25)
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親友のカステヘルミは一妻多夫を応援しているかもしれないけれど、そんなカステヘルミを私たちは応援しているのよ!
とにかくあの男は最低よ!いくら王命だからといっても、さっさとカステヘルミが離婚できるようにしてあげないと可哀想よ!だからこそ、私たちは公爵家界隈の噂をかき集め出したのだけれど、
「リューディア嬢、君は我がラウタヴァーラ公爵家に喧嘩を売っているということなのかな?」
おじさんに呼び出されて軍部に顔を出した私は、待ち構えていたオリヴェル氏に捕まってしまったのよ!彼は物凄く不機嫌そうに言い出したわ!
「噂が出回って大変なことになっているようなんだがね?」
「あの・・公爵家に喧嘩なんてとんでもない話です!」
私は慌てて首を横に振りながら言ってやったわ!
「それに!私は真実を言っているだけですもの!」
「ユリアナが婚約者や恋人を奪い取るようなことをするわけがないではないか?」
「まあ!まあ!そんなことを宣言してしまっても宜しいのかしら?」
私はバッグから扇子を取り出すと、バサッと広げてパタパタ仰ぎながら言ってやったわ!
「新郎である貴方様は結婚式の後にカステヘルミの顔を見に行くことすらしなかったということをユリアナ様は知りながら、貴方と貴方のお兄様をガゼボでのお茶会に誘い出し、両者を両側に侍らせてサンドイッチ状態で楽しんでいたのは知っています。彼女はいつでもそういったことをしているのです、他所の子爵家、男爵家の婚約者もいるという男性にちょっかいを出し、自分の婚約者がユリアナ様とデレデレしているところを見せつけられている令嬢たちは、非常に苦しい思いをしているのです!」
私はそう言って目の前の男を睨みつけてやったのだけれど、オリヴェル氏は心ここにあらずといった様子で、
「ユリアナと私たち兄弟は幼い時から兄妹のようにして育ったのだから、何の問題もないと思うのだが?」
と、言い出したのよ。
「本物の兄妹でもそんな年齢にもなって、サンドイッチ状態でなんか座らないですよ!」
パチパチと紺碧の瞳を瞬かせるオリヴェル氏を見上げながら言ってやったわ!
「兄妹同士でサンドイッチもそうですけど、ユリアナ様って本当に!ベタベタするのがお好きなのですね?寄子となる貴族を招いてのお茶会なんかでは、好みの男性の膝の上に乗ってはしゃいで楽しんでいるそうですわよ?」
私がそんなことを言った途端に、オリヴェル氏の視線は針のように鋭くなったわ。
「ユリアナを侮辱するようなことを言うな!」
怖っ!と、思いつつも、その怖さ以上に怒りが込み上げて来る!何こいつ〜、物凄く腹が立つんだけど〜!
すると執務室の扉がバタンと開いて、
「おお〜、おお、おお、お前が直接謝罪をしたいと言っていたから、うちのリューディアちゃんに会えるようにセッティングしたというのに?お前は何をそんなに苛ついているのかな?」
丁度良いタイミングでおじさんが来てくれたわ!
「おじさーん!」
私は部屋に入って来たおじさんに抱きつきながら言ったわよ。
「リューディア、本当に怖かったの!」
「オリヴェル、てめえ〜!」
おじさんはとっても優秀な医者なのだけれど、あっという間に着火するのがおじさんの特徴なのよ!
「ですが!リューディア嬢が我が公爵家を傷つけるような噂を広めているのは間違いない事実ですし!」
「お前のところの一妻多夫を応援しますってやつ、そもそもの出所はお前の妻だぞ?そのお前の妻の派生版がリューディアの言うところの、やっぱりピンク頭ってヤバイ奴ってことだろ?」
「ユリアナはヤバイ奴ではありません!」
「おい!おい!おい!」
おじさんは心底呆れた様子で言い出した。
「アドルフ殿下も言っていたけどよお、お前の家って母親と預かっている女が絡むと、途端に訳わかんなくなるよな〜」
私もパウラ夫人とユリアナ嬢は確実に頭がおかしいヤバイ奴だと判断したわけだけれど、何故だか、公爵家の人たちって頑なにそれを拒否する傾向にあるのよね。
私とおじさんとオリヴェル氏は、軍部にあるおじさんの部屋(執務室)に居るわけなのだけれど、どんどんと殺伐とした空気が濃くなっていくようだわ!
おじさんは熊みたいな顔を歪めて、歯を剥き出しにして威嚇するように言い出したの。
「とにかく、俺はお前がうちのリューディアに直接謝りたいと言うからこの場をセッティングしたんだが?そもそものところ、謝る気あんのか?」
そこでオリヴェル氏は即座に返事をしたのよ。
「謝ります!」
急に潔くなったわね。
姿勢をピンと正したオリヴェル氏は九十度に頭を下げると、
「確かに私は、王命で授かったというのに仕事にかまけて、自分の妻のことを蔑ろにしていました。令嬢たちが私の妻に対して心配するは当たり前のことであり、あそこで私が取った態度が不適切だったのは間違いない。大変、申し訳ありませんでした」
と、言い出したのだけれど・・
「私に謝られても困るんだけど〜」
そりゃそうでしょう?彼が謝るべき人って他にも居るわよね?
「まずは、てめえは、てめえの女房に謝るところから始めないといけないな」
顔を上げたオリヴェル氏は、
「残念ながら家に帰っている暇がありません!」
と、言い出したわよ。開き直ったのかしら。
「まあな、指揮官に適当な人間がてめえくらいしかいないっていうんだから、軍部のモラルはどうなっているんだと疑問に思わずにはいられねえんだが」
おじさんは大きなため息を吐き出すと、
「リューディア、今日はお前に知らせなくちゃならないことがあって呼んだんだ。この男は事件を取り扱う責任者になるから、俺がお前に何を言うのかを確認するために立ち会うことになったんだ」
と、深刻そうに言い出したのよ。
これは・・もしかして・・まさかだけど・・もしかして・・
「やっぱり犯人はミカエルだったのね?」
私は胸の前で両手を組みながら言ってやったわよ。
「やっぱり名探偵の勘が冴え渡っていたってことでしょう?だから最初から言ったじゃない!ミカエルが犯人だって!」
「いや、ミカエルは犯人ではない」
おじさんは嫌にキッパリと言った後に、熊みたいな顔をくちゃくちゃにしながらオリヴェル氏を睨みつけているわ。
すると、おじさんの後を引き継ぐようにしてオリヴェル氏が言い出したのよ。
「まず、メゾンのマダムを後ろからナイフで突き刺して殺したのは、花屋のジェニーの姉であるエリーナ嬢だと推察される」
「リューディア、ジェニーちゃんがミカエルから言われていたのに、激しく後悔をしているということは知っているか?」
「そういえば、それに近いことを彼女は確かに言っていたような・・」
あの日、私とマリアーナは花屋に勤めるミカエルの恋人に会いに行ったのだけれど、花屋に勤めているのは恋人ではなく、恋人の妹だったのよね!そこで中央広場の噴水の近くに移動をした私たちは、メゾンのマダムが殺されたという話をジェニーさんにしたのだけれど、
「やっぱりミカエルさんが言っていたことは本当だったんだ!ああ!なんてことかしら!お姉ちゃん!エリーナお姉ちゃん!」
そんなことを、ジェニーさんは自分の顔を両手で覆いながら言い出していたわね。
「ナザレノ・ティコリというメゾンは帝国の最先端のデザインを取り入れたドレスを作るということで有名なのは、お前も知っていることと思うんだが、ここのマダムが、実は顔が可愛い針子たちを言葉巧みにそそのかして、売春行為をさせていたんだわ」
「ば・ば・ば・・売春行為ですって〜?」
確かに・・確かにエリーナさんはプロポーション抜群の美人だったけれども!
「ミカエルは、兎にも角にもマダムとはさっさと手を切って、妹と二人で王都を出るように勧めていたんだが、途中でエリーナ嬢には愛する恋人とやらが出来てしまったみたいでな」
あらまあ、ミカエルったら美人のお姉さんに振られてしまったということになるのね!
「恐らくその恋人とやらに唆されたエリーナ嬢は、マダムをひと突きに刺して殺すことにしたんだな。ちなみにこのマダムと、エリーナ嬢にマダムを殺せと唆した男は、オムクスが送り込んできたスパイだ」
うーんと・・急にスパイが出てきたな。
するとオリヴェル氏がちょっと前のめりになりながら言い出したのよ。
「リューディア嬢、君は果敢にも死体発見後すぐに憲兵隊を呼び、遺体の近くには誰も近づかないように予防線を張ってくれた。その日はメゾンも定休日で閉まっていたため、その間に店の方を誰かが出入りすることもなかったんだが、その肝心の店の中から我々が欲していたものが消失していたんだ」
「一体何が消失したんですか?」
「マダムは売春を斡旋していたわけだが、その顧客情報が煙のように消えやがった」
「その顧客情報は、確実にマダムのメゾンにあったのですか?」
「確実にあった、内容も確認済みの状態でな」
「じゃあ、なんで内容を確認した時に押収しなかったんですか?」
「それは敵を泳がせて、我が国に潜伏しているオムクスのスパイのアジトの摘発にまで持ち込みたかったからだ」
ええーっと、それはつまりそのー。
「完全に、後手後手に回っちゃったということですよね?」
私の質問に、
「「そう!」」
と、二人は声を揃えて答えたわ。そういうところはとっても潔い二人なのね!
こちらの作品、アース・スター大賞 金賞 御礼企画として番外編の連載を開始しております。殺人事件も頻発するサスペンスとなりますので、最後までお付き合い頂ければ幸いです!
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