75‐2 文化交流会2日目~舞踏会~(中編)
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――ルナガディアの掟『お花のドレス』。
三日月の頭の中で気になっていた事の一つ。太陽とユキトナが話していた『好きな花』の種類の話。これが何を意味していたのか? 星の「ユキトナ様のドレスが珍しいので気になった」の言葉で、月は気付いたのだった。
「謎は解決したっ!! なのです」
私は人差し指を頬に付けて、解ったのポーズ。
「う、うん??」
何の事だろう? と、不思議そうな顔で私の事を見ている星様。
噴水広場での王妃様が、ユキトナ様とユイリア様のお二人に、一度お屋敷へ戻るよう命じた時の事をお話した。
「私たちとお別れをする前、ユキトナ様は太陽君に何か言いたげな様子で。その場でじーっと話を切り出そうとされていたのですが……」
ふと、恥ずかしがってしばらく動けなくなっていたユキトナの姿を、思い浮かべていた月は、心がキュン! と、顔が熱くなっていた。
(考えるだけで、私の方が恥ずかしくなってきちゃう)
「月、顔が赤くなっているよ? ふふっ」
「んにゃはっ……うぅ」
(また顔に出てしまったぁ。笑われてます……)
すると、星様がユキトナ様について話し始めた。
「ユキトナ様は、とても恥ずかしがり屋で、内気な方だからね。慣れない場面での人との会話は、大変勇気のいる事だろう」
どうも、顔見知りのような? 親しい間柄のようにも感じた。
「はい! 私も、それはとても感じました。そして! ユキトナ様のそんなお姿が、とっても可愛くて可愛くて……あっ!!」
失言してしまった事に気付き、慌てて両手で口を隠した。
「月、急にどうしたの?! 具合でも悪い?」
ちょっぴり表情が硬くなってしまった私を見て、星様が心配をしてくれた。
「いえ、違うのです。ユキトナ様の……王女様の事を“可愛い”だなんて言ってしまって。とても失礼だったな、と思いまして」
そう言って反省していると、それを見た彼がまた、ふふっと笑う。
「いや、月。僕もそう思うから。ユキトナ様は心優しく、聡明で思慮深い。そのような事で怒る方ではないし、何より身分を気になさる方ではないよ」
星様はそう言って、私の気持ちを軽くしてくれた。
「はい……」
(そんな星様も、とても心優しいです)
「はぁぁー、失敗失敗」と溜息をついていると、私を見て笑いながら星様が言うのです。「お話の続きはなぁに?」と。
「ハッ!! そうでした」
「月は、色々と気にし過ぎだよ」
励ましてくれる彼に感謝をしつつ、私は再び話し始めた。
「えーっと。ユキトナ様は太陽君に何か伝えたかったようで、王妃様のお声にも、すぐに反応なさらなかったのです。それを見ていた太陽君が……」
――そうですね、私は『カスミソウの花』が好きですよ。小さくとも美しい、白や桃色の上品さが気に入っています――
「そう、ユキトナ様にお話したのです!」
私はお目めキラキラ、両手を胸に当ててキュンキュン! 結局舞い上がるようなその気持ちを隠せないままに、話し続けた。
「あぁ~なるほどね」
彼もここまでのお話で、真相に気付いたような表情になる。
「その時は、急になぜ? 自分の好きなお花の話をしたのかなぁって、太陽君どうしたのかな? と、思っていたのですが。でも今、舞踏会で楽しそうに踊っている二人を見ていたら……謎が解けたのです!!」
「うんうん、あはは」
弾むような調子で話す私に、思わずつられたのか? 星様も楽しそうに、少し声を出して笑い始めた。
白い綺麗なシルク素材の生地に、淡いピンク色の小花が鏤められ、可愛いお花柄のチュールレースが、ふんわりと広がったデザインのドレス。
――そうです! そのお花はまさしく……!!
「「カスミソウ!!」」
私と星様は、同じ言葉が重なりお顔を見合わせると、クスクスっと笑い合った。そして私たちは、また舞踏会へ目を向ける。
私は、中央広場で美しく華麗に踊り舞う二人の様子を見て、本当に“お似合い”だなぁと思った。
「ふふ、しかし本当に意外だった。太陽も粋な事をするね」
彼は目を細め、少し嬉しそうな表情で二人の姿を見つめ、話した。
「ホントですね。いつもの太陽君からは、全く想像が出来ない丁寧な言葉とか……ロマンチストな所とか? うっふふ。今日は色んな姿が見られました」
こうして、思っている事を言葉にしてみて……改めて思う。
――そうだ、太陽君は【王子様】なんだ。
考えなくてもいいと言われても、やっぱり違う場所にいる人なんだなって、今は思ってしまう。そんな事を考えていると、ふと過ぎる。ほんの少しだけ、心の奥に潜む“寂しさ”。
「三日月?」
「はいっ?! あ、ぼーっとしてました」
えっへへーと、寂しさに気付かれないように、笑顔を取り繕う。すると、心地の良い優しい声が、頭の中に響いた。
「三日月、心配ないよ。太陽はこれからも何も変わったりしない。そう、これからも、ずっと……」
ねっ? と、私に微笑みかけてくれる。
「星様……いつもありがとうございます」
――『心配ないよ』
私の寂しい気持ちやマイナスの感情を感じ取ったら、星様はいつも受け止めてくれて、心の中から不安を消し去ってくれる。
私は、みんなと過ごす時間が楽しくて、笑い合える事で“ひとりじゃない時間”も幸せなのだと、最近思い始めていた。その反面、いつかみんなが離れて行くのではないか? と、そんな気がして不安になっていた。
――幸せを失うのが、怖いのかもしれない。
「ねぇ、月。僕がユキトナ様のドレスを気になった理由、カスミソウのお花の意味だけれど、知っているかな?」
心が重たくなってきていた私は、彼の声でまた明るい場所へ戻ってこれた。
「うーん、分からないです。知っているお花の方が少ないかもしれません」
(花言葉かぁ……色々な意味があって素敵だよねぇ)。
「そっか……いや実は最初に見た時は本当に疑問で。正直、驚きが隠せなかった。ユキトナ様にとっては恐らく初めて外で参加される舞踏会だろうに、そのドレスのお花が……ね?」
「あ~そういえば、星様、ユキトナ様のドレスは珍しいって言ってましたね?」
「うん、そうだったのだけど。でも、月の話で理解したんだよ。そしてあのドレスが『カスミソウの花』で間違いないとも、分かったし……」
どうやら私の『謎、解決!!』のお話は、お役に立てたようです。良かったーと、ちょっぴり嬉しくなったのだけれど。最初に中央広場の二人を見つけた時に、星様がいつになく険しい表情と、厳しい口調で話していた事が頭を過ぎった。
でも今は、いつもの表情で、穏やかな口調。むしろ、とても和らいだ笑顔で楽しそうだった。そして、笑いながら花言葉について語り始める。
「太陽が選んだ花だと分かると、ますます笑いが……フフフッ。僕は、今回の文化交流会で、初めて太陽と話したんだけれど。なんだかイメージではない気がして。笑ってしまうよ」
吹き出しそうなくらい笑っていて、すごく楽しそうで。どうしたのかな? と、少し気になりながらも会話を続けた。
「カスミソウですか? 確かに可愛らしいお花で、太陽君が言うイメージではないかもですネ。ウフフ……あっ、でも! ユキトナ様にぴったりですよ」
「そうだね。カスミソウの花は『幸福』や『清らかな心』を意味する事が、一般的なのだけれど」
「わぁ~そうなのですね! まさにユキトナ様のための花言葉みたいです」
私は、その素晴らしい花言葉に心躍らせて、続きを聞いた。
「うん。太陽が、どこまで考えて『カスミソウ』を選んだのかは、聞いてみないと分からないけれど。とても“大切な意味”が、もうひとつあるんだ。それは……」
「エッ?! そ、それは?」
何かな? 何だろう?! と、ドキドキしながら彼の言う“大切な意味”を持つ、花言葉を待っていた。
すると星様は、珍しく少し頬を赤らめて微笑みながら、カスミソウのもうひとつの意味を教えてくれた。
「カスミソウには『無垢の愛』という意味があるんだ。だから……ね?」
――エッ……。
「えぇぇー!!!」
お、驚きで、言葉が……!
「はあぅぅ……」
力が抜けていく私を見て、
星様は楽しそうに、笑っていました。
一週間ぶりの更新です!!
2022年♪
遅くなりましたが、
今年もよろしくお願い致します(*'▽')




