとごめんね……悪い、待たせた?」

「あっ、ヨウくん!」


それまで無表情だった日向が、ぱっと笑顔になる。

うん、やっぱり可愛い……こりゃ絡まれるよなぁ。


「なんだよお前、今この子と遊ぶ約束してるんだけど?」

「そーそー、彼氏とかじゃないなら邪魔しないでくれる?」

「ああ、俺が彼氏なんで、連れて行かれたら困るんだけど?」


そういうと、悪態をつきながら二人組みは離れていった。

なんで日向は、こういうのに絡まれる事が多いのかね?

見た目がいいってのも、考え物だなほんと……。

こんなんでよく、一人で出歩けるなと関心してしまう。


「悪い日向、早く来たつもりだったんだけど……待たせたか?」

「ううん、大丈夫、さっき来たところだから!」


にっこりと笑顔でそう返事をしてるけど……うん、これは……。

じーっと日向の目を見る。


「な、何かなヨウくん……?」

「……………」

「う、うう……」

「…………………………」


ひたすら、日向の目をじっと見つめる。

そうすると、どんどん日向の顔が赤くなり、目があちらこちらを彷徨い……


「ほ、本当は30分前から待ってて『今来た所だよ♪』ってしたかったんです……」

「はー……そんなくだらない事考えてるから、変なのに絡まれるんだろ……」


普通に家の前で待ち合わせていけば、なんの問題もなかったのに。


「デートの待ち合わせなんだから、お約束したかったんだもん……」

「もんじゃないよ、そのせいであんな目にあってんだから」

「でも、そのおかげでまたヨウくんに助けてもらえたからいいの!」


相変わらず、あひる口でぷーっと怒った表情をする日向を見て、

あーこれは何を言っても無駄だな、と思い直す。

こうなった時の日向は、テコでも動かないのを長い付き合いで分かっているのだ。



「そ、それよりも……!」


両手をばっと広げ、こちらに笑顔を向け……


「ヨウくん、何か言うことあるんじゃないかな?」


そこで初めて、今日の日向の全身を正面から見た。


 今日は、黒地になでしこ柄で清楚な雰囲気の浴衣だ。

薄く化粧を施し、白い頬はチークで薄く桃色に色づいていた。

そしていつもとは違い、今日は髪を結い上げているので、うなじがまた色っぽい。


少し幼い印象の残る日向に大人っぽい浴衣を合わせることで、

とてつもない美しさの美少女になっていた。

正直に言って、めちゃくちゃ似合っている……。


「う、うん、普通に、可愛いと思うよ?」


正面から見るのが少し恥ずかしく、思わず目線を逸らしてしまう。

今日の日向はだめだ、目に悪すぎる!

その態度が気に入らなかったのか、日向が俺の顔を両手で掴み、

無理矢理自分を見るよう、正面に向けてきた。


「はい、ちゃんと見て、感想どうぞ?」


数秒間、日向と見詰め合う形になる。

徐々に顔が赤くなっていくのが自分でも分かる。

は、恥ずかしい……!


「に、似合ってる! 今日の日向は綺麗だと思うよ!!」

「はい、よく言えました♪」


強引に日向の手を振りほどき、また目線を逸らす。

くそ、本当に今日の日向はダメだ、見ていられない!


そんな俺の態度に気をよくしたのか、日向が凄く嬉しそうな笑顔になっているのがわかった。

その笑顔ですら、物凄い破壊力なのを自分でわかっているのだろうか?

これじゃあ、日向と祭りになんていけないぞ……!


そうして目を逸らしていると、日向がそっと、俺の手をとってきた。

一度手を離そうとすると、今度は指を絡めて、しっかりと握ってくる。

いわゆる、恋人つなぎというやつだ。


「日向……っこれ……」

「ふふ、今日は彼氏なんでしょ? じゃあ、これくらいはね?」

「……はぐれないようにって意味だって、受け取っとくわ」

「ま、それでもいいよ」


クスクス、と笑う日向を目に入れないように気をつけながら

お祭りの会場へと歩き出したのだった。



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