117 必要な存在
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♪こちらのお話は、読了時間:約7分です♪
(Wordcount3070)
「ロイズ先生は、私がこの学園へ入学するより、ずっと前から?」
三日月は記憶の欠片を集めるように頭をフル稼働させていた。思い出したくない、思い出せない、でも思い出さなくてはいけない。
――思い出すべき、“記憶”
「えぇ、そうですね。月さんのことはもちろんですが、光の森キラリの守人である望月様のこと、そして以前はこの王国で知らぬ者はいない程に活躍していた、王国騎士であったライトのことも――」
「いや! おいロイズ、そんなに持ち上げんでくれ。何も良いものは出ないぞ」
ロイズのちょっとした褒め言葉にライトが恥ずかしそうに反応する。
「またまたご謙遜を……ふふっ」
「こらこら! あの頃の話は言っておらんのだ。三日月にはな、俺は優しい父のままでいたいのだよ」
そう言いながらほっこりとした表情で三日月の顔を、愛の眼差しで見つめる父、ライト。その強い視線を受ける三日月は「えへ……優しいネ」とタジタジである。
(いえお父様……子供の頃にご指導いただいたあの訓練は十分、じゅ~ぶんッ! 厳しかったと思うのですがぁ)
それでも普段はデレデレな父に可愛がられていたことに変わりはない。三日月は「本当の厳格とはこういうことなのかな?」と、ふにゃっと力なくライトに笑顔を返し、なんとなく納得した。
その後はランスも加わり、なぜか談笑のように語り合っている大人たち。それをぼーっと見つめていた三日月はふと、ロイズの表情の変化に気付く。
「……ロイズ先生?」
誰にも聞こえないくらいの小さな声でポツリ。
(皆どうして普通なのかな。感じているのは私だけ?)
――どうして今、先生はそんな寂しそうな顔をしているのですか?
それは哀愁すら感じた。いつも放たれているあの美しくキラキラと輝いたロイズのオーラではない、じわりと滲み出てくるような初めて見る光。その奥深くに隠れた、一筋の暗色。
三日月の無に近い視線に気が付いたセルクは、神妙な面持ちになる。そしておもむろに椅子から立ち上がり、ロイズに顔を向けた。
「あぁ……そうだね。ありがとう星守空、ここへ」
「はい――」
また合図を送るように目を合わせる二人。その様子に違和感を覚えつつ心配そうに見つめる三日月。
そして呼ばれたセルクは返事をするとロイズの元へ歩き出した。そのゆっくりとした足取りには、部屋の中では流れるはずのない心地良い風を纏っている。その優しく不思議で癒やし溢れる空気が三日月の不安な気持ちを、包み込んでくれた。
ロイズの椅子まで辿り着いたセルクに、メルルとティルがキャッキャと手を触れていた。が、しかしその表情は冷たく、固い。微動だにしない姿はまるで心に鍵をかけ閉ざしているかのようだ。セルクは静かに、ロイズの左後ろで待機の姿勢で品良く立っている。
「星様も、ロイズ先生のところに」
三日月はゆっくりと目を瞑り瞬きをすると、少し遠くに行ってしまったセルクの蒼く綺麗で少し潤んだ瞳を見つめた。隣で並ぶ美しいロイズとはまた違ったその横顔は、自分の近くを通り吹いた心優しい風とは裏腹、いつも以上に冷たく感じる。
――今はまるで氷のように冷たく感じる。一切触れるなと言っているような星様。
「さて月さん、メルルとティルのお話にはもっと深く……深い話があります」
「は、はい。お願いします」
この時、先程ランスから囁かれた言葉が頭を過ぎる。思い出した三日月の心臓は周りに聞こえるくらいの音を立て、ドクンドクンと鳴り始めた。
――――『心の準備をするのなぁん』
(ランス様の声が、頭の中に響いてくるよ?)
少し辛いような気持ちになり、少しだけ耳が痛い……そんな気がした三日月は自分の耳を手のひらで被せた。
「……うん、ラフィールがお茶の準備を終え戻るまでは、まだお時間がありそうですからね」
ロイズの穏やかに、いつもの優しく甘い声で淡々と話し始めた。
「月さんがお生まれになって一週間後でしたか、私がキラリの森に呼ばれたのは。理由はこれからの会議でお話する内容、それともう一つ。あなたの傍を離れずにいるという可愛い光の精霊を、人の形――いわゆる妖精へ変化させるかどうかを、直接見て判断するためでした」
当時、大妖精であるランスから認められ『守護精霊として送られた光』との診断を受けた、三日月の傍で光り輝く強き精霊。その最終決定と妖精への変化を任されたのは七人の守護騎士でもある、王国内部と王宮の護衛をするロイズであった。
「その精霊がメルルとティル。だからずっと傍にいてくれた。私を護るため、義務を果たすために……。一緒にいてくれたということですね」
少し静かな声で理解していることを伝える三日月。その言葉は何だか寂し気だ。
「月さん、勘違いをしないように。この子たちは精霊の姿であったあの頃から、あなたのことが大好きで離れたくない。何を言われようと、何をされようとも絶対に離れない。ただ対話をしようと試みた私へ、その強い力で言ってきたくらいです」
そう言うとロイズは笑いメルルとティルにふわっと手を伸ばし、頭をナデナデする。その優しさに二人は「ふにゅ~♡」と気持ちよさそうにしている。それから三日月に視線を戻したロイズの話は、続く。
「あなたがこの世に生を受け生まれた瞬間から、この子たちには『月さんが必要な存在』であり、また月さんにとっても『メルティが必要な存在』であるということ。そのあなた方の強力な想い――これは私たち誰の力を以てしても、変えることは出来ないのです」
「……そう、ですよね」
(そうだよ。何を思って、寂しがっていたの? 私にとって二人は、大切な友達で、大切な家族で)
――まるで、身体の一部のように。何でも分かる存在なんだ。
「そうです。そしてあなた方三人が持つ強い繋がりは恐らく、この子たちの三日月形のような痣と、月さんが力を発動した際に現れる右手の紋が関係するものと思われます」
「え……っと、私の右手に現れる紋は、珍しいものだったのですか? てっきり私は皆、身体のどこかに現れるのだとばかり思っていました」
自分が特別な力、周りよりも強い魔力・能力を持つということに薄々感じていた。しかしそれがどういうものなのか、何なのか? 三日月は知らされることなくキラリの森で大切に育てられてきたのである。
――怖いよ……でも知るべきで。自分を知りたい!!
「ここからは会議内容に触れます。その前に月さんには、決めていただかなければならないことがあります」
三人が持つ強い繋がり。その意味深長な言葉を残しながら一旦、別の話をし始めたロイズの表情は重く厳しく、それでいてなぜか悲しそうにも見える。様々な心情が交錯する中、三日月の心臓はドクドクと鳴りやまないままであった。しかし前へ進むためにも、意を決してその話を受け止める覚悟をする。
「ロイズ先生、私は自分の記憶に向き合い、前を向いて歩いていきたい。ですので、言って下さい!」
――三日月様。お強くなられた……本当に。
ロイズは心の中でそう呟くと、表情は一変。鋭い視線と声で、話を切り出した。
「ゆっくりとお話します。よく聞き、そしてよくお考えいただきたい」
「はい」
一度、深呼吸をする三日月。そして輝きの戻ったその瞳は真っ直ぐとロイズを見つめる。しっかりと目が合ったロイズは、一瞬だけ微笑んだ。
「まず月さんの傍を離れなかった精霊の光、それは一粒でした」
(一粒?)
「え、でも」
「そう。メルルとティルは二人、しかし元は一粒の精霊だったのです」
「……」
ロイズの言葉に驚く。しかしその気持ちを隠そうと三日月は黙ったまま、テーブルの下で両手を組みギュッと、握り締めた。
お読みくださりありがとぉございます♪
『 関連のあるお話 』(´ω`*)
~☆今回はこちら☾~
↓ ↓
第74部分【64 文化交流会2日目~繋がり~】
メルルとティル。
可愛い双子ちゃんの説明がされたお話でしゅ( *´艸`)
セルクとの関係にもすこぉしだけ触れています☆
それでは次話もお楽しみに~♪




