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104 太陽の目的

お読みいただきありがとうございます(*uωu*)

♪こちらのお話は、読了時間:約6分です♪


(Wordcount2880)


「継ぐと言ってもまぁ、まだまだ研修期間ってやつだがな」

 はっはと笑いながら、太陽は陽気に話す。


「たいよん帰るんるん?」「王子さまだふ~!!」


 メルルとティルは、ほほほ~っ♪ と、なぜか楽しそうに返事をしている。そんな和やかな雰囲気の中、三日月だけが静かに太陽の顔を見つめていた。


「おっ? どうした~月? 驚きすぎたんか?」


――太陽君、無理して笑っているみたい。


 そう感じた瞬間、月は「自分だけじゃない、きっとみんな分かっていて、寂しい気持ちは一緒なのだ」と、気を取り直して明るく話し始める。


「……あ、えーっと! す、すごいねぇ♪ 王子様だねッ」


(あぁ~ごめんなさい。今の私には、これが精一杯だよ)。


 その言葉を聞き、太陽が向けた笑顔は、眉を下げ、悲しく寂し気に見える表情。そして月もまた、ぎこちなく話す姿。お互いに無理をして、気を遣いながら会話をする様子を見ていたタイトが、おもむろに口を開く。


「太陽様にお伝え申し上げます。三日月様はこちらへ参るまでの間、多数の絵画を御覧じ入り、大変気に入っておられ、()てまた“陽向(ひなた)様”のお話も、(わず)かなり――」


 それを聞き「そうか」と、少し曇ったような顔、深刻で暗い表情を見せる太陽。それから背中を押されたかのように、らしくもなく淡々と、話をし始めた。


「三日月、そしてメルル、ティル。俺がなぜ? 途中スクールへも行かず、十三の頃に母国を出て修行の旅へ出たのか。もちろん自分の力をより高めるためというのもあったのだが、真の目的は何だったのか? まずはそこから話そう」


「……修行? 旅?」


 月にとって、太陽の話す言葉一つ一つが、疑問の連続だった。それもそのはず、ほんの数日前までは、面倒見の良いクラス皆の人気者なお兄ちゃん的存在。しかし文化交流会の日に全てが変わってしまった。


 そう、初めて知った太陽の出身国や身分。そしてなぜ? 二十歳を過ぎた隣国の王子様が、此処、ルナガディア王国のスカイスクールに(しかも一般クラスに!)通っているのか? 何も知らない月が驚くのも無理のない話。


「あれは、十二の頃……そうだな。今ぐらいの季節だったな」


 太陽は、物思いにふけるように厳しい表情のまま、本題を語り始めた。



〔太陽の話〕


――実力を身につけ能力を高めるため、十三歳で両親の元を離れる決意をし、修行の旅に出た太陽。それから八年間、様々な国へ行き経験を積んだ後、ルナガディアの学園へ入学した。


 しかし、その背景には『愛する妹、陽向の存在』があったのである。



【イレクトルム王国、別名:太陽の国】

 どこよりものどかな国と称されていたイレクトルム王国。そんなある日、平和な時代が何百年も続いていた国に、歴史的な事件が起こってしまう。


 良くも悪くも、優しく、温厚で、穏やかな人間ばかりの、幸せいっぱいの王国、イレクトルム。そこに空いた(ほころ)び、ほんの一瞬の気の緩み。その()()に付け込んできた者たちの攻撃。これがイレクトルム王国侵略未遂事件である。


 攻撃を仕掛けてきたその者たちとは、幼い頃の三日月が森で遭遇した、トラウマの原因となるあの事件と同じ――【悪】の侵入によるものであった。


 もちろん、イレクトルムでも、国を護る軍、騎士たちの存在はあった。しかし、あまりにも平和な時代が続いていた事が、国民だけでなく、軍の士気をも緩ませていたのだろう。元々イレクトルム王国は、魔力の強い人間が少なく【悪】の侵入を許してしまった時点で、敗北は確定していた。そのため、侵入されぬよう入り口を強い力で固める事が、昔から他国よりも必要とされていた。


「十二の頃だ。戦いとなった街へ……王宮の外へ出る事を、俺は許されなかった。まぁ当時の俺では、行ったところで足手まといになるだけだったからな。それから随分と後に国王である父から聞いた話だが『もうこの国は駄目だ』と、そう心が折れかけていたところで、ある数人の騎士に助けられたのだと聞いた。その組織は」



――『ルナガディア王国守護騎士である七騎士、通称【ラビット】』



 彼らの活躍により、イレクトルム王国は救われたのだという。しかし、ただ一つ間に合わなかった、助けられなかった人、それが。


「イレクトルム王国第一王女。国の大切な……俺の大切な妹……」


 命は取られなかったものの、【悪】の持つ異常魔力による何らかの魔法を受け、太陽の妹“陽向”は眠ったまま目を覚まさなくなった。


 この話で月はハッとし、そして気付いた。


 あの時、可愛い女の子が描かれた絵から伝わってきた矛盾の気持ち。愛を感じ、しかし、何だか切なく、胸が締め付けられるような、辛い感情。胸が熱く、苦しくなるような感覚……色んな心が交錯してしまった理由を、理解したのだった。


「情けなかったさ。自分は大切な妹を守る事が出来なかった上に、どうすれば元に戻せるのかすら分からない。そう思った瞬間、俺の心は決まっていた」


 ルナガディア王国の助けもあり、イレクトルム王国の立て直しは一気に進んだ。そして一年後には国の九割が復旧、両国の関係はますます強きものとなった。


 その頃に太陽は、修行の許可を国王に申し出る。即戦力となる実力を身につけ、能力を高め強くなり、国を護れる力を持ちたい! と、決意表明をしたのだった。王子の堅い意志を受け止めたイレクトルム国王は悩んだ。これ以上、自分の愛する我が子を危険にさらしたくないと思ったからだ。しかし、関係者との審議を重ねた結果、親としての心痛な思いをグッとこらえ、イレクトルム王国の未来のためにと、条件付きで送り出したのだという。


 当然のことながら、警護(監視役)は、タイトが務める事となった。


 そしてもう一つ。この修行の旅には、太陽の目的があった。


「あの日……必ず、陽向を回復させる方法を見つけると誓ったんだが、な」


 様々な国を巡り、宣言通り強い能力を身に付けていった太陽。しかし、どの国へ行っても、多種多様な能力の者に出会おうとも。陽向にかけられた魔法が何なのか? どうすれば元に戻せるのか? 集められた情報は乏しく、どの話も信憑性に欠けていた。そして――解決には至らなかった。


 旅をして八年。自分の中に眠る、潜在能力の多くを覚醒させた太陽であったが、やはりイレクトルム国の人間の特性なのか? 魔力の上達が今一つで悩んでいた。それを鍛える目標もあり、そして陽向の治療へ繋がる情報がないか? 最後の望みをかけ、一年前に此処――ルナガディア王国の管理する、王国随一の魔法科のあるこの学園に入学を決めたのだった。


 しかし、現実はそう上手くはいかず。「必ず助ける」と誓った思いや願いは、今の自分には叶えられそうにない事実を、太陽自身受け入れ始めていた。


「俺は結局、陽向を……」


 その言葉を最後に、沈黙の時間が流れる。


 しばらく、ゆっくりと時間が流れるのを感じた月。声を詰まらせてしまった太陽に変わり、後ろから安心感のある、落ち着く低い声が聞こえてきた。


(しか)して、イレクトルム王国は……(これ)により、長きに続いた泰平の夢を破る大事に遭ったのでございます」


 タイトのまっすぐと透き通った声の哀情が、心に沁み入ると、話は静かに締めくくられた。


いつもお読みいただきありがとぉございます♪


『 関連のあるお話 』

~☆今回はこちら☾~

 ↓ ↓

第62部分

【53 文化交流会2日目~変わらないもの~】

太陽君について書かれた部分のあるお話でございまする(´▽`)


今後ともよろしくお願い致しますm(__)m

次話もお楽しみにぃ~☆

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