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隣国オムクスは我が国の東に位置する、我が国との関係性がとーっても悪い国になるの。
夏は短くて冬はやたらと長い我が国は、幸いなことにとっても頭が良い王家がトップの地位に就いているの。南に位置するイブリナ帝国を中心にしてドンドン発展を遂げていく国々から置いてきぼりを食らわないようにするために、周辺諸国から有識者を集め、技術者を集め、有能な人間であれば平民でも関係なくドンドン採用するようなことを行なっていったのよ。
鉄鋼開発については・・これはカステヘルミの本職なので私には全く良く分からないのだけれど、こちらの技術は帝国も驚くほど抜きん出たものを持っていた。だからこそ、蒸気機関車を作る際には我が国も技術提供をすることになったし、部品の一部は我が国で生産をして輸出するという形にまで持って行った。
要するに北に位置しているし、同じように生産性低いし、同じくらいにジリ貧状態に陥っていても良いはずの我が国がイケイケドンドン状態だっていうのが、オムクスという国はと〜っても!気に食わないのよ!
「おい、おいっ!お隣の国はあんなに国が豊かだというのに!我が国は一体どうしちゃっているんだ〜いっ!」
と、国民には思われたくないオムクスの王家はいつだってラハティ王国を悪者に仕立て上げ、我が国の揚げ足取りを企み、国境での衝突もしょっちゅう起こして、国民の悪感情が決して王家には向かわないように差配している。
十年前だってそうよ?
ラハティ王国軍に北の部族を皆殺しにさせて、周辺諸国からの評判を一気に叩き落とそうと画策して、北の部族の不満を煽り、武器を提供して武装蜂起をさせ、王国軍を煽るために殺した兵士の遺体を侮辱するような行為にまで出たのですもの。
この時は重大任務を丸投げされた最年少将校が踏み止まったので大事にはならなかったのだけれど、兎にも角にも、オムクスって何をやるか分からないようなところがあるのよね〜。
「あの・・御令嬢をお連れ致しましたが?」
内心激怒状態の三人が無言のまま考え込んでいる間に、おじさんの部下と一緒に部屋に入って来たマリアーナが私の方へとやって来たわ。
「マリアーナ、ジェニーさんは?」
「ヨエルくんが付いてくれているわ」
マリアーナはそう言って自分の目元をハンカチで拭ったのだけれど、たった一人の家族を殺されてしまったのだもの。ジェニーさんの気持ちを考えると私も一気に落ち込んでしまったわ。
「ところでリューディア、名探偵としてお役に立つことは出来たのかしら?」
「名探偵としてお役に立ったかどうかは分からないけれど」
とりあえず、今回も前回と同様にご遺体の損壊にはオムクス人が関わっているということを示唆出来たのだから、役に立ったのではないのかしら?
「おじさん、今日のところはマリアーナも疲れているし、詳しい事情聴取が必要だとしたら後日にした方が良いと思うのだけれど?」
「そうだな・・古代文字についてはこれからマリアーナさんの力も借りることになると思うし、後日、こちらから連絡をさせて頂く形でも良いだろうか?」
「ええ、それで私の方は構いませんが・・」
この時のマリアーナは一瞬だけギュッと目を瞑った後に、ギラリと光るような瞳で直立したままのオリヴェル・アスカム・ラウタヴァーラの方を睨みつけたのよ。
うん?と思ったわ。
そう、そう、この時の私はうん?と思ったのよ。
「オリヴェル・ラウタヴァーラ様ですわよね?私、リンドホルム伯爵家の次女、マリアーナ・リンドホルムと申します」
礼儀正しく、淑女らしく辞儀をしたマリアーナは、
「私とリューディアは幼い時からカステヘルミとは大の仲良しですの」
と言ってアルカイックスマイルを浮かべたのよ。
「カステヘルミは元気かしら?結婚式には私もリューディアも参加させて頂いたのですけれど、公爵家の花嫁となって以降、カステヘルミは姿を消してしまったでしょう?あれ以降、彼女とは一回も連絡が取れていないのですもの!」
姿を消してしまったという言い方が陰湿だわ〜。
しかも結婚式以降、一回も顔を合わせていないみたいな言い方!一回はお茶会で顔を合わせているというのに、この男がそんなことも知らないと踏んでカマをかけているわ!
「まさか、公爵家で監禁?」
おお〜!
「されているのではないか、という話も小耳に挟んだもので」
そんなもの小耳に挟んでいるわけもないのに!
「と〜っても心配しておりますの」
すごい!マリアーナったら凄すぎるわ!
「まさか監禁だなんて!」
オリヴェル氏ったら鼻で笑ったわ!
「我が公爵家を貶める発言なのは間違いないですね、一体誰がそんな噂をしていたんですか?」
オリヴェル氏の目が怖い、針のように鋭くなった紺碧の瞳による氷の矢のような視線がマリアーナに向かって飛んでいるわ!
「さあ?」
それを迎え撃つマリアーナの鉄壁スマイルが怖い!
「あんな結婚式を見せられた者の中には、公爵家の在り方について邪推したくなる者も出てくるのではないでしょうか?」
そりゃ、邪推したくなる者も出ています!
花嫁なんか丸ごと無視したようなあのやり方!
俺には他に好きな女がいるんだよ!こんな結婚なんて不本意なんだと全身でアピールしているようなやり方だったもの!
そりゃこの結婚は王命で決められたものだったけれど、気に食わないのは花嫁の方もそうなんだってちっとも気が付かないところが痛いわよね!しかもしかも!公爵家として権力だけはあるから新妻のカステヘルミを飼い殺しにして、ピンク頭を自分の側に置くなんてことをしちゃいそう!って、みんながみんな、思っています!
「そもそも新郎の方には元々、結婚をしたいと心から願っていた相手が居たと言うのでしょう?どうしてその方とさっさと結婚しなかったのかしら?王命があったから?ふっ、そんなもの言い訳にもならないでしょうに」
怖い!怖い!怖い!
両者のやり取りが怖い!
オリヴェル氏もアルカイックスマイルを浮かべているわ!
「確かに私たちは王命によって結婚をしました。だからこそ、花嫁は大事にしておりますよ?」
「結婚してから一度も会いに行ってもいないと噂されているというのに、大事にしております?はっ、良く言えるわね!呆れる〜!」
私もマリアーナのその鬼メンタルに呆れているわよ!だからこそ、そろそろやめて頂戴!怖いから!お願いだから!
無言のままアルカイックスマイルのオリヴェル氏へのマリアーナによる最後の一撃に、
「それで、カステヘルミは元気なのかしら?夫だったらそれくらい知っているわよね?」
オリヴェル氏は不動のスマイルのまま、
「さあ?」
と言ったわ!
その後、おじさんによって私たちは部屋の外に叩き出されることになったのだけれど、扉の外に出た私とマリアーナは互いの両手をギュッと握りながら大声を上げちゃったわよ。
「ねえ!今の聞いた?さあ?ですって!さあ?ですって!」
「聞いたわよ!聞いたわよ!聞いたわよ!」
この瞬間から、本当に驚くべきことなのだけれど、昨日、背中からぶすりと刺されて殺されたメゾンのマダムのこととか、無惨な状態で発見されたジェニーのお姉さんのご遺体のこととか、遠くの世界に飛んでいってしまって、
「「あの男・・絶対に許せないわ〜・・・」」
ということで、私たちの心の中にある油にあの男が放ったマッチの火が着火して、ボウボウと燃え上がることになったのよ。
「そういえば私たちにはカステヘルミに託されていた任務があったわね」
「そうよ、私たちはカステヘルミに託されていた任務があったわよ」
カステヘルミは、自分と同じような状況の淑女たちを助けたいみたいなことを言っていたけれど、要するに、自分と同じような婚約者とか、夫とか、恋人だとかをピンクに取られてしまった方々を調べ上げて、自分の仲間にしようと考えているってことよ。
苦境に追い込まれた仲間を助けたい!というのは建前で、被害を受けた女性たちからピンク頭の情報をゲットしようということなのでしょう。この国の民は噂が大好きだからピンク頭の被害者を探しているうちに、ピンク頭がどれだけボディタッチ過剰のはしたない女なのかということも広まるし、私たちが被害者を探しているということを知った人たちは、率先して情報を集めてくれるでしょう。
そうこうするうちに、カステヘルミのあの悲惨な結婚式の噂話も再燃するわ!あの時、結婚式で花嫁よりも派手なドレスを着ていた女と、どうしようもないクソみたいな花婿の話題が再燃するのは間違いない事実よ。
「「ふふふふ・・ふふふふふ・・・」」
私たちは思わず同じような笑い方をしながら廊下を突き進んだわ!
あの男の反応を見て、どれだけカステヘルミを小馬鹿にしているのかが分かったもの。
見ていろよ!馬鹿男め!
絶対に!絶対にギャフンと言わせてやりますからね!
何とかお正月休みに続けて掲載できました!ここから女の噂・噂・噂からの、マリアーナの元へ悪の手が!?という展開となります。ここから三日程休憩を入れて、再び掲載をしていきますので、最後まで懲りずにお付き合い頂けたら幸いです!!
モチベーションの維持にも繋がります。
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