35 文化交流会2日目~魔法発動~
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――『【鍵】レベルⅡ、解除』
学園に入学する時に、母から渡された【小さな鍵】。魔法訓練の時と、先生から特別に許可が出た時のみ魔力を使用できるようにする為だけの鍵だ。
だが結局、三日月はスモールキーを使った魔力開放を、一度も行ったことが無い。その理由は、普通以上の力を持つ彼女は、魔力制限をしているとはいえ必要最低限の魔法は使えるのであった。
「これ以上出さなくても……」
いつもそう思って訓練してきた。しかし三日月にはスモールキーを使わなかった一番の理由がある。それは――。
「魔力コントロールが完璧に出来る自信がなくて……不安なの」
そう、それは三日月自身の問題であり、心の持ちようで。
そのことを理解する三日月の家族や、重要事項としてその秘密を厳守している学園内の関係者は、魔力開放を無理にさせるようなことはしなかった。
しかし今回、魔力をレベルⅡまで開放した今の三日月の心は、自分を信じようと不安を払しょくしようと、一気に力を集中させた。そしてゆっくりと、丁寧に魔法の発動に取り掛かった。
――五歳の頃にかけてもらった、上級魔法【鍵】。
(あれから十年間、自分の力を信用できず魔法を使うのが怖いままで。それを許し見守ってくれる周り人たちの優しさに甘えていた。私は、現実からずっと逃げてきたんだ)
「でも!! 今は違うよ」
(消したい記憶なんて乗り越えてみせる!)
右手に魔法弓を発動するため、腕を真っ直ぐに伸ばす。能力、魔力ともに十分すぎるくらい持っている三日月。しかしまだ大きな魔法発動をしたことがない。自業自得だが、きちんと弓を創造出来るかどうかはこの瞬間、自分の持つ実力にかかっているのだった。
(よしっ! 力……集まってきた)
指先まで魔力を巡らせる。そして三日月魔法の始まりを告げる、オリジナル魔法を唱えた。
『無属性魔法【クレセント】!!』
さらに力が右腕に集まってくる。まるで光の花びらが帯を創り、鮮やかに舞うように。そして、その髪と同じ美しいホワイトブロンド色に輝く三日月形の弓が、ふわんと……ぼんやりと右手に握られた。
『我が力となれ――【クレセント ムーン】!!』
三日月は魔法の終了を唱える言葉を言い、無事に発動は完了した。
(成功した?!)
「よ、良かった……」
安心したのも束の間、三日月の悪い癖がで出始める。
(大丈夫かな、私ちゃんと出来てる? 魔力量不足してない? 逆に魔力開放し過ぎてない?)
「あわわ~、落ち着くのよッ三日月!!」
そして大会開始の合図が聞こえる少し前に、彼女の中に迷いが生じる。
「えっと、でも、魔法……次の魔法? 魔力は――」
(ダメだ、このままじゃ弓を離してしまいそう。コントロールしないと!)
――不安と恐怖、そして焦り。
それは三日月の頭と心に、いきなり重くのしかかった。
「はっはぁ~い♪ 出ましたぁ。三日月ちゃんのネガティブ三拍子!)
「って、冗談とか考えてる場合じゃないのにッ」
三日月は間違いなく、一人でパニックになりかけていた。すると急に、後ろから温かい感覚に包まれた。穏やかな気持ちを取り戻しかける中、目を開けてみると……。
――――ふわっ。うぴゃ♡
いつもいてくれる精霊さんたちが、そばで【ダイジョウブ、ダイジョウブ】と言いながら、右手をふわふわと触れていないような感覚でさすってくれていた。
(精霊ちゃんたちぃ~ありがとぉ!)
三日月は自分の身体から先程とはまた違う、優しい力が湧き出ているのに気が付く。そして不思議と心は落ち着きを取り戻していった。
その時!
三日月の心と同調するように、セルクがプレゼントをした蒼い石のブレスレットが、光と共に形を変化させ右手を包み込む。そして美しい夜空のような【フィンガーレス・グローブ】に姿を変えた。手を動かすたび、そのグローブは星屑のようにキラキラと輝いている。
――きっと君を護り、導いてくれるよ。
ふとセルクの言っていた言葉が、心の中に流れ込んできた。
「導いて……くれている?」
そしてラフィールから提示された【鍵】使用の条件、魔法を楽しむこと。
「そう……そうだよね! ラフィール先生とのお約束も、守らなくちゃだよ」
(勝ち負けじゃない。私は、私の為に! 今日の大会を全力で戦おう)
三日月の迷いは消え、溢れんばかりの笑顔で前を向いた。
そして次第に三日月の弓魔法【クレセント・ムーン】は安定。ぼんやりとしていた視界は晴れて、完全なる三日月形の弓が姿を現す。その瞬間、見ていた全ての者達(観客)が一瞬、その美しさに息をのんだ。
沈黙の時間は十秒程続き、その後ざわつきと歓声が入り交じった。もちろん集中している月にも、その状況が伝わって……と思いきや。
月にはそもそも、周りの声を遮断する能力が働いており、全くこの状況に気付いていなかった。
ざわざわっ!!!!
「す、すごいな。あの弓」
「ねぇ、あの子は誰?」
「見たことないわ」
全員の弓の発動を確認した進行担当の先生が、開始の合図をする。
『攻撃始めっ!!』
本気で行きます――――。
『ライトアロー!!』
三日月は、左手から光の矢を生み出す。
(お恥ずかしい話。この光の矢ライトアローは、父の名を使ったオリジナル魔法です~テヘヘッ)
泣いても笑っても、制限時間は五分。
参加者全員が、自分の得意とする属性魔法によって発動した弓と矢で、遠く離れた星形の的を狙い、懸命に射っていった。
そして三日月の隣では。さすがユイリア、自分でも言うだけあり、距離の長さを全く感じさせない安定の弓さばきを魅せて(見せて)いる。
最終三本目。その矢を射る前に「ふふん!」という顔に、横目でチラッと三日月を見るユイリアは目をぱちくり、ぱちくりと見開いた。
「なんですの?! この光。そしてこの……魔力量はッ?!」
ユイリアは、三日月の姿を見て少し動揺しかけた。しかしすぐに気持ちを切り替え、自分自身を奮い立たせる。深呼吸をして三本目の矢を的へ射った。もちろん、三本とも的には当たり点数もそこそこ高い。
制限時間をニ分も残し、ユイリアの的攻撃はあっさりと終了していた。
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