109 銀の砂時計
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三日月は、先日お茶会で楽しい時間を過ごした部屋へ案内された。窓近くにある置き時計は、変わらず不思議で綺麗な動きをしている。
(今日も金の砂……キラキラだぁ)
少し遠目に、ふと窓から差し込む陽の光に目を細めながら時計に見惚れていた。すると三日月は、ラフィールから手招きをされ近寄る。
「さぁさぁ~、月さんこちらへ」
「は、はい」
近くまで行くと、金の砂時計の前に立たされ――優しい光、陽の温もり、キラキラの砂が舞う姿……今、三日月に様々な喜びの瞬間が訪れていた。
(こんなに間近で、金の砂時計を見られるなんて!)
そんな幸せな時間も束の間、ラフィールの声で現実へと引き戻される。
「ではこれより、本日のお呼ばれ場所へ移動いたしますね。月さん、心の準備はよろしいですか?」
やんわりと、しかし少しだけ固い口調で話すラフィールの言葉に、三日月は気が引き締まった。
そうだ、これからどこに――。
(何があるのだろう?)
しかし、考えていても何も分からないし始まらない。三日月は「よしっ!」と自分に声をかけ、決意表明をする。
「大丈夫です。が、頑張ります!」
それを聞いたラフィールはクスッと少しだけ笑い「そうなのですねぇ?」と一言。そしてそれは、一瞬の出来事だった。声と同時にそのまま三日月は抱きしめられ、大きな強い光に包み込まれた。
「ふあぁ、エエッ……」
白く光り輝く視界以外はもちろん何も見えず、魔法移動を行っている感覚もなかった。そして次に現れた目の前の風景を見て、三日月は驚く。
「こ、ここは?」
ギィィィ――。
開く扉の音がやけに重たく、三日月の耳に痛く響いていた。そしてその先に見えた真っ直ぐと伸びる通路は、とても薄暗く物悲しい。
(ここはどこなのだろう? 冷たくて静か過ぎる。心が締め付けられるような気分になる)
重厚感のある扉を入ってすぐに、五角形の小さなテーブルがあった。その上には、ここへ来る直前まで見惚れていた金の砂時計に、とてもよく似た時計が置いてある。よく見ると金砂ではなく『銀の砂』。
しかし今、三日月の瞳にはなぜかその銀砂の色を、映し出すことが出来なかった。
――どうして? 不思議と色が見えるけど……見えない?
矛盾している。この空間がおかしいのか? 三日月の目がおかしいのか? 輝きを失ったかのように静かに寂しく落ちていく銀砂が、ひっそりと時を刻む薄暗い場所。ここは三日月にとって生まれて今まで来たことのない、全く知らないような世界の雰囲気だった。
ふわぁ~……ッ!!
「あっ、あれ? ラフィール先生、どこですか?」
――お願い、一人にしないで!
三日月の身体に、一気に押し寄せてきた恐怖心と不安は、震えた声と言葉になって表れた。あんなに一人で過ごす時間が好きだと思っていた、三日月の心の奥に眠っていた感情。
(本当は私、一人が怖かったの?)
三日月の呼ぶ声に振り返ったラフィール。気付くともうだいぶ先まで進んでいた。そして言葉を発することなく、ゆ~っくりゆっくりと……ふわ~りふわりと。その美しい右手を使い、三日月に手招きをしている。優しく不気味な程に満面の笑顔は、まるで「おいで、おいで~」と言っているようだった。
(良かった、先生いたよぉ)
ホッと、心から安堵する三日月。急いで追いつき、恐怖心を忘れ気にしないよう明るめの声で話しかける。
「すみません、ぼーっとしていました」
「…………」
しかしなぜか? ラフィールはニコニコと微笑み頷くだけで、決して声を出さない。
「え、えっと――」
先生どうしたのかな? と不思議に思いながらも、その理由を聞く隙を与えずに歩き始めた。先が見えないくらい奥まで続いている暗く長い通路。見ているだけで震えがくる怖がりな三日月は、ラフィールの後ろにぴったりくっつくように進んで行く。
(そういえば……)
不安の種となっている問題のひとつ。それはいつも自分の周りで見守ってくれている精霊たちの姿が、ここに入ってから光一粒も見えない、ということ。
――最近の私、精霊ちゃんたちを見失うことが多いなぁ。
自分の力が弱っていて見えないだけなのか? はたまた見られなくなってしまっているのか? どちらにしても精霊がいない環境は、三日月にとって耐えがたい状況だった。
「なんだか、寂しいな」
そう小さく呟き、悲しい気持ちになってしまう三日月。慣れない場所に戸惑っているせいもあったが、この暗い雰囲気にのまれそうになっていた。
(ダメだよ、闇にのまれちゃう)
とにかくラフィールと、はぐれないようについて行こうと前を向く。寂しさや思いが溢れないように「前に進む」、それだけに集中した。
そうこうしているうちに、次の入り口であろう場所へ到着した。見た感じは扉も何もない石のような壁。どうも様子がおかしいと、三日月の心には不安が過ぎっていた。
(あれ、どういうこと? ……行き止まりなの?)
冷たい印象の壁は、石なのか? 固く重厚そうに見える。どこを見渡しても段差なく、ツルツルと輝いていた。そう、それはまるで姿が写る鏡のように。
見たことのない程に、美しい。
――魔法のせいかな?
ここには何も感じない『無』と、綺麗に澄んだ空気。美しいその壁には触れてはいけない、触れることは許されない。三日月はそのことを無意識に感じていた。
「あ、これって……」
同時に、間違いなくここは入り口だろうと確信していた。なぜか? その理由は入った時と同じ五角形のテーブル、そして時を刻む銀砂の置き時計があったからだ。
すると、ラフィールが振り返り三日月に笑いかけてきた。とても優しく、心に語りかけてくる。しかし、強い意思と決意が伝わってくるかのような、鋭い視線。
――そして次の瞬間、それは始まった。
『我、月の世界に遣い仕え使者、月の癒しを継ぐ者【ラフィール】が命ず』
『開錠』――――キラッ、パァァー!
「ふ、えぇ? ら、ラ、フィ……ル? せん……せい?」
◇
光溢れるその光景はあまりに美しく、私は言葉を失った。
その時見た先生の姿は『月の癒し【ラフィール】』とは。
――「まるで、それは天使のようで」
背中に広げられた大きな光は、本当の羽のようだった。
いつもお読みいただきありがとぉございます♪
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~☆今回はこちら☾~
↓ ↓
第36部分【28 文化交流会2日目~護衛~】
ラフィール先生のお部屋にある金の砂の置き時計の
様子が書かれていまぁす(笑)
あと!
こちら新タイトルの候補です(*´▽`*)
⇒『三日月の花が咲く夜に』
まだ少し悩み中(笑)なのなのデス(/ω\)
ではでは! 次話もお楽しみにぃ♪




