85 おもてなし
お読みいただきありがとうございます
=( ^^) _口“どうぞお茶”
♪こちらのお話は、読了時間:約6分です♪
(Wordcount2800)
コンコン、コンコン。
(あ、来たみたいっ♪)
約束の午後三時過ぎ。玄関の扉を叩く音がした。
「はぁ~い! どうぞ~」
ガチャ~……バターンッ!!!
「ちゅっきぃー!!」「きたきたよよよーん!」
「「あーそーぼー♪♪」」
その揃った言葉、ハーモニーを奏でるような二人の声。
まるでお日様のように周りがぱぁーっと明るくなり、柔らかく楽しい空気が部屋に入ってきた。そんな双子ちゃんの無邪気さは、少し寂しくなっていた私の心を、いつもポカポカにしてくれる。
「いらっしゃあ~い、うっふふ。今日はまた、スゴイご機嫌ねぇ」
メルルとティルは、私以上に精霊さんたちと仲良しで。手のひらに乗るくらいに小さくて、まぁるくて、可愛くてっ! そんな光が、ふわ~りふわりと、二人の間をいくつも漂っていた。
そして――。
「こんにちは」
聞き慣れた優しい声。
賑やかな雰囲気に包まれていた部屋は、一気に穏やかな海のように変化する。
「こんにちは、星様」
変わらない笑顔。その表情を見るたびに、私の心はだんだんと落ち着いていく。
――「渡したらすぐに帰るよ」
昨夜、そう言っていた星様。けれども、せっかくの休日。用事があるとはいえ、わざわざ来てくれたのだし、何か素敵なおもてなしがしたい! そう考えていた私は、思い切って話をしてみた。
「あの、良かったら……これからご一緒にティータイムはいかがですか?」
と、彼をアフタヌーンティーにお誘いした。
「ありがとう月。では、喜んで」
「いえ! ありがとうございます」
(あぁ~良かったぁ!)
「「にゃにゃ?!」」
いつの間にか、ベランダに出て外の様子を見ていたメル・ティル。しかし、お耳を大きくして話を聞いていたらしく。“ティータイム”という言葉に、キャッキャッと踊りながら戻ってきた。
「えーえーなにぃ?」「それおいしーの?」
(相変わらず、可愛いお二人さん……)
「美味しいよぉ♪ 待って~、すぐに準備するからね!」
これは、ある意味メル・ティルの能力なのか? 食べ物や楽しい話をしていると、聞き逃す事なくやってくる。耳の良さと、二人が持つ勘の良さに感心しつつ、月は台所へと向かった。
食器棚の引き出しにある、お気に入りの猫ちゃん型のカトラリーを取り並べる。お皿は普通で、白に花柄。月はテキパキと、四人分のセッティングを始めた。
そう、月の言っていた「あれ」とは。
このお茶会のために、料理を準備する事だったのだ。料理と言っても、さすがにお家で作るメニューなのでちょっぴり少なめ。しかし、その二段ケーキスタンドに並べたサンドイッチとスイーツの可愛い仕上がりに、我ながら! 月自身、大満足をしていた。
「「わあっは~♡♡」」
メルルとティルが、おめめをキラキラさせながら、セッティングした料理を眺めている。そして「じゅーす! ジュース♪」と、盛り上がり始めた。
「は、はぁ~い、待ってぇ」
(もちろん、メルルはオレンジ、ティルはアップル。なぜかジュースだけは好みが違うのよねぇ。他は何もかも同じなのに……)
「「けーーきぃ♪♪」」
(そんなに喜んでくれるなんて! 作った甲斐があるってものです!)
そんな二人のお世話をしていると、クスクスと笑う声が聞こえてきた。その方向へ目を向けると、キラキラと潤んだ瞳の星様と目が合い、ドキッとする。
――深い深い蒼の瞳……今日も変わらず心惹かれてしまう。
「あ、あの。星様も、どうぞお席へ。紅茶はおまかせでよろしいですか?」
「うん、ありがとう、月の好みに任せるよ」
「ハイッ、お任せ下さいな!!」
(本日の紅茶は、何にでも合う! イングリッシュ・ブレックファスト)
「――――♪」
月が、紅茶の準備に取り掛かる。すると、星が小さな声で話し始めた。
「やはり、アスカリエス家にいる時とは、随分違うね。メルティは月といる時が、一番楽しそうだ。そんな二人の反応を見ていると、本当に幸せな気持ちになる……こちらも思わず笑顔になってしまうよ」
そう微笑み話しながら、彼はゆっくりと椅子に腰掛けた。
「星様……」何だか、寂しそう?
「ほあ~??」「せりぃ~??」
「「そんな事はないにょ~」」
月と、メル・ティル。三人から熱い視線を受け始めてすぐに、星は自分の発した言葉が、誤解を招いた事に気付く。
「いや、待って。そういうつもりでは」
「「セリィ!! きゃーゎいー」」
違うよっ! と、頬を少し赤らめながら、寂しい気持ちを否定する星様。
「あはは、星様が揶揄われてる!」
(そう。皆、とっても仲良しだよ……ねぇ?)
――寂しくなんかない。
紅茶の準備を終え、ルンルン気分でメル・ティルのお皿に、フィンガーサンドを取ってあげていると、急に星様が心配そうな表情で私の顔を見て、聞いてきた。
「月? 少し目が赤いようだが、大丈夫かい? やはり昨夜、不安で眠れなかったのでは」
私は、ハッと驚いてしまった。そして動揺を隠しきれないまま、返事をする。
「いえいえ! だ、大丈夫ですよ!」
(どうして?! いつも私の心は彼に読まれてしまうのだろう)。
「そう? それならいい。何かあればすぐに言って。僕は、必ず君の力になる」
「はい……ありがとうございます」
――そう、本当は。
昨日の事が気になり寝付けずに、寝不足だった。しかし、月はなるべく周りの人たちに、心配をかけたくなかったのだ。
(もっと、心を強くしなくちゃ!!)
と、思った矢先。
「さぁ、どうぞ~。メル・ティル~、サンドイッチだよぉ」
「みかじゅっきぃ?」「さみしかったのかぁ?」
お皿に乗せたサンドイッチを、メル・ティルのテーブルに置く瞬間! 私の話す声と、ほぼ同時のタイミングで、二人からも心配そうに声を掛けられてしまった。
「な、なに……」
二人は「もぉ、つきちゃまったら、しょうがない子ねぇ」と言いながら、私の事まで揶揄い始めた。
「んーー!! もぉ~ッ」
「「今日から一緒に寝てあげるぅ♪」」
「んにゃッ!! ちがうー!」
「はっはは、よかったね、月」
「星様まで!!」
今日は一人で、少し寂しかったお部屋の中が、時間が。皆が来てくれただけで、あっという間に明るく楽しいひと時へと変化した。これも三人のおかげだ。
「ありがとう……」
私はボソッと、聞こえないくらいの声で呟いた。
そして、楽しいティータイムも終盤。
「こちらの紅茶、最後にミルクを入れれば、とーっても美味しいミルクティになるのですよぉ」
「そうか。では、頂こう」
とぽぉ……トトト。
美味しいミルクをたっぷりと注ぐ事で。渋みの抑えられるまろやか~な味わい。これがまた格別で!! 気持ちをホッとさせるミルクティに変わるのだ。
「なるほど、うん! これは素晴らしい」
「つきつきぃ」「おいしーかったぁ」
「「「ありがとう~」」」
三人は、一緒にお礼を言ってくれた。
重なる三色の声は、私の心をとても幸せにしてくれる。そして今の私にとって、何よりも嬉しい言葉だった。
「喜んでもらえて、本当に良かったです!」
こうして、月のおもてなし作戦は、大成功したのだった。
のんびり、まったり……。
相変わらずの展開ゆっくりですが(笑)
これからもぜひ!
読みに来ていただけると嬉しいです♪




