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135 受け入れた心の世界

お読みいただきありがとうございます(/ω\)

♪こちらのお話は、読了時間:約5分です♪


(Wordcount2230)


 忘れていた……いや、正確には消したいくらいに辛かった、あの事件。しかし思い出そうとしても断片的で、全ての出来事を思い出せない。今、三日月の頭に流れてくるのは紛れもない自分自身の、重く、激しい鼓動だった。


 その音はだんだんと大きく身体の内側から聞こえ始め広がり、耳鳴りのように響き痛くなってくる。膝をついた姿勢で耳を覆うように押さえる三日月の、ぎゅっと閉じる目からはじわっと涙が滲み、やがて零れ落ちた。


「耳が……い、痛いよぅ」

(私はいつから“音”に恐怖や痛みを感じ始めたのだろう)



――たくさんの人が集まる場所でのざわついた、音。

 文化交流会で戦った、ルナガディア王国第三王女である唯莉愛(ユイリア)と勝負した、魔法アーチェリー大会。あの時も痛みとなって襲ってきた人の大きな声、音。



(とにかく私は、大きな音が苦手? なのかな)

――でも今は? 音なんて鳴ってないし、大きな音なんて聞こえてこないのに。



「ど、して。こんなに……怖く、て……辛いの……かな」


 その恐怖心の原因、その根源がどこにあるのかを自分の心身に問いかけ答えを探していた三日月は、ハッと思い出す。最近()()見るようになった夢のこと――あの優しい声の存在を。


(そうだ、あの噴水広場で見た夢はいつもと違っていて……なぜか? あの声の人は、こう言ってくれていたの)


――「安心して、わすれていいんだよ」って。



「どう、し、て? あの時だけ……、忘れて……いいって」


(本当に私は、忘れて良かった出来事だったの?)



 その“わすれていい”という言葉が三日月の頭の中で、何度も繰り返される。今までずっと夢の中で追いかけて「待って!!」と叫びながら目を覚ました、朝。


 ただあのひんやりする【氷菓子の世界】ではゆっくりと、目が覚めた三日月。


「【オヤスミナサイ】……」

(あっ、そういえば耳……少しづつだけれど、痛みが緩和されてきた)


 何かに気付き、何かを思い返す(ごと)に整理されていく記憶。そして心奥(しんおう)から温かな光が射してくるような穏やかな気分になってきていた三日月は、落ち着きを取り戻しつつあった。



「三日月、頑張って乗り越えて! 前へ進むために!!」


 愛娘へ向けた強い魔力光と言の葉(想い)。しかし今の三日月には母の援護魔法を全く感じることはなく、言葉さえ聞こえていなかった。それでも望月はキラリの森を護る守人として、母として――自分の責任を果たすためにも力を送り続けた。


(私の記憶、失くしてしまった? あの日に忘れた……記憶(トラウマ)


 幼い頃に失くした、辛い記憶。どうしてそうなってしまったのかも知らない彼女の心身にこの時、強い意思が生まれた。


――大丈夫。もう、逃げない……逃げたくないから!!


「向き合うんだ、運命(さだめ)に」


 キラッ――――!!!!


 三日月の放つとても温かくて優しい光は彼女の周りを美しいベールがふんわりと囲むように、キラキラと舞い踊る。


 それは両親ですら見惚れるほどに、綺麗だった。



「月さんらしい意思表明ですね。煌めく花びらのような光が、ひらひら~と」


 その様子に「クスッ」と笑ったのは万が一、何か起こった場合に備えずっと傍で見守っていた、ラフィール。特に三日月の様々な“音”への感覚反応はずっと気にかけ、心配していたからであった。しかしこうして三日月から放たれた花びらのような柔らかな光を確認すると、安堵の表情を浮かべる。


「恐らくひとつの大きな難関を、みかじゅき~は超えられたみたいなのぉ~ん」


 ランスも同じく安堵の微笑みでふと、望月へ視線を送った。


「私の可愛い、可愛い三日月。よく、ここまで――」

(私の力はもう、必要なさそうね)


 望月は少しだけ表情を和らげ、口角を上げる。その顔は「もう、心配いらない」と、言わんばかりだ。しかしまだ少しだけ不安気な様子で差し伸べていた手を――魔力を閉じた。


 ふわぁっ……ギュッ。


「あら、ライトさん」

「望月、きっと三日月は……俺たちの自慢の娘なのだから、大丈夫だ」

(これからの運命(さだめ)に、立ち向かっていけるはずだ)


「えぇ、そうですわね」

「俺たちが迷うことはない。あの子を信じて、最後まで支えていくだけだ」


 三日月の心が『受け入れる』と覚悟した瞬間、自然と脳内で記憶復元の準備が始められていく。目を瞑ったままの三日月が視る世界――自分自身の心に現れた景色は、輝いていた。それは煌めく星のように散りばめられた記憶(ピース)がひとつの部屋に少しづつ、ゆっくりと、集まるイメージであった。まるで見たことのない星座が広大な夜空に示されるかのようにキラキラと、繋がっていく。



 そして。


 静かな暗闇の海に落ちた雫。

 目を瞑った世界で、視えたのは。


「波紋――?」




『ダイジョウブ。マモルカラ』

(あたなは一体、誰なの?)


『ナニガアッテモ』

(うん、ありがとう)


『ずっと、まもるから』

(知ってる、そっか。あの声は)



「ずっと、ずっと、気になっていたの」



『大丈夫、待っているよ』

(ずっと、待っていてくれたの?)


『うん、だから安心して……』

(ずっと、ずっと、その後に言った言葉が気になっていたの。でもどんなに考えても思い出せなくて)



「あの時に【オヤスミナサイ】って、その人は言って」


――うっすらと残る悲しい暗闇の中で怯える夢。そこから温かい光で手を差し伸べてくれる声、まるで透き通った水のような優しい安心できる声は。



――『絶対に護る。君には、仲間以外は指一本触れさせない』



 三日月が忘れているような気がしていた大切なことの答えは、桜の花びらがひらひらと舞うあの出逢いの日に、すでに解かれていたのであった。


いつもお読みいただきありがとぉございます♪

『 関連のあるお話 』


~☆今回はこちら☾~

 ↓ ↓

第63部分

【必話05 失くした記憶 (夢)】


噴水広場で居眠りをしてしまった三日月が見た、

いつもと違う夢のお話ですねぇ(´ω`*)


☆----------☾----------☆----------☾


また読み読み来てくださいまし~♪

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