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38 文化交流会2日目~迷矢~

お読みいただきありがとうございます(≧▽≦)

♪こちらのお話は、読了時間:約6分です♪


(Wordcount2660)


――攻撃時間終了まで、残り三十秒。


 三日月の美しい魔法に驚きながらも、心配と応援をしていた他の参加者たちは、無事に的への攻撃(挑戦)を終えた事にホッと胸をなでおろしていた。


 次第に響き渡っていた観客の声も落ち着き、皆次は結果発表を心待ちにしている様子。

 

「よしっ! 終了まで三十秒前だな。的への攻撃は、参加者全員終わったか?」


 測定担当責任者の先生が首にかけた時計で時間を見ながら、各エリアの最終確認を促す。全エリアからの報告を受けるため伝心能力、(いわゆるテレパシーのようなもの)を使って話をする。


「「はい、只今確認中ですが、おそらく終了かと……」」


 各自受け持っている場所の先生方が、責任者への報告をしながら分担で片付けの段取りを進めていた。その間に参加生徒から目を離した時間があったという(後の調査で、魔法アーチェリー大会担当の先生方の多くは、この大会の終了間際「何事もなく終わりそうだな」と気の緩みがあった、緊張感がなくなっていたことを認めている)。


 その頃、三日月はというと。


 人生初の大会参加で、魔法を使う楽しさの余韻を感じていた。今は挑戦後で興奮冷めやらぬ気持ちが(たかぶ)っている。


 その上がりきったテンションのおかげで三日月の弓(クレセント ムーン)は、美しいグローブと共にキラキラとまだ右手に発動されたまま。しばらく「魔力アンテナ張り巡らしています!」状態であった。


「ふぅ~そろそろ落ち着かないと」


(開放した魔力をそろそろ【施錠】しないと)


 魔力コントロールの成功で上機嫌。せっかく上手に発動できたのになぁ~と自分の魔法を信じる事が出来たその手を見つめる。早くも愛着を持ってしまった弓魔法の解除を惜しむ。


 そんな事を考えつつ魔法アーチェリー大会の終了合図を待っていた、その時――!!


(エッ、何?!)


 三日月の能力領域(テリトリー)内に流れ込んできた、僅かな違和感。瞬時に危険な()()を感じ取っていた。


 その違和感は周りの参加者や観客が気付く前、叫び声が聞こえる前のことだった。



「「ご報告致します。一人攻撃の終わっていない生徒が……」」


 あるエリア担当の報告が、急に途切れた。


「んっ? どうした? まだ終わっていないのか?!」


 担当責任者が突然連絡の途絶えたエリアを不審に思い、警備を向かわせる。


 そのエリアでは測定担当の先生が慌てていた。


「あっ、待ちなさい!」


「せ、せんせぇ〜違うのッ!! 矢が、矢が勝手にぃ〜」


 ある参加者生徒が射った、最終三本目の矢。


 それを指差しながら泣いていたのだった。



 その僅かな違和感の正体は、コントロールを失い(あるじ)の言うことを聞かなくなった、強い魔力を帯びた矢。


 それがものすごいスピードでなぜか? ()()()()の方へ向かってきていた。


「よ、()けてー!」

「あぶなーい!」

「きゃあぁぁ……」


「ユイリアさまぁぁ!!」


 普段は安全な場所での訓練しかしていないユイリア。自分の危機的状況にも関わらず、目の前で起こっているアクシデントに何も対処できない。そして驚きと恐怖で動けず、呆然と立ち尽くしていた。


 その姿を目にした三日月は、このままだとユイリアが危ない! そう思った。


 もう迷っている時間はない。


「なんとかして……」



――――『護らなきゃ!!』



 それからの決断は早かった。感知してわずか三秒、三日月の体はユイリアをかばう様に前へ出ていた。


 一秒の遅れが命取りとなるこの状況下で、冷静に判断をし魔法を発動させていく。


(シールド)!』


 もしもの時の為、まずは防御魔法を発動。


 コントロールを失い、迷走している魔力の矢を、周りに影響を及ぼす事なく、安全に解決することが出来るとしたら……?


(あの方法しか思いつかない!!)


 三日月は何とかしなければという一心で【迷矢】への魔法攻撃を開始した。


数多(あまた)――飛翔の矢(フライト アロー)


光の矢(ライトアロー)――【融合(フュージョン)】!』


 次々に三日月オリジナル魔法を連続で発動させた。




飛翔の矢(フライト アロー)】は、飛行力に長けており、空中に待機することが可能。飛ぶ方向も、魔法を使う者の実力によってはどこにでも飛ばせる、()()な魔法だ。


 光の矢(ライトアロー)と同じ単発魔法だが、『数多(あまた)』を付け加えることでその力(矢)を分裂させることも出来る。そして数多で数を増やした飛翔の矢は、迷矢のスピードに合わせ周りを囲み込む。


融合(フュージョン)】はその言葉通り、複数の技を一つにとけあわせることのできる特殊な複合魔法。使える者はほとんどいない。


 三日月はそういった珍しい特殊な魔法も、母である望月から指導を受けていた。様々な魔法技術を幼い頃から厳しく教え込まれており、今回の融合もその一つだった。


 (key)魔法によって制御されているとはいえ、少ない魔力量使用でも出来る範囲で、小さな物を複合するという方法を用いて、望月は日々指導していた。


 三日月は自分の持つ魔法知識と技術を、今回応用したのだった。


 しかし実戦で使うのは、もちろん今回が初めて。魔力量も半端なく大きい。


 三日月の本心、心の中では不安に押し潰されそうだった。“成功率は低い”――助けられる可能性は五分五分。


 それでも、迷いはなかった。


 父譲りのとても慎重な性格の三日月。始めにかけた【飛翔の矢(フライト アロー)】。この魔法は、万が一上手くいかなかった時のため、光の矢(ライトアロー)融合魔法の攻撃が失敗した時のために、保険でかけた魔法である。


 失敗した瞬間、一気に【迷矢】を、数多(あまた)飛翔の矢(フライト アロー)で叩くように、迷矢を追いかけ待機状態にしてあったのだ。


 融合を重ねて発動した光の矢(ライトアロー)と、向かってくる迷矢。

 周りへの影響なしに消滅させるには、()()()のずれもなく矢先同士を当てなければならない。


 真っ直ぐに入れば、月が射った光の矢(ライトアロー)の方へ吸収、一体化させられる。そしてこれが上手くいけば、迷矢の魔力を無効化することも可能だ。


 迷矢を安全食い止めるため、極めて難易度の()()魔法ばかり。その上オリジナルで魔法を重ねているため、()()()()()がどうなるかはやってみなければ分からない。


 それでも三日月は周りの安全を最優先に考え、この方法を選んだ。


 一度しかないタイミング。迷矢の矢先を狙い、弓を引いた。そして――――!!



 キラリッ。



 一瞬の眩い光の矢。


 その通った道を示すように、一本の光線が綺麗な直線となり伸びていく。


 パァァ…………!!


 その後すぐに、大きな光を放った二つの矢は、跡形もなく消え去った。


「上手く…………上手くいった?」


 三日月は、さすがにその場に座り込んだ。この時、この大会で許可されていた(key)レベルⅡで開放した魔力のほとんどを、使い切っていたのだ。


 周りには精霊の癒しと一緒に、矢の消滅の欠片か?


 キラキラと小さな光の粒が降り注いでいた。


 それはまるで、静かな夜空に輝く星屑のようだった。



いつもお読みいただきありがとうございます♪

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