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隅の川(女子)工業高校! ものつくり残念女子話  作者: 日上東
第一章 一学期
25/61

第25話 会議は踊る

 ギミックの設計が、円谷の考えている方向でとりあえず進めよう、という事になり、俺たちは、形状をどうするか?という次なる課題に直面していた。

 いかんせん、みんな変人揃いのメンバーゆえリアルな経験の不足は否めず、唯一戦力となりそうなセツ姉は、少し変態的ダークサイドに足を踏入れ過ぎていて、まともな意見が望めない気がする。

 

「だから、俺はモニターに実際使ってもらい、その意見を取り上げるのが得策だと思うんだ」

「で、そのモニターはどうするつもりだよ?」

「えっと・・・」

「オマエ、まさかアタシらにやらせる気かっ?」

「下井君、それは最も安易な方法だと考えられますが、私達の羞恥心は一切考慮しない、非常に配慮に欠けた意見かと思います。しかし、方法が他に無いのであれば、多少の犠牲はやむを得ないかとも思いますが、皆さん、いかがでしょうか?」

「私、別にやっても良くってよ」

「セツ姉たちは特殊すぎるのっ!ちょっと黙っててよ!」

「そ、そうだ。僕はそんな事、断じてできない!美留もそうだろ?」

「ん?・・ん」

「い、いや、な、何も俺はお前らにモニターやれ、なんて言ってない、そ、そうだ、ぼ、募集すれば良いじゃないか?」

「募集?どうやって?じゃあ、オマエ街角に立って道行く女性に、コレ使ってみて意見聞かせて下さーい、ってお願いしてこいよ!」


 それは無理だ。おそらく警察のご厄介になるだろう。でも、どうしたら良いというのか、内容が内容だけに、あまり表立った行動を取れないというのが悲しい。本当に高校でこんなモノ、作っていいの?と言う、本質的な疑問さえ湧いてくる。


「やっぱり、お前らで試してみないか?なんなら、意見は匿名にしてやるから、それならイイだろ?」


 巧は俺の頭を激しくドツくと、セツ姉に救いを求めた。


 結局は、セツ姉から助け船が出て、万事上手くいきそうな手筈が整った。

 セツ姉の家が置家とは聞いていたが、色々と多方面に顔が利くらしく、吉原のソープの社長さんもお客さんとやらで、セツ姉自身、ソープのお姉さんとも仲が良いらしい。そのお姉さん方に頼んでくれる、というのだ。


「何でセツ姉は、ソープのお姉さん方と仲良いの?」

「その社長さんがお店案内してくれた事があって、それ以来、たまに遊びにいったりしてるのよ。その時、ソープの技とかも教えてもらったりして、良い勉強になったのよ」

「えっ、わ、技って!?教えて、もらった!?」

「嫌ね、見せてもらっただけよ、いやらしい想像したでしょう?」

「いや、そ、それは・・・」

「でもね、その社長さん、うるさいのよ、私に高校出たら是非お店に入ってくれって。契約金出すからって、何度も誘われるけど、私は女を売る気は無いの」

「そう、ですか・・・」

「お姉さん方にモニター頼む件は任せておいて。選りすぐりを何人かあたっておくから」

「よ、よろしくお願いします」


 そして、ほどなくソープのお姉さん方からサンプルを試しての意見、要望があがってきた。サンプルの中には、まるでトゲがあるようなヤバイ形のモノもあったが、結果、一番評価を得たのは、最もリアルさを追及したタイプだった。


「種の保存の観点からみても、とても重要かと思われる雄の性器が、有史以来現在の形状であるという事が、すなわち最も雌にとっても最適な形状である、という事ですね。最適、すなわち快楽を得やすい、受け入れ易い、と言う事。元来繁殖力の低い人間にとって、交尾に快楽の要素が付加されたのは、種の保存の本能なのでしょう」

「・・・そ、そうなのか??」

「もし、今より一層、雄の性欲が低下し交尾に至る機会が減少するような事になった場合、雄の性器の形状の変化、もしくは、交尾を促すため雌にも何かしらの変化が現れるなどの現象が見られるでしょう」

「な、直!雄とか雌とか、獣みたいに言うなよ!」

「でも、今人類が人口減少の危機感を抱いてるとしたなら、いち早く進化に対応した雌が、セツ姉かもしれないね」


 巧の言葉に、みな納得の様子だった。


「しかし、そのままというのも、芸が無いな」

「わたし、いい考えがあるよぉ!女子に人気のキャラクターの模様、入れない?例えば、ミッキーとかぁ?」

「アホかっ!!そんな事したら訴えられるぞ!」

「えぇーダメかぁ・・・じゃあ、隠れミッキーとかぁ」

「一生、ディズニーランドに行けなくなっても良いのか?」

「えぇ・・いやだぁ」


「しかし、男性器というのは、何だってこう不恰好なんだ?体に付いている状態がすでにブラブラと不安定でいけない。その点、女子器はしっかりと体に対象的に配置され美しいよな」

「対照的!?そうかあ?」

「ふん、少なくとも僕と美留はそうだ!キャサリンは性格が曲がっているから、アソコも曲がって付いてるんだろう?」

「テ、テメエ!キャサリンて呼ぶなって言ってるだろうっ!」


 まあまあと、セツ姉が中と巧をなだめながら、何気なく中に聞いた。


「中ちゃん、美留ちゃんの、アソコ、見た事あるの?」

「えっ!あ、い、いや、な、無いよ、見た事なんて、た、ただ、美留ならそうだろうなあ、なんて、僕が思っただけで・・」

「むっ!」


 怪しい、こいつ何か隠しているな。美留も警戒している様子だ。


「じゃあ、こうしない?リアルさを損なわない程度に、少しフォルムを優しくデフォルメしてみない?可愛らしさをイメージして」

「それって、どんな感じ?」

「粘土で作ってみましょうか?いわゆるクレイモデルね」


 それから、7人の女子校生が、粘土でアレを一生懸命作る事となったのだが、正直、親には見せられない光景だった。


「キャサリンのなんだ、それ?犬の糞?」

「中!オマエのこそ、真っ直ぐすぎるだろ!巨大マッチ棒か!?」

「未理!トゲなんて生やしてどうする気だっ!」

「トゲじゃないよぉ、お耳!」

「耳いらねえよ!」

「美留、機械使わないと、割りと不器用なんだ」

「む!」

「あら、三日月さんの、素敵じゃない?」

「兄らには美的センスというモノはは無さそうだな。これとて拙にとっては決して満足のいかない失敗作。そんなモノに目がいくとは」

「でも、結局、使えそうなのって、セツ姉のと三日月のくらいだな」

「忍!!なんだよ、オメー作りもしないくせに偉そうだに!」


 いや、俺は作れないよ、粘土でチン◯なんて。それを嬉々として作るお前ら、やっばり変だよ・・・。


 というような、下らない、いや、大事?な話し合いと作業にたっぷり1日を要し、取り敢えず作成する形状のクレイモデルも完成した。

 デンと机に飾られたソレは、その背徳感ゆえ、完成した喜びより、むしろ脱力感を感じたのは俺だけだろうか?


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