118 守護契約
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(Wordcount3400)
三日月の表情を見つつ、淡々とロイズは話を進めていった。
「月さんが生まれた日。あの美しい三日月の夜から、気付くと傍にいたという精霊、すなわちここにいるメルティのことですが――」
(メルルとティルは二人なのに、どうしてその呼び名……メルティって言うの?)
――私はずっと、気になっていたのです。
なぜそう呼ばれていたのか、三日月はロイズの話を聞きながら気付き理解した。
「私はその一粒の精霊に、これから妖精として月さんを護っていくのはどうか、と提案しました。ランス様のお口添えもあったおかげで、すぐに話はまとまり――」
三日月はメルルとティルがまるで遠くへ行ってしまったような、悲しい気分でロイズの話を聞いていた。
「そして私は、赤ん坊であった月さんの代わりに、可愛い光の精霊と守護契約を結ぶことになりました」
「本当は私が?」
三日月の言葉にロイズは、頷く。
無意識に……なぜか今にも泣きそうな顔をしている三日月は視線を外し時折、下を向いて気持ちを保つ。
その様子をロイズの後ろでずっと、無の状態で立ち見守っていたセルク。本当は心の奥から助け支えたい思いが溢れてきていた。しかし一切表情を変えることはなくグッと、自分の気持ちを堪えている。
「その後、光の精霊を人の形である妖精へと変化させることに成功はしたのです」
そう言うとロイズは三日月へニッコリと笑いかけ、自分の膝に乗るメルルとティルを両手で抱きしめた。優しい視線を向けられキャッキャッと喜び笑いはしゃぐ、可愛い双子ちゃん。
三日月は少し不思議な感覚と雰囲気を感じ、何とも言えない感情が心の中に押し寄せていた。
――怖い? 違う……この落ち着かない気分は。
ロイズの言った「決めていただかなければならない」という文字が頭を過ぎる。そう、それが今まさに伝えられる気がしたのだ。
「当時から魔法で失敗などあり得なかった私は、正直驚きました。一粒の精霊を変化させた後に現れた妖精は“二人”でしたので」
あっ! 自慢ではないですよ、んふふふ~と冗談混じりに話した。
「あ~はは……って、ロイズ先生。それは、どういうことなのでしょうか?」
(ヒトリが、フタリ?)
ロイズの笑いに乗っかり緊張しながらの笑顔な三日月。しかしすぐに「おかしい」と気付き、質問をする。
「すぐに妖精になりたての二人が、私に笑顔で教えてくれたのですが――」
その話は少しだけ難しく、それこそ一言一句聞き逃さぬよう注意深く、三日月は聞き始めた。
◇
〔妖精への変化と守護契約時の話〕
キラッ――!!
ロイズは右手を空へ向け、魔法を展開し始めた。
「我は、月の世界に遣い仕え使者、空を守りし【ロイズ=天守空】である。光の精霊よ、君に名を与え守護契約することを我は望む」
するとそれを聞いていた光の精霊は陽気な声で答える。
『ほぉ~、大妖精ランスは信頼できる相手での。しかし人の中でも話の分かる者がおるものだと』
三日月の傍にいつも寄り添っている光の精霊との契約内容は精霊自身が望んでいること、つまり三日月を護り傍にいること。
『護る』という双方の思いが合致していることで話は揉めることもなくスムーズに進み、光の精霊は妖精変化への契約をロイズと結ぶことに了承した。
『な~る……では安心して我の変化、天守空に任せようぞ』
赤ん坊である三日月の頬辺りでキラキラと輝きを放ちながら、契約承認の言葉を響かせる。
まだ一粒、光の精霊であった頃のメルル・ティルは、今の無邪気で天真爛漫な姿とは似ても似つかぬ口調で、話していた。
「では――『月の使者【ロイズ=天守空】より名を命ず』この者を、輝く一粒の精霊を人の形となる姿へ。その名【メルティ】として三日月を守護せよ」
『あぁ、言うまでもないな。もちろん誓おう』
精霊の発したその声を聞き、ロイズは微笑むと最後の言葉を言い終える。
「月の守護を……『契約』成立」
――――キラッ、パァァー!
妖精へと変化した姿を、楽しそうに見せる元、光の精霊は……?!
「なっ?! なぜ二人に」
(私としたことが……失敗をしたのか?!)
ロイズがお顔真っ青で妖精となった二人を何度も見返し見つめ、頭を抱えていた。その様子を悪戯な表情でキャッキャと笑いながら覗き込む二人。そして、慰めるように声をかけた。
「心配ないないのらぁ~!!」「自分たちで分裂したのぉ♪」
メルティ(=溶けやすく)と名付けられた光の精霊は瞬間、自分の意志で一粒から二人に分かれたのだった。
◇
「月さんには非常にお伝えしづらいお話があるのですが。実際は“一人”であったはずのメルティは“二人”に変化しました。すなわち力も半分で妖精化した、ということになります」
表情から気持ちを読み取るロイズは、ここまでの話を三日月が理解出来ているのか、冷静さを保てているのかどうかを、熟視していた。
そしてロイズは、三日月の心を感じる。
(三日月、しっかり! ここを堪えなければ、先へは進めない)
この状況で口を挟むことは出来ない周囲。ただただ横で応援をするかのように母、望月が想いを込めて温かい視線を送っている。
テーブルの先、少し離れた場所にいてもひしひしと伝わってくる三日月の不安定な感情にロイズの美しい柳眉は下がり、優しい目で三日月を見つめた。
(やはりまだ、早かったのでしょうか? 三日月様)
「もう少し、時間が必要のようですね」
そう諦めるように目を瞑りロイズは、呟く。
その数秒後、三日月の声が聞こえてきた。それはついさっきとは全く別の感情の色を帯び、まるで決意にも似た芯のある声と言葉がロイズの頭に響くと、明るい光が広がっていった。
――『力』は煌めき色付いて。まるで帯のように長く流れ、現れていく。
(私は何が何でも受け入れる。現実を受け入れて、前へ進みたいから!)
「……ロイズ先生。私、大丈夫です!」
ロイズは安堵したように下を向き微笑む。良かったと心の中で言い目を開いた。それから「では、続きを」と真剣な眼差しで、再び淡々と話し始めた。
「あなたを護るために生まれた光の精霊が、傍を離れずにいた理由。それは恐らく、あの大空高くに煌めく月の指示を受け生まれ、地上へ降りてきた精霊であるからです」
「月……ですか?」
――大空に煌めいている、あの“月”?
「ルナガディア王国にとって、月は偉大な存在です。その指示を受け思いを引き継ぎ生まれたメルティに義務を果たさせ、今後あなたと共に戦い、あなたを助けるための手伝いをすることが、私の役目です」
歴史の勉強もままならない三日月にとって、分からないことだらけである。煌めく月の存在の意味が、理解できずにいた。
「私が打診するまでもなく、メルティの思いは同じでしたからね。私が名付けた、メルティの名前通りに」
――待って。それって、まさか……?
「メルティ=溶け合う。三日月様にその身尽きるまで、命を懸けること。もしもの場合、要するにあなたに命の危険が及ぶようであれば。月の御加護を持つ三日月様の『力』に溶け込み、メルティの力で補うこと。そして三日月様を最後までお護りすること……」
「ま、ま、待って! 待ってください先生!! あの」
珍しく周りが見えない程に自分のペースで話し続けたロイズの話についていけなくなり、思わず止めに入ってしまった、三日月。
「三日月ッ!」
大事な話の途中、遮るような行動をとった三日月は厳しい口調の母、望月からの注意を受けると「いけない」と気付き、ハッと両手で口を抑える。
「ごめんなさ……あ、いえあの、申し訳ございません」
あたふたと謝罪の言葉を口にする三日月の慌てぶりに、笑って答えるロイズは自身が冷静さを失くしそうだったなと、自分の未熟さを感じていた。
「んふふ、こちらこそすみません。私としたことが……メルティのこととなると、ついつい熱が入ってしまいました」
(あっ……いつものロイズ先生。あのとてつもなく甘くて、優しくて、柔らかい声と、見惚れるオーラが見える)
――でも。
あまりお時間をかけ過ぎても、と最後はにっこり笑いながら話した。
「月の指示、目的と義務を果たすため」
――そのためにはメルルとティルは“一人”に戻る必要があると、私は考えています。
(そう、そうなんだ。守護ってそういう……)
「あ、私は……」
――エッ?! まただ。ロイズ先生から違う光が滲み出てきてる。
少し前にも感じたロイズらしからぬ奥深いオーラ。
一筋の暗色。
それを放つロイズの表情は、やはり寂しそうであった。
いつもお読みいただきありがとぉございます♪
『 関連のあるお話 』とまでは今回いきませんが
にゃにゃん(=^・・^=)!!
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第9部分【06 緊張】
ロイズ先生の『甘く優しい雰囲気』が
見れます♡ 笑
今後ともよろしくお願い致しまするにゃのぉ♪
ではぁ~次話もお楽しみにぃ~☆




