147 メルルとティルの戯れ
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ガチャ~……バターンッ!!
「「うひゅ~うゆひゅ~ん♪」」
「うっわぁー! びっくりしたぁ」
勢いよく開いた扉に涙も止まるほど驚いた三日月はベッドから、飛び起きる。
「月、そんなにいきなり起き上がったら……」
心配そうに見るセルクが言い終わる前に始まった、メルルとティルの月ちゃんスキスキ戯れタイム。それまで泣いていた三日月が一気に通常モードに戻る姿を見てセルクは嬉しそうに、微笑む。
「つっきぃ~起きたのかぁ?」「起きたのかぁぁぁ?」
「ん、うん? おき、た~……かな?」
涙を拭いながら答える三日月は内心、起こされたと言う方が正しいのではないかと考えつつおでこに右手の甲を当て、困ったぁと頭を抱える。
(まだちょっぴり、頭が働いてないなぁ)
「ねぇねぇあしょぼー」「ねぇねぇジュース」
「う、ん。待って待ってぇー」
思考が追い付いていかない現実に戸惑う三日月にも容赦なく巻きつく、可愛いメルルとティル。二人からはキラキラと小さく微弱の光が発せられている。しかしまだ全快方ではない三日月はその双子ちゃん妖精の力に気付く余裕は、ないようだ。
「あぁ、そうか。フフ……さすがメルティ」
ふと呟いたセルクの手のひらにもメルルとティルから光の粒が、舞ってくる。
「ん? これは」
――こんな僕にも光を? 君たちはいつも、怖がらずにいてくれる。
めちゃめちゃにされる中で隙間からセルクの顔が見えた、三日月。
(星様の表情が、穏やか……なんだか、嬉しそう?)
「ねぇねぇつっきぃー」「ねぇねぇちゅっきー」
「んはぁっ! ど、どうし……たのぅぅ」
(く、ぐるじいぃぃ!!)
そろそろ限界を迎えそうな三日月の様子にセルクは吹き出し、笑いそうになる。それを必死で堪える彼の顔に気付いた三日月は顔を真っ赤にし、ひと言。
「ほ、星様ぁ!? すごい笑ってる~……たすけ、んみゃふッ」
「……エッ? いや、フッフフ……楽しそうだなぁと」
「「ねぇねぇ、つっきぃー?」」
「ふぅぅ、ふぇ?」
スキスキタイム終了か? と、セルクへの視線を外させる可愛いメルルとティルの声は、落ち着いていた。その二人を見て三日月がホッと胸を撫でおろしたのも、束の間。
「「あーのーねぇー……」」
「う、う……はぁい。どうし、たんにゃふッ!!」
「きゃっはーん」「つっきしゅき~♪」
ばっさぁー! ぼふっ!!
「ちょ、メルル! ティル!! 待っ……」
――まだ、終わってなぁぁぁいッ!?
キャッキャとじゃれ合う二人の下敷きになる三日月はだんだん動くことを止め、されるがままになっていた。そしてついに堪えきれなくなったセルクは微かに聞こえるくらいの笑い声を、発した。
(やはり三人は、仲が良いな)
三日月の心身に深く残る、想起魔法の後遺症。しかしメルルとティルの笑顔と声(スキスキ戯れ)は癒しを持ちその苦痛を、和らげていく。
メルルとティルが放つ魔力――三日月への深い愛情表現を見つめながら微笑するセルクは今、自分自身も二人から贈られた小さな光の粒を手のひらに乗せ、感謝と喜びを感じる。
その光粒は疲弊していた彼の心にも、安らぎを与えていた。
「お待たせ~♪ メルルちゃんにティルちゃん。おやつの時間ですよ」
「「にゃーやったぁ! おやつだぁ♪」」
ポフッ! タタタタターッ……ばたーんっ!!
扉の向こうから聞き覚えのある、よく知る優しい声が聞こえてきた。その呼びかけにすぐ反応し走って部屋を出て行くメルルとティルは、本当に元気いっぱい。
「ラフィール……先生」
風のように現れては去って行ったメルルとティル。その心思うがままな二人のやんちゃぶりを全身で受け入れた三日月は解放され、力の抜けた状態で小さく笑うしかなかった。
「月、大丈夫かい?」
「えぇ、あはは……相変わらず二人は、すごい迫力……でしたネ」
その元気を見習いたいものだと体を再度、起き上がらせた三日月。少しだけフラフラしながらも目の前にいるセルクにぼさぼさの姿を見られたくないと、はにかみ笑顔で髪の乱れを整える。そこにいつもの声、あの言葉が聞こえドキッと心臓を、高鳴らせた。
「月、君は本当に――可愛いよ」
「んにゃッ!? ま、ま、また……」
(そんな風に、涼しいお顔でぇ)
――変わらない、優しくて低すぎない、星様の声。
そしていつも通りサラッと恥ずかしい言葉を余裕の表情で言う彼に紅潮しつつ、目の前で輝く深い深海の蒼い瞳から、目が離せなくなってしまう。
「……」
黙って見つめ合う二人の間に穏やかな風が、流れるように吹く。その心地良い時がいつまでも続いてほしいと思う気持ちを抑え惜しみながらもセルクは、三日月に話しかけた。
「月、今回の件。耐え難い苦痛を負わせてしまって、本当に申し訳ない」
その言葉に三日月はハッとした表情で驚き、口を開こうとするが、しかし。その隙を与えずにセルクはそのまま、話を続ける。
「僕にもっと、もっと、力があれば。君をここまで苦しめてしまうようなことにはならなかったと思うんだ。完全に、僕の実力不足で――」
「そんな……そんなことは、絶対にありません!」
三日月はベッドから立ち上がろうと動きながら必死で、答える。
「ありがとう、優しいね、月は。しかし事実、こうして三日も君を眠らせてしまうほどに、気力・体力を消耗させてしまったのだから。『大丈夫』と言った僕には、その責任が」
「いいえ! 記憶は無事に全て戻り、あとは私の努力次第で……それに目が覚めてからも、こんなに私は元気で――」
(……んっ、あれれ? 今……星様は、なんと?)
「月、どうした? やはり身体が」
一瞬セルクの言葉を思い返し耳を疑った三日月は頬に両手のひらを当て、十秒。ゆっくりと、瞬きを三回すると気持ちを落ち着かせ、セルクに聞いてみる。
「いえ、身体は大丈夫なのですが……あのぉ、星様。今、『三日も眠っていた』と、仰いませんでしたか?」
三日月の固まった表情に不思議な顔でセルクは、答えた。
「あぁ、うん。君は三日間、ここで眠り続けていたんだ」
「えっとぉ、三日間……って!?」
(えぇぇぇぇえぇー!!)
信じられないという思いからか今度は顔を両手で隠した三日月は、考える。
(ずっとここで、この場所で……この状態でいたということぉ?)
「三日月? 一体どうしたの?」
「星様。私……先日も大会後に気絶して、ラフィール先生にご迷惑を」
(あの日、ユイリア様との魔法勝負が終わった後も、私はここに!)
自分にほとほと呆れてしまいしょんぼりと情けなくなる、三日月であった。




