38 文化交流会2日目~迷矢~
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――攻撃時間終了まで、残り三十秒。
三日月の美しい魔法に驚きながらも、心配と応援をしていた他の参加者たちは、無事に的への攻撃(挑戦)を終えた事にホッと胸をなでおろしていた。
次第に響き渡っていた観客の声も落ち着き、皆次は結果発表を心待ちにしている様子。
「よしっ! 終了まで三十秒前だな。的への攻撃は、参加者全員終わったか?」
測定担当責任者の先生が首にかけた時計で時間を見ながら、各エリアの最終確認を促す。全エリアからの報告を受けるため伝心能力、(いわゆるテレパシーのようなもの)を使って話をする。
「「はい、只今確認中ですが、おそらく終了かと……」」
各自受け持っている場所の先生方が、責任者への報告をしながら分担で片付けの段取りを進めていた。その間に参加生徒から目を離した時間があったという(後の調査で、魔法アーチェリー大会担当の先生方の多くは、この大会の終了間際「何事もなく終わりそうだな」と気の緩みがあった、緊張感がなくなっていたことを認めている)。
その頃、三日月はというと。
人生初の大会参加で、魔法を使う楽しさの余韻を感じていた。今は挑戦後で興奮冷めやらぬ気持ちが昂っている。
その上がりきったテンションのおかげで三日月の弓は、美しいグローブと共にキラキラとまだ右手に発動されたまま。しばらく「魔力アンテナ張り巡らしています!」状態であった。
「ふぅ~そろそろ落ち着かないと」
(開放した魔力をそろそろ【施錠】しないと)
魔力コントロールの成功で上機嫌。せっかく上手に発動できたのになぁ~と自分の魔法を信じる事が出来たその手を見つめる。早くも愛着を持ってしまった弓魔法の解除を惜しむ。
そんな事を考えつつ魔法アーチェリー大会の終了合図を待っていた、その時――!!
(エッ、何?!)
三日月の能力領域内に流れ込んできた、僅かな違和感。瞬時に危険な何かを感じ取っていた。
その違和感は周りの参加者や観客が気付く前、叫び声が聞こえる前のことだった。
◇
「「ご報告致します。一人攻撃の終わっていない生徒が……」」
あるエリア担当の報告が、急に途切れた。
「んっ? どうした? まだ終わっていないのか?!」
担当責任者が突然連絡の途絶えたエリアを不審に思い、警備を向かわせる。
そのエリアでは測定担当の先生が慌てていた。
「あっ、待ちなさい!」
「せ、せんせぇ〜違うのッ!! 矢が、矢が勝手にぃ〜」
ある参加者生徒が射った、最終三本目の矢。
それを指差しながら泣いていたのだった。
◇
その僅かな違和感の正体は、コントロールを失い主の言うことを聞かなくなった、強い魔力を帯びた矢。
それがものすごいスピードでなぜか? ユイリアの方へ向かってきていた。
「よ、避けてー!」
「あぶなーい!」
「きゃあぁぁ……」
「ユイリアさまぁぁ!!」
普段は安全な場所での訓練しかしていないユイリア。自分の危機的状況にも関わらず、目の前で起こっているアクシデントに何も対処できない。そして驚きと恐怖で動けず、呆然と立ち尽くしていた。
その姿を目にした三日月は、このままだとユイリアが危ない! そう思った。
もう迷っている時間はない。
「なんとかして……」
――――『護らなきゃ!!』
それからの決断は早かった。感知してわずか三秒、三日月の体はユイリアをかばう様に前へ出ていた。
一秒の遅れが命取りとなるこの状況下で、冷静に判断をし魔法を発動させていく。
『盾!』
もしもの時の為、まずは防御魔法を発動。
コントロールを失い、迷走している魔力の矢を、周りに影響を及ぼす事なく、安全に解決することが出来るとしたら……?
(あの方法しか思いつかない!!)
三日月は何とかしなければという一心で【迷矢】への魔法攻撃を開始した。
『数多――飛翔の矢』
『光の矢――【融合】!』
次々に三日月オリジナル魔法を連続で発動させた。
◆
【飛翔の矢】は、飛行力に長けており、空中に待機することが可能。飛ぶ方向も、魔法を使う者の実力によってはどこにでも飛ばせる、優秀な魔法だ。
光の矢と同じ単発魔法だが、『数多』を付け加えることでその力(矢)を分裂させることも出来る。そして数多で数を増やした飛翔の矢は、迷矢のスピードに合わせ周りを囲み込む。
【融合】はその言葉通り、複数の技を一つにとけあわせることのできる特殊な複合魔法。使える者はほとんどいない。
三日月はそういった珍しい特殊な魔法も、母である望月から指導を受けていた。様々な魔法技術を幼い頃から厳しく教え込まれており、今回の融合もその一つだった。
鍵魔法によって制御されているとはいえ、少ない魔力量使用でも出来る範囲で、小さな物を複合するという方法を用いて、望月は日々指導していた。
三日月は自分の持つ魔法知識と技術を、今回応用したのだった。
しかし実戦で使うのは、もちろん今回が初めて。魔力量も半端なく大きい。
三日月の本心、心の中では不安に押し潰されそうだった。“成功率は低い”――助けられる可能性は五分五分。
それでも、迷いはなかった。
父譲りのとても慎重な性格の三日月。始めにかけた【飛翔の矢】。この魔法は、万が一上手くいかなかった時のため、光の矢融合魔法の攻撃が失敗した時のために、保険でかけた魔法である。
失敗した瞬間、一気に【迷矢】を、数多飛翔の矢で叩くように、迷矢を追いかけ待機状態にしてあったのだ。
融合を重ねて発動した光の矢と、向かってくる迷矢。
周りへの影響なしに消滅させるには、一ミリのずれもなく矢先同士を当てなければならない。
真っ直ぐに入れば、月が射った光の矢の方へ吸収、一体化させられる。そしてこれが上手くいけば、迷矢の魔力を無効化することも可能だ。
迷矢を安全食い止めるため、極めて難易度の高い魔法ばかり。その上オリジナルで魔法を重ねているため、三日月自身がどうなるかはやってみなければ分からない。
それでも三日月は周りの安全を最優先に考え、この方法を選んだ。
一度しかないタイミング。迷矢の矢先を狙い、弓を引いた。そして――――!!
キラリッ。
一瞬の眩い光の矢。
その通った道を示すように、一本の光線が綺麗な直線となり伸びていく。
パァァ…………!!
その後すぐに、大きな光を放った二つの矢は、跡形もなく消え去った。
「上手く…………上手くいった?」
三日月は、さすがにその場に座り込んだ。この時、この大会で許可されていた鍵レベルⅡで開放した魔力のほとんどを、使い切っていたのだ。
周りには精霊の癒しと一緒に、矢の消滅の欠片か?
キラキラと小さな光の粒が降り注いでいた。
それはまるで、静かな夜空に輝く星屑のようだった。
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