134 過去と向き合うために
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「さぁ、ここから先のお話は……そう、三日月。あなた自身に決めてもらわなければならないわ」
それからすぐに優しい母の姿から、真剣な表情の望月に戻った。愛娘、三日月に向ける視線は強く――周りには瞬く間にキラキラの丸く柔らかな光が再度集まっていった。
(優しいのは変わらない、感じる力も温かい)
――でも目の前にいるのは、お母様じゃないみたいで。
「どうしてかな、涙が……私、どうしちゃったんだろう?」
ぽろぽろと頬を伝う、涙。
大好きな母に違いないと思う反面ざわつく胸の奥、そこから湧き上がる不安と恐怖に押しつぶされそうになる気持ち、その思いとこの感覚を。
――そう……私はよく、知ってる。
三日月の心はその母が放つ偉大な魔力に震え、未だ何色にも染まらないその瞳からは大粒の涙が、零れ落ちてゆく。
自分の尊敬する母が“ルナガディア王国の第一王女”と知ったからと言うわけではないが、母の強い力を今まさに目の当たりにしていることへの驚きと、これはどこかで経験のあるような景色だと思い、気付く。
その瞬間から歪みかけのような視界は三日月の力を徐々に、鈍らせていった。
「……うっ」
(あぁ、あの夢が? 辛いの。頭が鈍く、痛くなってきた)
――私は本当は知ってるの、何かを忘れているって……大切なこと。
しばらく忘れかけていた、あの夢。
そして『怖くて、淋しくて、暗闇の中で怯えていると、温かい光と共に聞こえてくる【声】』が響く、情景の夢。
あの飛び起きる朝と同じ。
三日月の心臓はドクドクと音を立て始めると胸がきゅーっと締め付けられるように苦しくなっていった。
「三日月!! この現実を受け入れる心力が、今のあなたにあると判断できれば……!」
忘れている何か――それはあの時に起きた事件の辛い記憶の欠片、そして誰なのか分からない【声】を無意識に心の片隅でいつも探し続けていた、想い。
「――うぅ……い、痛いよぅ」
様々な記憶と感情を呼び覚ますように苦しみ、頭を抱える三日月の姿。それを見ていたセルクはいてもたってもいられなくなり、思わず飛び出す。
「つ、つきッ――!?」
「セルク! 手を出してはいけない」
「うっ! あっ」
たった一言だけ、三日月の名を呼んだセルクであったがその一歩前に出るのと同時に、ロイズからの強い叱りを受けた。
「し、しかし、ロイズ先生!! あの、あのような……」
(あれだけ苦しんでいるというのに、僕には何もするなというのですか!)
「落ち着きなさい、セルク」
それは何とも言えない、怒りにも似た感情。その動揺を隠しきれない声色と表情を諭すように声をかけたのはセルクの母(今は光として映し出された姿)、ルナである。
「……かぁ……さ、ま?」
「さぁセルク、瞳を閉じ一度だけ深呼吸をして……冷静になるのです」
美しい肌と深海のような蒼い瞳で我が子を見つめるルナは「見えてくるはずですよ」と、美しく麗しき光の中で微笑んだ。その様子は白く透き通りまるで、天使のようである。
ルナの助言通り深く呼吸をしたセルクは、ハッと我に返り気付く。
本当は助けたい、今すぐにでも抱きしめて救ってあげたい! その思いを抑え目を背けることなく見つめる母。煌めく丸い光の中から三日月に手をかざし願いながら力を送る望月は、厳しくも愛に満ち溢れていた。
「そう……か」
(望月様は、月の記憶にある鍵を解くつもりでいるのか――?)
「セルク、落ち着いたようだね。そして賢い君だから、気付いたかな? 望月様自身が一番、お辛い」
「はい、理解いたしました。取り乱してしまい、大変申し訳ありませんでした。ロイズ先生」
「うん、セルクはどうも月さんのことになると、だね?」
「んなっ! そのようなことは」
慌てるセルクを少し揶揄うような仕草で人差し指を自分の口に当て「静かに」と、伝えるロイズ。
「コホッ……はい」
「フフッ」
ふと、小さく笑ったロイズの本心は。
(まさか、あの冷静沈着なセルクが。ここまで月さんに心を)
――今後、さらなる精神の訓練が必要なようだ。
そしてロイズとセルクの視線はルナガディア王国の未来を左右するであろう親子、望月と三日月の行く末を見届けた。
「三日月、あなたが『全てと向き合える』というのであれば」
(きっと、乗り越えられる! 頑張って、三日月!!)
望月の愛に満ちた“言の葉”は会議の部屋にいる皆にも波紋のように優しく、心の中に流れ込んでいった。
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『 関連のあるお話 』(/ω\)
~☆今回はこちら☾~
↓ ↓
第17部分【必話01 消したい記憶 (夢)】
三日月ちゃんの記憶の欠片が
垣間見える、夢のお話でする( ノД`)シクシク…
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