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158 約束は……いつ?


 コンコン……コン。


「んにゃ? 誰か来たァー♪」

「んにゅ? 誰か来っター♪」

「んえぇ? 誰だろうねー?」


 こんなに朝早く、と不思議そうに玄関へ向かう三日月。その後ろを、ウキウキ~わくわく~と楽しそうについて行く可愛い双子、メルルとティル。


 恐る恐るピープホールに目をやると誰なのかが分かり彼女はホッと胸を撫で下ろす。


 がちゃり、キィー……。


「あ、おはよう三日月ちゃん! 朝早くにごめんね!!」

「んーん、気にしないで! それよりそんなに急いで、どうしたの?」

「あの、えっと、実は――」


「「「うん?」」」

 三日月と双子ちゃんは顔を見合わせ、話を聞いた。



 息を切らし頬を赤らめて興奮気味に話し始めたその人物は、三日月と同じ階に住む同級生の女の子だ。聞けば寮の前に『赤毛短髪ムキムキガッチリ筋肉体型のカッコイイお兄様』が立っていて、三日月に会いに来ているという。


「あ、あ、あのその人は多分、その……文化交流会の大会でカッコ良かった人だと思うのッ!」


「あっははは……それって、多分ていうか、もしかして、いや絶対に……」


「「たいよぉーんッ♪♪」」


 キャッハハハハ~!!


(ですよねぇ……)


 メルルとティルのハイテンションについていけないと、薄い目をした三日月はすぐ我に返り、教えてくれた同級生にお礼を言う。


「朝から騒がしくてごめんねぇ。知らせてくれてありがとう」

「うーうん! ぜーんぜんッ! 私は朝から王子様に会えたみたいで夢のようで幸せだったから~♡ 逆にお礼を言いたいくらいだよ~きゃは~」


「ぁ、ぁ~あは~、それなら、良かった……けど……」

(太陽君が『王子様』ねぇ。それは間違いではないのだけれど)


 未だ頬を赤らめ満面の笑みで手を振って自室へ戻っていった同級生に、三日月も笑顔で応える。


「ふぅ。それにしても、太陽君が此処に来るなんて初めてだ」

(何か、あったのかな……)


 フッと彼女の心に不安が()ぎる。しかし考えている暇はない、あまり太陽を待たせてはいけないと、三日月は最低限の身支度を終え太陽のいる場所へと急いだ。





「よぉ、月。朝早くにすまんな」


「おはよう。んーん、大丈夫」

(良かった。太陽君で間違いない)


 三日月は、今目の前にいる人物が兄のように慕う“太陽”に違いないことを見て話して確認し、ホッと安堵の表情を浮かべる。


 この学園内に輝くような赤毛のマッチョカッコいい青年は恐らく、太陽一人しかいないだろうと思いつつも、周囲に危険がないかを気を付けるよう言われている彼女は寮を出る前、慎重に気を巡らせ確認してから扉を解錠した。


「そうか……うん」

「うん? 今日は……どうしたの?」


 授業が休みである本日の早朝、何か急ぎの用事で来たのか?


 それにしては彼の身なりが、いつも以上に洗練された印象を受ける。そして真剣なのか、深刻なのか、同級生の言う通りまるで『王子様』な凛々しく近づきがたい雰囲気を醸し出す。あの明るすぎるくらいの大声と、ニカっと白い歯を見せ笑ういつもの欠片も感じられない太陽の顔が、なぜか沈み暗くも感じてしまうのは気のせいだろうか。


 三日月は頭の中でそんなことをグルグル考えていると、太陽が意を決したようにその重たい口を開いた。


「実は、昨夜遅く……セルクから伝言を預かったんだ」

「えっ、星様から?」

「あぁ、月と今日出かける約束をしたが、深い事情があり行けなくなった、謝罪にも来れず本当に申し訳ない。そう、伝えてほしいと言っていた」


(なるほど……それで太陽君、こんなに朝早く伝えに来てくれたんだね)


「そうだったんだぁ……そっかぁ~残念だけれど、星様はいつも色々お忙しそうだから。太陽君、わざわざゴメンネ、ありがとう!!」


 眉を下げて困り顔になる三日月。少しだけ寂しさを感じている彼女だったが、恐らくセルクは互いに信頼できる友人――太陽だからこそ依頼したのだろうと、その思いはすぐに理解できた。


「いや、俺は構わんのだが――ッてぇー! おぉっとぉ!!」


「「にゃーーー♪♪」」


「あっ! こらぁ、メル・ティルってばぁ! ダメでしょー」


 とても大切なお話をしているんだと伝える三日月の言葉にも、二人は。


「「きゃ~っははぁ!!」」


 てってけてててー♪ 


「あぁ……相変わらずの天真爛漫さで、しゅみません」

「はっは! いや、おかげで気が晴れた。本当に、メルルとティルには敵わんな」


 双子ちゃんがどこかへてってけーと走って行き、また二人きりになる。すると太陽がいつもの口調で話し始めた。


「今日、ちょっと国へ帰ってくる」

「え、えっ? それって、エッ?」


「国王様に、あ~まぁ俺の父親のことだが。これまでの経過と、先日の文化交流会での実績、それから……」


 ふと話が途切れ、「どったの?」と首を傾げる三日月の頬へ優しく触れ、微笑むように見つめた後に目を逸らした太陽は、再び口を開く。


「我がイレクトルムの友好国であるルナガディア王国、恐れ多いことに最高位王妃様にお会い出来た。そして王女“ユキトナ様”に再会したご報告もせねばならんのだ」


――あっ!


「うん、うんうん!! 二人の踊る姿は今でも夢みたいに目に浮かんでくるよぉ! 本当に素敵だったぁ……って、あ。そういうお話じゃないかぁ、てへへ」


 ぎゅっと手を組みキラキラお目めで話した三日月は「これまた失敗」と恥ずかしそうに自分の頭をコツンして、舌ぺろりん。


 瞬間、ふとまた過ぎる。


「あ……太陽君、帰っちゃうって」


「ん? あ~ははは! 月、勘違いするなや。二日くらいだろう、この休みの間だけのつもりだ。遅くとも一週間以内には戻るぜ」


 三日月は「良かったぁ~」と胸に手を当てニコッと笑う。

 その包み隠さない彼女の心、表情は太陽の決意を迷わせる。


 ふわっ……。


「――月」

「ほぇ……」


 ぎゅーっと三日月を抱き締めた太陽。その温もりは、彼女の全身から悩みや不安、心痛全てを燃やし、安心感で満たしていくようであった。


「大丈夫、()()すぐに戻ってくる。だから、心配すんな」

「う……ん? あ、り、がと」



――んーきゃああああ!!!!


「んぷはあっ!?」


「うぉーっしゃー! 避けたぜ! 今日は避けたぞ、どうだぁーがははは! 来やがったなぁ!? 可愛こ双子ちゃんモンスターめ~」


「「んっきゃ~♪ 怖……っくなぁぁいもぉん!」」


「これぃ、まてぇーい!!」


「あ、あっははぁ……」


(お願いです、朝早いので。というよりも、寮の前でおやめくださいまし~)



 恒例のルーチン? が始まってしまった。

 太陽と可愛い双子ちゃんの追いかけごっこは、今日も絶好調である。


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