105 時空魔法
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――ずっと? 眠り続けているだなんて。
【悪】が放った何らかの魔法によって眠り続け、目を覚まさなくなってしまったという、イレクトルム王国第一王女、陽向。
太陽に妹がいた事は、絵画を見て初めて知ったばかりの月。もちろん、話した事も会った事もない、しかし絵の中で微笑む可愛らしい姫君の存在が、なぜかとても気になり頭から離れない。居ても立っても居られないような気分に苛まれた月は、助けられなかったのはまるで自分のせいではないか? とまで思ってしまう程に、感情移入していた。
(もしかしたら私の記憶に……過去にも、関係があるの?)
三日月が幼き頃から抱く【悪】への恐怖心。そしてあの日遭った、思い出せない『時間』の記憶が眠る心の奥深くで、何かざわざわとした気持ちが、三日月の中を騒いでいた。
「ひなたん?」「ひなちゃあ?」
「「今どぉしてるの??」」
沈黙を破ったのは、メルルとティルのふわっとしたいつもの声。二人も陽向の事が気になり、何より今どうしているのかが心配で、聞いたのだった。すると即時、その質問にはタイトが答え始める。
「私がお答え致す。眠り続く陽向様のお身体を守るため、避らず時空魔法を施しております。ゆえに姫は、目を覚ますまで状態を保ち休んでおられるのです」
「時空……魔法?」
「はい、この時空魔法とは個人の実力差がありますが。私の場合は、生き物の生存時間を止める事ができ、此は歳を取らぬ、陽向様はいわば永久保存状態にあるという事であります。しかしながら、この魔法を使用するには、ある御方の許可が要ずものであり、それゆえ許されし者のみの証とし、これを持ち得ること――」
そう言うと、タイトは腰に付けた懐中時計を見せた。それを見た月は、ふとある事に気付く。
――あれ? 星様も、あの時計を付けていたような。
(という事は、星様も時空魔法を……?)
「今でこそ、護りの力を強く持ち、どの国よりも目されるイレクトルム王国でありますが、かつては平和が……そう、平和な時代が続き過ぎた。ゆえに国を護るべき騎士や魔法隊、皆の士気は緩んでおりました。その犠牲となった陽向様を、何とかお護りするため」
澄み切った空気とともに流れるタイトの声。落ち着く優しい時間の中で話された真実。月の心には、ますますあの綺麗な絵に込められた太陽の想いが、ひしひしと伝わってきていた。
――苦渋の決断でありました。
タイトの発した言葉を最後に、再び静まり返った部屋。しかしすぐに落ち着きを取り戻した太陽が、月たちにお茶を飲むよう勧める。そして一緒に運ばれてきていたお菓子を渡しながら「イレクトルムで有名な菓子でな! うまいぞ」と、沈んだ雰囲気を少しでも明るく和ませようと振る舞った。
(太陽君、無理しなくてもいいのに)。
月は楽しく笑いながらも、心の中ではそう思っていた。
いつの間にか穏やかな空気に包まれていく時間。そうこうしているうちに、空はすっかり夕日色に染まりかける。その様子に、時刻を確認したタイトが口を開く。
「失礼致します、片夕暮れ時にございます。皆様の事は、私が責任をもってお送り申し上げます。ご安心下さい」
タイトは月たちへ「寮までお送りします」と、伝えた。
「三人とも、今日は急に悪かったな。話も、ちょい半端な感じになっちまった! ははっ、本当に悪い。でもな……今日俺が伝えたかった事は話せた、な」
「悪いだなんて、嬉しかったよ! こうして早めにお話してくれて。だってもし、いきなり明日帰る~とか言われたら、私たちきっとショックで倒れちゃうよ?」
悲しい気持ちを隠し切れない月が、作り笑いをしながら話した。するとその空気を察したのか? はたまた、何にも考えていないだけなのか? メルルとティルははしゃぎながら、面白可笑しく月に同意する。
「「そーだそーだぁークリームそ~だぁ♪♪」」
ヨシッ! 台詞決まったーッ!! と言わんばかりに、自慢気な表情でフフ~ンとしている二人。
「そうかって、おいっ! メルルちゃんティルちゃん? そりゃ~なんだい?!」
メル・ティルの、可笑しな言葉によって太陽の真面目な声は、また一気に笑う声に変わり、そして四人で大笑いをする。肩の荷が下りたように気付けば太陽は、白い歯を見せてニカッ! と笑える表情に戻っていた。
「あっはは、なぁんかダメだなぁ。俺もまだまだって事だ! しんみり~は似合わねぇよな! 本当、お前たちと出会えて、仲間で良かったとつくづく思うよ」
「エーッ? そんなに面と向かって言われると、なんだか恥ずかしいよぉ」
月はそう話し、太陽の顔がいつもと同じ明るく笑っている事に安堵していた。
そんな太陽は、屋敷の出口まで三人を案内しながら「まぁまだ二、三ヶ月はこの国にいるだろう。学園にはもちろん行くし、よかったらまたいつでも家に遊びに来てくれ」と、名残惜しそうに話す。
そして別れ際にもう一度、太陽からお礼の言葉が伝えられる。
「んじゃあ改めて、心より感謝だ」
「「「ふにゅー???」」」
ポン、ポン、ポン! とメル・ティル、そして三日月の頭に優しく触れた太陽は、満面の笑みで言った。
――「三人とも、ありがとうな」
「「キャッハー!! うれしにゃふ~」」
ポンポン! してもらえた事が嬉しいメルルとティルは、今日も可愛くハモって抱き合い、喜びを表現する。
そして、月も密かに心の中で嬉しさを感じていた。
(にゃは♪ 頭ポンポンしてもらっちゃった!)
「じゃあ、また明日ねぇ~」
「たいよん明日~♪」「また明日ぁ~ん♪」
「おぅ! タイト兄、頼んだ。三人とも気ぃ付けて帰れよ」
「承知いたしました……えー、太陽様。“兄”はお止め下さい」
変わらないタイトの冷静な念押しに、太陽は「参ったな」の、お決まりポーズで頭の後ろに右手を持っていく。その様子に三日月、メル・ティルの三人はまた大笑いをし、太陽の御屋敷を後にした。
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~☆今回はこちら☾~
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第100部分【88 渡したいもの 】
にゃにゃ(=^・・^=)星様も懐中時計で時間を確認?!
今後ともよろしくお願い致しまするなになのニャ!!
ではぁ~次話もお楽しみにぃ~☆




