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隅の川(女子)工業高校! ものつくり残念女子話  作者: 日上東
第二章 二学期
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第54話 禁断のプレゼント交換

 ついに年末、俺の波乱の高校生活、4月から余りに多くの事が重なり、長かったようで短かった。

 年も明けようかというのに、ババアは相変わらず帰ってくる気は無いらしく、たまにメールと、月々のギリギリの生活費が送られてくるだけである。自分探しもいいが、あんたの望む自分なんて、この地球上どこにも無いよ、と毒づいてみる。

 しかし、たった一人での年越しは初めてだけに、若干の寂しさも禁じえない・・・。


 そんな時、巧から嬉しい?お誘いの言葉があった。


「なあ、年末お袋さん、帰ってくんの?帰ってこないようなら、ウチで年越ししない?勿論2人っきりってわけじゃないんだ。実は美留、今ウチで一緒に暮らしてるんだ」

「いいわよ、そういう事なら。ババア、帰ってこないし」

「じゃあ、おせちとか忍作れる?作れるなら頼むよー。アタシたち、料理はちょっと駄目なんだよねー」


 ああ、そういう事ね。あれだけ器用な美留も料理ダメなんだ、ちょっと意外な気もする。


「ああ、それと、クリスマスパーティーもやるから、その時も料理頼むな!で、場所はアタシんち」

「えっ!それは強制なの?」

「そう。もうユウコとも決めちゃったんだ。ユウコ、ラグビーで全国大会だろ?その壮行会も兼ねてるんだ。最もアイツに敵なんていねーけどな」

「他のメンバーは?何人来るのよ?」

「えーと、現時点では、アタシ、美留、オマエ、ユウコ、三日月、直、かな。未理はパパとデート、セツ姉は家の手伝いがあるって言ってたっけ。中には美留が言うなって言うから、伝えてない」

「ねえ、中、可愛そうじゃない?」

「じゃあ、オマエ、美留に言えよ。あ、あと、デザートはいい。ユウコが作ってくるらしい。1人あたりの予算は千円くらいじゃねえ?クリスマスらしい豪華な料理、頼むぜ!」


 一人千円で豪華って、ちょっと難しいだろう。それでも人から頼りにされるのは嬉しい。仕事の面ではみんなに頼ってばかりだし、勉強面でも未だ教えてもらうばかりの俺・・・。

 よし、せっかくの機会、腕によりをかけなきゃ!


「ちょっとー!!巧ちゃん!!ヒドイんじゃない?小白川くん、来るなんて聞いてないわよっ!だったら私行くわよ!何があったって、たとえ家が破産したって、親が死の淵にいたって、行くに決まってるじゃないっ!」

「ごめん、ごめん。いやあ、セツ姉家の手伝いあるって言ってたから。気が回らなかった」

「何着て行こうかしら?いえ、むしろ着ていかない?・・・それもアリ?」

「無いって、セツ姉!お願いだから、服着て来てよー」


 いやあ、ちょっと怖い事になりそうだけど・・・。でも、これで俺と小白川が良いムードになるのは避けられるな。


「ひ、酷いぞ、キャサリン!な、何で僕だけ・・・、何で僕だけ声を掛けない!いいさ、そりゃキャサリンが誰と何をしようと、僕の知った事じゃない!でも、美留が、美留が参加するなら、僕に声を掛けてくれたっていいじゃないかっ!」


 いや、その美留が声掛けるなって言ったんだって。


「・・・美留が言った・・・中・・・呼ぶなって」

「えっーーー!!な、何でだい?美留?僕、何かしたかい?君を傷つける事、何かしたかい?何か気に障った?ごめん、謝るから、僕も参加させてくれよ。クリスマス会、一緒に参加させてくれよっーー!!」


 た、魂の叫びだ・・・。


「・・・イヤなの・・・中・・・鬱陶しい」

「あー、ダメだよ、美留、そんなにハッキリ言ったら。中泣いちゃうぜ?」

「うるさいっ!キャサリンは黙ってろ!」

「・・・美留・・・今・・・巧と・・・暮らしてる」

「はあーーー???」

「・・・巧・・・優しい・・・」

「キャサリンっ!き、君は一体、み、美留にな、何をっ!!」

「何もしてねーよ、一緒に暮らしてるだけだよ、同棲?っていうのかな、こういうのも?ケケッ」


 哀れだ、中に同情するよ・・・。ガックリと意気消沈する中に、勿論、後から参加してもいいよ、とフォローしていたが、同棲の言葉にダメージから立ち直れない中であった・・・。

 でも、言わないと思うよ、女同士で住んでても同棲って。


 しかし、なぜ中にもばれてしまったかと言うと、原因は直だった。


「すいません。私、すっかり舞い上がってしまって。皆さんに声掛けたと思っていたものですから。何しろ友人とパーティーなどとは、生まれて初めてですから。そもそも私の家ではお祝い事すらしてもらった事がないもので・・・。あ、余計な事を言ってしまったようですね。それで、一つ質問ですが、プレゼントはどうするのですか?通常クリスマスでは、そのような物を送りあう風習があると聞きますが、何しろ私はプレゼントという物を貰った事が無いものですから、どうしたら良いのか全く検討がつきません」


 こいつの生活って、どうなってるんだ?親。いるんだよな?しかし、俺も小学校以来だな、クリスマス会。あの頃は回りに女の子いっぱいで楽しいクリスマス会だったのに、中学では小白川と2人きり・・・。あ、でもケーキは美味かったっけな。


「うん、アタシもそれは考えたんだけど、そういうプレゼント交換みたいなノリの会に参加した事あるやついる?いないだろ?なんか、ちょっと想像つかないんだよなー、そういうの。やりたい?」

「私はやりたいです。おそらくこの機会を逃したら、私は一生プレゼント交換をした事がない女として生きていく事になろうかと思います」

(重い、重いよ、直)

「ぼ、僕もやりたい!で、でも、僕のプレゼントが美留にあげられないのなら、イヤだけど・・・」

(おい、趣旨が違うよ!)

「・・・やりたい・・・でも・・・中の・・・いらない」

(キツい、辛辣だよ、美留・・・)

「私もやりたいわ、そうよ!三日月ちゃん!私の小指を落として頂戴!それを私の誠として、小白川くんにあげるのよ!」

(わー、ダメだって!違う、それは絶対に違う!)

「わたしもぉ、やるたいなぁ!」

(あ、あれ?未理、不参加なんじゃないの?)


「うーん、何か、みんなやりたいみたいだな。仕方ないな、やるか。ていうか、未理、オマエ不参加だろう?」

「パパとの夕食、終わってからぁ、参加するぅ!わたしだけノケ者なんて、やだよぉ!」


 結局全員参加か。


 思えば、こんなに多くのクラスメイトたちとクリスマス会ができるなんて、俺はもしかして幸せなのでは?確かに、みな残念な部分も多々ある女子ではあるが、世の中に完璧な女子なんてそうはいまい。そういう意味では、俺は勝者と呼ばれてもおかしくないのでは?


「忍ちゃん、私あまり固いお肉、嫌よ。フォアグラは出るのかしら?だったら私ソテーでいただきたいわ」

「拙も味付けはあまり濃くなく頼む。肉は塩だけで焼かなくても良いくらいだが」

「千円も出すのなら、肉はビーフにしてくれよ。僕はチキンよりもビーフの方が好きなんだ」

「・・・美留・・・チキン・・・好き」

「いや、ぼ、僕も、実はチキン好きだったんだー。美留、一緒だね」

「じゃあ、忍、頼んだぞ。あと、食い終わったら食器とかちゃんと洗って帰れよ。アタシ、嫌いなんだ、洗いもの」


 あれ?俺、本当に勝者なのか?


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