132-2 望月の真実(中編)
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それから式典までの三時間を一人、自室で過ごした望月。
父と母からの言葉に様々な感情をめぐらせていたが決意したその思いだけは決して、変わることはなかった。
「私も、お父様やお母様のように。この王国のために……」
コンコン、コンコン。
「は、はいっ!」
「望月様、お時間でございます」
部屋の向こうから聞こえてきたのは落ち着いた雰囲気と、抑揚のない声。
感情が相手に悟られないよう表に出さないように話す特殊な厳しい訓練を受けた、王宮関係者である。
(ついに、この時間が)
これから執り行われる、ルナガディア王国守護騎士の任命式典。その前準備のため、望月を迎えに来たのだ。
ガチャ、キィー……。
ゆっくりと開けた扉の前には独特の雰囲気で凛とした表情、金色キラキラな瞳をした人物が悠然と立ち、待っていた。
「お迎え、あ……ありがとうございます」
丁寧にお辞儀をする望月はこれから行われる任命式の時間が迫っていることを改めて感じ、ドキドキ。
「いえ望月様、恐れ入ります。では、ご案内いたします」
「は……ぃ」
(なんて綺麗な金色なの。って、あれ? 確かこの御方は――)
頬を少し桃色に染めその人物から漂う力と、美しい佇まいに見惚れ止まる視線。その様子に「いかがなされましたか?」と聞かれ、手のひらを自分の前でブンブンと振る。
「あ、えーと、いえいえ。あの……なっ、何でもありません! 本日は、よろしくお願いいたします」
その人物から感じる力に魅了されていた、望月。そんな自分に気付いた途端、なんだか恥ずかしくなり顔を隠す。
「そうですか? それなら良いのですが」
「ハイッ! えっへへ~」
(私ったら、いけない! あまりの美しさに黙って見つめちゃってたよぉ!!)
「それでは、参りましょう」
ドキッ――。
その言葉に一瞬で式典に気持ちは切り替わる。これから進んでいく自分の人生が決まる瞬間がもうすぐ訪れるという現実に緊張しながらも、望月の心は不安と期待が入り混じり、様々な思いが交錯していた。
「……お願いします」
そんな中でも彼女が持つ信念は揺らぐことなく、次第に落ち着きを取り戻す。
(これからがスタートなんだ! ファイト、私!!)
そう自分に言い聞かせるように「むんっ!」と口をきゅっと結ぶ。そして気合を入れるようにこっそりと胸の辺りで両手ガッツポーズをし、歩き出した。
キィー……パタン。
自室の扉が閉まる音に少しだけ寂しさを感じふと、振り返った。いつもより耳に響いたその音は少しだけ、不安を残す。が、望月は気持ちを入れ替えるようにゆっくりと瞬きをして、すぐに向き直った。
「大丈夫、大丈夫」
小さな声で呟くと緊張した面持ちで、部屋を後にした。
それからしばらくは案内役の後ろにつき、何も考えずボーっと歩いていく。
頭の中をリセットするようにゆったりと見渡す、景色や光景。それは見慣れた通路、窓から見える美しい草花や木々、心地良い音色のような鳥の声……。
望月の心は任命式典前とは思えない、信じられないほど穏やかであった。
「とても気分が良いわ。お母様が与えて下さった、魔法のおかげかしら」
不思議と少し前に感じていた不安はあっという間にどこかへ消えて、望月は幸せいっぱいの表情に変わりウフッと笑みを溢しながら、そう話す。
「えぇ、きっと。そうですね」
その姿を横目で見守る迎えの者も一瞬だけ微笑み言葉をかけ、望月の歩幅に合わせながらゆったりと前を歩く。
その声はとてつもなく甘く、優しく、そして柔らかい――そう、当時から王国内部と王宮の護衛をしていたロイズがこの時、望月の案内役だ。
「うふふ、ありがとうございます♪」
そして望月が案内された場所は――父との謁見をするための部屋であった。
◆
「こちらでございます」
「スーフゥ……よしっ! では、頑張ります!!」
望月は深く息を吸い深呼吸、再度胸の辺りでこぶしを作ると、気合いを入れギューッと握る。
部屋の前には厳重な警備魔法がかけられ、許可を得た者しか中への入室は禁じられている。今は案内役のロイズが放つ魔法とその一言で扉は、開かれるようになっていた。
「お心の準備は、よろしいですか? 望月様」
ロイズは金色の長い髪をなびかせ、ふわりと振り返ると少しだけ心配そうに気遣いながら、望月の様子を窺う。
「はい! 準備万端です!!」
しかし彼女は元気いっぱい!
不安感や思いは吹っ切れたかのようにニッコリと満面の笑みで、答える。そんな彼女の周りには美しい光の精霊たちが楽しそうに、躍り舞う。
(さすがですね。私の心配など、いらなかったようです)
その精霊が楽しそうに舞う光を見たロイズはフッと笑い穏やかに、ある指摘をした。
「――望月様」
「ん、ふぇ? はい?」
「とても素晴らしい精霊たちの躍りですが、しかし。ここから先、謁見中の精霊参加はさすがによろしくないかと」
「ん? あぁぁ!!」
気持ちがふにゃんと落ち着きすぎていたせいか、精霊を集め躍らせていることに気が付いていなかった望月は大変! と、自身の心を鎮め冷静さを取り戻す。
そして――――。
「望月様の、ご到着でございます」
ロイズのかざした手から出される星屑のようなキラキラと輝く光と言葉が合図となり、その重厚な扉は開かれていく。
――『【アスカリエス=ロイズ=天守空】を確認しました。入室を許可します』
ゴゴゴォォ…………。
「待っておったぞ、我が愛する娘、可愛い望月よ」
(皆様のいる前で、可愛いだなんて……お父様、恥ずかしいです)
望月は頬を赤らめ心の中でそんなことを思いつつ、口を開いた。
「身に余る光栄に存じます、お父様。本日はよろしくお願いいたします」
「うむ。さて、望月。先程伝えたことだが今一度、お前に問う」
「はい」
望月は父との大事な時間を、三時間前に話した時よりも深い思いを込めながら考え悩んだ思いを――自身の言葉で話すのであった。
お読みくださりありがとぉございます♪
三日月ちゃんの母、望月のお話は次話まで続きます。
えっ? もう分かったって?
でもよろしければまた読みに来てくださいネ( *´艸`)
いつも不定期更新ですみましぇん(m´・ω・`)m




