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私はクリスティナからの初手の一撃で大ダメージを喰らってしまったわ。ナザレノ・ティコリのマダムと熱愛って、マダムは確か・・離婚しているから不倫にはならないわね!セーフよ!セーフ!・・じゃないわよ!
「ああ〜、なんで私がこんなことで悩まなくちゃならないのよ!」
「それは婚約者がイケメンだから」
「やっぱりモテるタイプの男性が相手だと苦労するという」
「定番の展開という奴じゃないかしら?」
胃が、胃が痛い。
ただでさえ毎日のように脅迫めいた手紙が不特定多数から送られて来るという状況だというのに、ダメージが積み重なっていくようだわ。
私が机の上に積み上げた手紙を持って来た鞄に戻していくと、
「え?どうしたの?このまま積み上げておけば良いじゃない?」
なんでそんなことをやっているの?みたいな感じでマリアーナが問いかけて来た。
「なんで片付けるのかですって?ミカエルと婚約解消をしたのなら公にしろとか、いつまで縋りついているつもりだとか、お前にはミカエルは勿体無いとか、ミカエルをさっさと解放しないと不幸が訪れるとか、そんな内容の手紙が目の前に山盛り状態ということに私の精神が耐えられそうにないからよ」
落ち込むカステヘルミを励ます意味で持って来た脅迫の手紙たちだけれど、それを用意した私の方が谷底に落っこちて行くくらいの落ち込みようよ。
「奥様、カステヘルミ様が到着致しました」
「まあ!主役が遂に到着したのね!」
気を取り直すようにクリスティナが手をパチンと叩いて言い出した。
「リューディア、落ち込むんじゃないわよ!これでマダムとの浮気の証拠を押さえれば、流石にあなたのご両親だって本気になって考えるようになるんじゃないかしら?」
「そ・・そうよ!そうよ!そもそもリューディアの婚約者は次男だし、バクスター子爵家に婿入り予定じゃなかったっけ?」
「流石に結婚前からここまで品がないと家に傷をつけることにもなるでしょう?」
「そうよ!そうよ!遂にリューディアお望みの婚約破棄?婚約解消?婚約白紙?のいずれかをゲット出来るってことじゃない?」
「そ・・そうよね!そういうことになるわよね!」
この婚約は絶対と言われているけれど、流石に家に傷を付けるような相手では親だって困ると思うもの!落ち込んだままの状態でカステヘルミを迎えることになりそうだったけど、そのカステヘルミこそが地獄の底に突き落とされたような状態でやって来るのかもしれないのだもの。
笑顔!笑顔よ!リューディア!
「キタキタキタキタ!カステヘルミが来たわ!」
「みんな!早く集まって!」
「きっと今日は興奮して眠れないわよ!」
私たちはわざとらしいほどはしゃいだふりをしてカステヘルミを出迎えた。とりあえず、今はミカエルのことを忘れてしまいましょう。
目の前にはとんでもない結婚式を挙げてからまだ数日しか経っていないカステヘルミが居るのだもの!
「「「カステヘルミ!元気だった〜?」」」
私たちは満面の笑顔でカステヘルミを出迎えたのだけれど、
「あら、貴女たちは私が元気じゃないとでも思っていたのかしら?」
カステヘルミは皮肉な笑みを浮かべながら私たちを見回したのよ。
結果から言うと、やっぱりカステヘルミは最高だったわ。
「これは昔からの親友である三人にだけ言うのだけれど・・他の誰にも言わないでくれるかしら?」
でた!女なら誰しも何度も吐き出すことになる『他の誰にも言わないでくれるかしら?』発言よ!
「もちろん、私たちは親友だもの」
「絶対に!絶対に!」
「「「言わないわ!」」」
絶対に他では言わないと言いながらも、言ってしまうのが女の性よ。しかも、それを十分に知った上でこれからカステヘルミは爆弾を落とそうとしているのよ!
「あのね、この世の中には一妻多夫を求める人が存在するの」
はあい?
「一妻多夫とは、一人の妻が大勢の夫を娶ることを言うのよ。周辺諸国でも王族が複数の妻を娶る場合が多いけれど、それとは逆で、一人の女性が大勢の男性を自分の側に侍らせる。男の人が大勢の女の人を侍らせるのをハーレムと呼ぶのなら、一妻多夫は逆ハーレムと呼ぶのかもしれないわね」
なに?なに?逆ハーレム?はあい?
「ラウタヴァーラ公爵家にはパウラ夫人の従兄と妾の間に出来た令嬢を、ユリアナ嬢と言うのだけれど、八歳の時から引き取って育てているの。二人の令息の愛すべき妹という立ち位置で、公爵家でお暮らしになっているのだけれど、この令嬢がどうやら『一妻多夫』の信奉者みたいなの」
は?『一妻多夫』の信奉者?は?は?は?
カステヘルミはニンマリと笑ったわ。
誰が何と言おうとも、彼女のこの笑顔はニンマリよ、完全なるニンマリ笑いよ。
「私も最初は二人のご兄弟が血は繋がっていないけれど、自分の妹として扱っているものと考えていたの。だけど、三人でガゼボでお茶をする姿を見て、あれ、おかしいなと思うようになったの」
驚きだわ・・驚きだわ・・驚きだわ〜!三人でお茶をベンチで並んで飲んでいるって言うのよ〜!ピンク頭を間に挟んで、兄弟で仲良く並んで座っていると言うのよ〜!異常よ!異常!お前ら一体何歳なんだって問いかけたい!確か兄のニクラス様が二十六歳で、弟のオリヴェル様が一歳違いの二十五歳よね?
キモイわ!本当の本当にキモイわ!そんなアホみたいな兄弟が世の中には存在したのね!しかもそれが公爵家の息子たちだって言うのよ!最高に気持ち悪い話だわ!
その後もカステヘルミが私たちに向かって放り投げる話題がそれはもう仰天の連続だったのよ。言うなればあれよ、大好物の肉付きの骨をカステヘルミが庭で次々と放り投げているって感じ?喜んで骨に飛びついているワンちゃんはもちろん私たちよ!クリスティナなんてちっちゃな尻尾をブンブンちぎれるかと思うほど振っているもの。
「これは侍女から聞いた話なのだけれど、ユリアナ様はとにかくお顔が素晴らしく整っている男性がお好みのようで、相手に例え婚約者がいようとも気楽に声をかけていくそうなの。とにかくボディタッチが多い方なので、声をかけられた男性はあっという間に夢中になってしまうそうなの」
もう!もう!もう!最高の女じゃない!ピンク頭!あなたったら最高の女だわ!
「貴婦人はみだりやたらに男性に触れたりしないと思うのだけれど」
「そうよね?触れたりしないわ!」
「ユリアナ様は何でも許されるのよ」
「可愛らしい方だったものね?」
「そう、そういうことなのよ」
いやいや、可愛いからで許されるわけがないでしょう!だけどね、女の作法として許されるって口でだけは言っておくの。口で言っているだけがほとんどだし、大概こういう女って驚くほど同性に嫌われていたりするのよね!
するとカステヘルミったら、榛色の瞳を細めて、内緒話をするように前に身を乗り出しながら言い出したのよ。
「これは本当の本当に、親友である三人にだけ言うのよ。親にさえ言っていないことだから、胸の中に収めておいて欲しいのだけれど」
もう!もう!もう!カステヘルミったら、どれだけ私たちを興奮させたら気が済むの?恐らく私たちの幻の尻尾はブンブン左右に振りすぎて竜巻を起こしているはずよ。ああ!全くもう!カステヘルミったら最高だわ!あまりにも期待が膨らみ過ぎて、アホでバカなミカエルに対する悩みなんて世界の彼方にまで飛んでいってしまったわ!
こちらの作品、アース・スター大賞 金賞 御礼企画として番外編の連載を開始しております。殺人事件も頻発するサスペンスとなりますので、最後までお付き合い頂ければ幸いです!
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