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「おお!おお!そうか!そうか!リューディアは一連の殺人はミカエルくんがやったものだと断言するんだな?ということは、エリーナという令嬢の遺体がターレス川に上がったという話も聞いているということか」
おじさんはそう言ってニンマリと笑ったのよ。
「丁度タイミグが良かったな、そのエリーナという名の令嬢のご遺体の検分をするために車で移動中だったんだ。名探偵諸君、後ろの席が空いているから乗りたまえ。ご遺体のところまでおじさんが連れて行ってやろうじゃないか」
正直に言って行きたくないわ。
私はヘボな医者が遺体の検分をすることになったら分かるものも色々と分からなくなると思って、駐屯所まで顔を出そうと思っていたのだけれど、おじさんが来ているのなら何の問題もないじゃない。
「私たちも駐屯所まで連れて行ってくださるんですか?有り難うございます〜!」
だけど私の助手がすでに車の扉を開けているわ。
「私、車に乗るのは初めてなんです!嬉しいです〜!」
「我が国には輸入車しかないから、一部の人間しか乗っていないもんなあ」
「そうなんです!そうなんです!うちの父も欲しいとは言っているんですけど、それがなかなか難しいみたいで〜」
マリアーナは助手席のおじさんと仲良く話しているけれど、彼女は王宮に勤めているだけあって、男性相手でもちっとも臆さないところがあるのよね。
「そういえば君の職場、結構、大変なことになっているんじゃなかったっけ?」
助手席に座るおじさんの質問に、マリアーナは笑顔で答えているわ!
「ええ〜!すでに軍部にまで広まっちゃいましたか〜?まさかうちのような金目のものは何もない職場が狙われるなんて思いもしないことで、上司なんかクビ覚悟で犯人探しをしているみたいなんですよ〜」
マリアーナは今、王宮の敷地内にある教会の地下から発掘された古文書みたいなものを解読する仕事をしているのだけれど、そこに泥棒が入ったのよね。
「犯人探しって難しいよね〜」
「うちの職員、借金で苦しんでいる人もいなければ、ギャンブルすることもない。古文書にしか目がないような人間ばかりなので、内部の人間による犯行だったら誰なんだ状態になっているみたいなんですよ〜」
実にどうでも良いです。自分に関係ないですし。
「ところで何で二人はあんなところを歩いていたの?お供の者も付けずに歩いているからおじさんびっくりしちゃったよ〜」
「ああ!それはリューディアがミカエル様の歴代の愛人に会いに行くと急に言い出して、それで中央広場で花屋をやっている女の子に会いに行ったんですけど、そのお姉さんの遺体が上がったという話を憲兵の男の子から聞くことになりまして」
「やっぱりうちのリューディアは何だかんだ言ってもミカエルくんのことが好きみたいなんだよね?やっぱり彼はモテる男だから、色々と不安ということなんだろうね!」
「おじさん、私をここで降ろしてください。私、ここで降りて家に帰ります」
「もう〜うちのリューディアは素直じゃないんだから〜」
「おじさん、私、この車から飛び降りたって良いんですよ?」
なにしろ街中を走らせているので車はノロノロ運転状態なのよ。田舎の駐屯地までパーッと走るのならその性能を発揮させられるのでしょうけれど、街中では馬車も通るし、人も歩くしで、車から飛び降りられるくらいにはノロノロ運転なのよ。
「もう〜!リューディアったら!冗談にも程があるわよ〜」
「いや、冗談じゃないし」
「ほらほら、名探偵諸君、目的地に到着したみたいだよー」
憲兵隊の中央駐屯地は中央広場から歩いて5分程度の場所にある。ターレス川の湾曲した部分に接するような場所にある駐屯地なのだけれど、ここは昔から川が氾濫することが多い場所でもあるので、家や店なんかを建てることは禁止されているの。
だからこそ、憲兵隊の駐屯地になっているのだけれど、広い敷地の中には練兵場や診療所、事務所や寄宿舎なんかも並んでいる。
「エリアソン中尉!ようこそおいでくださいました!」
案内の憲兵が待っていましたとばかりに建物から飛び出して来たのだけれど、憲兵隊はラハティ王国軍の下部組織という扱いになるから、おじさん程度の人でも雲の上の存在みたいな扱いになっちゃうのよね。
「出迎えご苦労、この二人は俺の助手で姪っ子のリューディアと王宮所属の学芸員のマリアーナ嬢。彼女は古代文字を解読するスペシャリストでもあるから来てもらうことにしたんだ」
「ああ!なるほど!」
何がなるほどなのか分からないまま、私たちは案内されるまま駐屯地にある診療棟の一室に移動をすることになったのだけれど、おじさんはマリアーナの方を振り返りながら頭を下げて言い出したのよ。
「お嬢さんには間違いなく気分が悪くなるものを見せることになるんだが、俺は今、どうしてもお嬢さんの協力が必要なんだ!」
おじさんたら一体何をやっているのかしら?
男爵の地位を授かったというのに、鳴かず飛ばずのまま独身人生を送り続けているおじさんももう30歳よ。周りの友達は二人も三人も子供がいるという中、自分は未婚、子なしという状態に不安を感じているにしてもアリアーナは二十歳、十歳も年下の女の子を口説こうなんて!
「おいおい、リューディア、おじさんはここで口説いているというわけじゃないんだよ。マリアーナ嬢が今、ここに居るのは女神アヘトラーゼの計らいに違いない!是非とも!協力してもらいたいんだ!」
「おじさんたら、何の協力をしてもらいたいのか言わないあたり腹が立つわよね〜。却下よ、却下。マリアーナ、こんなおじさんなんか無視してアイスでも食べに行きましょう!」
「うちのリューディアは随分と聞き分けが悪いみたいだが」
「なんでいちいち、おじさんの都合にこっちが合わせなくちゃならないのよ!そもそもおじさんが遺体の検分をするのなら何の問題もないでしょう?さあ!マリアーナ!私と一緒にアイスでも食べに行きましょう!」
「待って!待ってよ!リューディア」
マリアーナはさっきから両手をぎゅっと握りしめて、顔を青くしたり、白くしたりととっても具合が悪そうに見えたのだけれど、
「洗面器を用意してください」
と、言い出したのよ。
「私が必要ってことは古文書も関係があるんじゃないですか?文字に関してだったら私、これでも一家言持っていると自負しておりますので!捜査に協力できると思うんです!」
お・・おおお・・そこで名探偵の助手がどうのと言い出したらどうしようかと思ったけれど、きちんと自分の職務を思い出したってわけなのね。
「それじゃあ、後は若いお二人に任せる形にして・・私はアイスを食べにでも行こうかしら」
「そんな訳にはいかないんだよ、リューディアちゃん」
おじさんは私の腕をがっちり掴みながら言い出したのよ。
「これはね、君にも関係があることかもしれないんだよ?」
「それは・・私の婚約者でもあるミカエルが連続殺人犯となってうら若き女性たちを殺して歩いているから・・そうだったとしても、私は関係ないと思うんですけど?」
「関係ある!関係ある!とってもとっても関係ある!」
私はおじさんに引きずられるようにして遺体が安置された一室へと連れて行かれることになったのだけれど、
「うっ・・ゔゔゔゔっ」
マリアーナはおじさんに渡された洗面器の中に嘔吐したわ。
こちらの作品、アース・スター大賞 金賞 御礼企画として番外編の連載を開始しております。殺人事件も頻発するサスペンスとなりますので、最後までお付き合い頂ければ幸いです!
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