156 嬉しい気持ち
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――ふぇ~ん……全然追いつけないよぉ!
いつものことだと頭では納得、しかし心の中ではラフィールの飛躍魔法に追いつけないのが悔しい三日月はいつものように頬をぷくっと膨らませ、天井を仰ぐ。
「さぁて、月さん。暗くなる前に、そろそろお家へ帰りましょうねぇ♪」
まるで小さな子供に声をかけるようなラフィールの口調に三日月は数秒間、沈黙。薄目で見ると「先生、またそんな子ども扱いするー!」とご機嫌斜めな顔を横に、ぷいっ!
キラッ――。
(今、何かが……)
彼女が向いた視線の先、その瞳に入ってきたのはあの不思議な『金の砂時計』。その針が示す時刻を確認すると三日月の舞い上がっていた気持ちはフッと落ち着き平常心を、取り戻す。
「もう、こんな時間になっていたのですね」
(あっという間でなんだかんだ、すごく楽しかったなぁ)
時が経つのは早いものでラフィールと三日月の追いかけっこが終了した頃にはもう、午後五時をまわっていた。
◆
ラフィールの言う「お家」とは。
現在、三日月が住んでいるのはこの学園に通う学生専用の学生寮。
王国が管理する学園内に建てられている寮ということもあり、人の出入りに関しては特に厳しく警備されている。そのため二十四時間、建物への出入りチェックは完璧。寮の扉にかけてある保守魔法により守られ、学生以外で登録していない外部の者が侵入するとすぐに分かるよう、管理されている。
◆
「でも先生、まだ明るいのです。それに、門限はありませんので」
七月の陽は長く、三日月の言う通りまだ外は明るい。ラフィールの「暗くなる前に」という言葉に少々、違和感が感じられた。そしてほぼ一人暮らしと変わらぬ学生寮で仮に帰宅時間が夜遅くなったとしても怒る者は、誰もいないのである。
「ふふふ、それでもダ~メ! あ~そうそう、月さん? セルク君にちゃんとお部屋の前まで、送ってもらってくださいネ」
「んえぇ!? いえいえ、そんな! 私、一人で帰れます!!」
三日月は両手を自分の目の前でぶんぶんと振り、もうすっかり元気ですアピールをすると「これ以上は迷惑かけられません!」と、にっこり。部屋の扉へと、歩き出す。
が、しかし――。
「ぁ……」
(ちょっとだけ、眩暈がする)
「月! 大丈夫かい!?」
「ぇっ、ハイ。あの、ぜ~んぜん平気ですよ! 星様」
ふらつきを隠すように元気な声で話しエヘヘと明るく笑う三日月であったがまだ、足元や目の前がフワフワと浮いたような、おぼついた感覚が残る。そんな彼女が心に思う本当の気持ちは、先の見えない自分の力=未来への不安だった。
それでも表情に出さないよう振る舞う姿から思いを察したセルクは柔らかい声で、話しかける。
「月、ぜひ……いや、良かったらでいいのだけれど。今日は君を、家まで送らせてくれないかな?」
少しだけ驚く顔を見せた三日月は頬をピンク色に染め、答えた。
「とても嬉しいのですが。星様もお疲れでしょうし、大変ではないですか?」
「問題ない。それよりも月がそう言ってくれるのであれば、僕も嬉しいよ」
ホッと安心感のある、変わらないセルクの声。そして「僕も嬉しい」という言葉に一瞬ドキッとした三日月は慌て笑いながら、続きを話す。
「ありがとうございます。それではお言葉にあ……(甘えて)」
ドキン、ドキン……。
その瞬間、キリッと細めた深く蒼い瞳は優しく微笑む。そんなセルクと目が合った三日月の心奥は温かく、変化していく。
(やだ……どうしよう。先生と星様に聞こえちゃいそうなくらい、心臓の音がドキドキって大きく鳴ってる!)
言葉に詰まる程、三日月の胸は高鳴っていた。
「どうしたの、月? やはりまだ調子が――」
「いーえいえ!!」
心を落ち着けるように三日月が胸に当て握りしめていた、両手。その仕草が苦しそうに見えたのか、黙りこくった彼女の事を心配するセルク。
「そう? でも何だか」
「……ぃぇ、んと」
そんな彼の発する心配そうな声でもその耳をくすぐり、ときめかせていた。
紅潮していく自分の顔に気付いた三日月を見守るラフィールには、彼女の心が視えていた。その初々しさに必至で笑みを堪えるラフィールはフッと真剣な表情で、話し始める。
「そうそう、ちゃんと言う事を聞いてくださいね。そしてお部屋まで送ってもらうのですよ。ウフ……あっ、コホン! 失礼。さてさて月さん、良いですか? 今の貴女はまだ油断ならない状況にあります。セルク君の護りがなければ当然! 危ないということを、十分ご理解いただいて――」
「んと、あのぉ。そんなに今の私って、大変……なのですか?」
聞いていた三日月の表情はふと、不安気になる。しかしそれでもラフィールは顔色一つ変えず強めの口調で「えぇ、そうです」と答え、話し続けた。
「月さんが皆よりも強い魔力を有していること、これは隠すことの出来ない事実です。そして、あの大会で貴女の存在に気付いた者も多くいるはず――」
「あ……」
この時ふと思い出したのはセルクをアフタヌーンティーに誘った日に言われた、あの言葉。
――『絶対に護る。君には、仲間以外は指一本触れさせない』
自身の行動によって危険が迫ることとなった、三日月。しかし必要なことだったと理解しており、後悔はなかった。
いつもゆっくり更新で
遅くなりすみません(;´▽`A``
お読み下さりありがとぉございます♪




