31 文化交流会2日目~三人からの贈り物~
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私は、今日のお礼をもう一度言うと、扉を開けて向き直り、お辞儀をしてお部屋から出ようとした。すると、ラフィール先生に呼び止められた。
「そうそう! 月さん。また私の所に来る事があるかもしれませんので、この部屋までの裏扉をお教えしておきましょう。表からだと、色々と気を遣われるでしょうし」
「いえ、そんな!」
ロイズ先生に護っていただいた時だって、周りの反応が大変だったのに、『裏扉』を教えていただくなんて! そんな特別扱いみたいな事。皆様に知られたら、また何を言われるか分からない。
「うふふふ、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ~。ねぇ? 月さん、ぜひ! 気兼ねなく遊びに来てください。手作りお菓子と……そうそう次は、特製の珈琲なんていかがですか♪」
(うぅ、珈琲は大好きです)
「それと実は、ひとつお願いがありまして」
「お願いですか?」
「えぇ、たまにで良いので。ぜひ、ティアへ会いに来ていただけないでしょうか?」
「バスティアートさんにですか? お願いだなんて、もちろんです! 私の方こそ、またゆっくりとお会い出来るのであれば、嬉しいです!」
「そーですかぁ? ありがとう月さん、お願い聞いていただけて安心です~」
そう言うと急に、少し寂し気な表情で、先生はお話を続けた。
「ティアには、お友達と呼べる“人”がいないので。しかし月さんでしたら、私も安心です! あの子もセルク同様、あなたのことをとても気に入っているようでしたからね。また遊びに来てくれると知ったら、喜びます〜」
嬉しい反面これはまさか。裏扉を教えてもらう方向に話が進んでいるのでは?
でも、そもそも先生の魔法で作っている扉なのだから、見つかるはずないかな……うんうん、そうだそうだ! と、勝手に納得していた。
そんなことを考えていると突然、ラフィール先生が私の手を取り、優しい美声。
「これから頑張って、新しいことに挑戦しようとしているあなたに、これを」
――キラッ。
(えっ? 何か、光った?)
「……?」
「それでは、月さん。また会場にてお会いしましょう」
え、え?
「あ、は、はい」
(何か起こった? 光った?)
「し、失礼しましたぁ」
結局、光が何だったのかは分からないまま。
お部屋を出るときに、先生はまた「いい子いい子~♪」と言いながら、よしよしナデナデをしてくださった。
――いつも私のこと、子ども扱いするんだから。
(いや、まぁ、まだまだ子供なのですが)
でも。とても充実した時間を過ごすことが出来た。
(今日ここに来て、本当に良かったなぁ)
私は扉の前で感謝のお辞儀をして退室。すると入り口で、あの可愛らしい声が聴こえてきた。まるで、落ち着く音色のようだ。
『月様、お疲れ様でございました!』
バスティアートさんだった。私はまず、お礼を言わないと! と、お顔真っ赤の恥ずかしい気持ちで、頑張って話をし始めた。
「あの、先程は手を握って元気づけてくれて、安心させてくれて、ありがとうございましたッ!」
私は心から嬉しかった気持ちを表現したくて、深々とお辞儀をする。
『いえ、私は何も。それより月様、お顔を……』
「え? はい」
顔を上げた瞬間、彼女は強い力を私の身体に送ってきた。
(星様と初めて出逢ったあの時のような?!)
まるで水のように心に流れ込んでくる。凍った部分が溶けていくような、そんな感覚。
『少しですが、私の癒しを送りました。魔法の成功と、ご無事を祈っております。頑張って下さいね』
「はい、ありがとうございます!」
『お気をつけて、行ってらっしゃいませ』
「はぁい! 行ってきまぁす」
彼女はニコッと笑うと、光を放ちながら水晶の中へ戻っていった。私は水晶猫さんに「ありがとう」と言い、美しい水晶をヨシヨシしながら、みんなの優しさを思い出していた。
――そして、勇気をもらったことも。
角を曲がると、星様が待っていて下さった。でも声をかけようとして、言葉を飲み込んだ。いつもと違う雰囲気。あっ、眼鏡を外している? 少し、近寄りがたい表情で立っていた。すると、こちらに気付き眼鏡をかけると、いつもの表情に戻り笑顔で手を振って、おいでおいで~としてくれている。
「す、すみません。お待たせしました!」
「月、お帰り。先生とお話は出来たかな?」
(はっ! お、お話?!)
――「あなたのことを“大切”にしていることは間違いないと思いますよ」
先生のあの言葉が、頭の中を過ぎった。
ダメだぁ! 何だろう。分からないけれど、今、星様のお顔がちゃんと見られない。
「月、大丈夫? 全然、待っていないから気にしないで。それとも、具合でも?」
「いえいえ! とても元気です〜あはは」
そう? と、不思議そうに星様が、私の顔を見ている。
エヘヘ、と笑っていると「そうだ、三日月……」と星様が何かを取り出した。
「――これを」
「ふぇっ?」
星様が渡して下さったのは、蒼い石が使われたブレスレット。光の角度で、キラキラと星のように粒が輝いている。
「えっと、これは?」
「ごめん、気に入らなかったかな?」
「いえいえ、違うのです! とても綺麗。でも、どうして?」
すると、星様はいつもより何倍もの笑顔で言った。
「【セレネフォス=三日月】十六歳のお誕生日、おめでとう」
「えぇ、あっ、ありがとうございます」
「えっと、喜んでもらえたかな?」
少し心配そうな顔の星様に、私はうれし涙をこらえつつ、満面の笑みを浮かべて答えた。
「とっても。とっても、嬉しいです」
「あはは。月は泣き虫なのかな?」
「これは、うれし過ぎての涙です!」
ラフィール先生、バスティアートさん、そして星様。こんなに皆様に支えていただけて。
こんなに素敵な一日の始まり。十六歳のお誕生日を迎えられるなんて。
(私は本当に、幸せです)
「あっ……」
「どうしたの?」
「ちょっと疑問が」
「うん?」
なぜ?
「私のお誕生日、どうしてご存知だったのですか?」
それを聞いた星様は、あぁぁ~という顔をしている。
「実は……」
「あ~ははは、そうなんですね、納得〜」
星様が言うには……。
一週間前から、お家の中に響き渡る楽しそうな声。一緒に暮らすメルルとティルが「大事なおしらせ~♪ みかづきのおたんじょうびぃん♪」と、言いながら。作詞、作曲のお歌を歌ってくれていたそうです。
なんということを、星様すみません。
でも私は、とても嬉しいお誕生日になりました!
(後で二人に「ありがとう」言っておいた方がいいかしら?)
ふとまた、星様と目が合った。その時にお互い何を考えていたのかは解らないけれど、顔を見合わせて、自然と笑い合っていた。




