97 フェネの力
お読みいただきありがとうございます(◕ᴗ◕✿)
♪こちらのお話は、読了時間:約5分です♪
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三日月は、タイトの案内で客間へと向かっていた。
長い長い御屋敷の廊下を歩いていく。
綺麗な色のタイルで続くその道は、とても静かだ。
しかし、窓から差し込む光のおかげか冷たい感じはなく、むしろ心が落ち着き、ほわっとあたたかな雰囲気が、この場所には漂う。
――あれ?
(静か……そして、タイト様の足音も静か過ぎて)。
訓練すれば? それとも能力だろうか? タイトからは無駄な気や音を全く感じない。そう、優しく笑っていたアイスクリーム屋店員の姿でも、付け入る隙を与えないような守り。そして足音はやはり聞こえない。
――『貴方は、まるでゴーストのようだ』
(うわっ……)。
月はなぜか? このタイミングで、嫌な気持ちを思い出してしまった。あの噴水広場での出来事、ラウルド理事長のひと言を。
自分を護ってくれたタイトを“ゴースト”と言った、ラウルドの表現があまりにも心無く、普通ではないと感じていたからだ。あの時に発せられたラウルド理事長の台詞は、月に恐怖心と不快な感情を植え付けていた。あの声、周りを嘲笑っているかのような口元は、不信感を抱かざるを得ない。
「あぁ……」
(やっぱりちょっと、理事長様は苦手だなぁ)。
「三日月様? いかがなさいました?」
ふと、考え込んでしまった月に、歩きながら振り返る事なく問うてきたタイト。いつもと変わらない淡々とした口調だ。しかし心配している事を思わせる言葉に、月は慌てて顔を隠すように、両手をぶんぶんと振って答えた。
「ほぇっ? あ、いえいえ!! 何でもないのです」
「そうですか」
それなら良いのですがと、一瞬だけ月をさらっと流し目、また歩き出す。
(び、ビックリしたぁ!!)
月はとても驚いていた。
自分が小さく呟いた声が聞こえていたのか? もしくは気持ちが顔に出ていて、困り顔の眉が下がっているのを見られたのか? どちらにしても、自分に背を向けていたはずのタイトが、見えていないはずの変化に気付き、配慮してくれたのだ。
ふと、その疑問を解決したくなった。そして、月は好奇心の赴くまま、感じた事を率直にタイトへ質問していた。
「あ、あの! タイト様。この間も思ったのですが……そのタイト様の御力? と、申しますか。えーっとですね。とても! 研ぎ澄まされている感覚が――」
そこまで話したところで、月はハッと気付いた。宝石のようなアクアマリン色の瞳が、こちらをじっと見つめている事に。
――なんて澄んだ瞳、それに皴ひとつない綺麗な肌なのだろう。
月は、タイトの容貌、視線、立ち姿に、一瞬で見惚れてしまった。タイトの放つオーラは強く、話していたことすら忘れさせてしまう。それは怖いという気持ちではなく、圧を受けているというような感じでもない。
ただただ、タイトに見つめられているだけで魅了され、心奪われていくように、身体が動かなくなる感覚を覚えた。
(なんだろう、この気持ち。それに不思議と優しくて、温かな視線)。
時が止まったように固まっている月に、タイトは「どうなされた?」と、聞く。そして、様子を気遣いながら話しかけた。
「三日月様がご関心ありますれば、私の身上は何なりとお答えしましょう」
そのタイトの冷静な声で、ハッと我に返る。そして急ぎ答えた月の声は裏返り、そうして恥ずかしくなり、小さくか細くフェードアウトしていった。
「え?! あぁ……ありがとう、ござぃ……」
(お堅い。そしてタイト様は、本当に真摯で律儀なお方!!)
「子細ありませぬ」と、タイトはほんの少し遠い目をしながら、窓の外を見ると、月の質問に答え始めた。
「三日月様は、私の一族【ジーヴル=フェネ】をご存知でしょうか?」
「あ、あの。いえ……申し訳ありません」
肩をすくめ、謝罪する月。ただでさえ歴史に疎い月。それがイレクトルム王国の話となれば、当然知らない事ばかりだった。
「いや、詫びなさるな。この上なく尤もな答えであり、三日月様が思慮に恥じる事ではありませぬ。しかしながら本日、他に申事もございますゆえ、簡潔に」
タイトは外へ向けていた視線を戻すと、月と向き合い、話す姿勢に入る。
ふわぁああ!!!
(あっ、まただ。この感覚……それに、辺りの空気が変わった?)
――「見えずとも、見らずとも。“視る”能力……」
そう言うと、月の瞳を再度見つめるタイト。
その瞬間、瞬きを忘れる程に、再びタイトの世界に惹き込まれていく。
「我々フェネ一族の『選ばれしフェネの血を後継する者のみが持つ特有能力内』、その力にございます。之にフェネの力は、他者が如何にして真似ようとも、同等の能力を有する可能性は皆無であり……」
月は、思っていたよりも難しい問題だったと、頭の中はふらふら~はてなマークが浮かび始めていた。しかし、自分から聞いたのだから! と、必死で説明を理解しようと一人、悪戦苦闘していた。
「な、なるほどです。えーっと、ではその後継者? というのが」
一生懸命、話についていこうと頑張る月の頬は、少しだけ桃色になっていった。その真剣で真面目な月の姿がタイトの瞳には、初めて勉学に励む幼い子供のように見え、とても可愛らしく映る。
(なるほど……。太陽様が大切になさるお気持ち、甘心だな)。
タイトの目尻が、微笑むように少しだけ細くなると、優しく月に声をかけ、話は一旦切り上げられた。
「これより先の話は、少し難しく、深く、なりますゆえ。三日月様、またの機会にゆっくりとお話を」
そしてタイトは、艶々の美しい狼カットの髪をなびかせ、また歩き始めた。しかし先程とは違い、月の歩幅を気にしながら、さらにゆっくり、のんびりと。
「は、はい! えっと、お話……ありがとうございました」
慌てて歩き始め、後ろからついて行く三日月。
この時、「また、よろしくお願い致します!」と、月はタイトにお礼と次のお願いをしつつ、心の中ではルナガディア王国だけでなく、イレクトルム王国の事も、密かに学びたいと思い、今後の身の振り方を考え始めるのだった。
お読みいただきありがとうございます♪
(読んで下さる方がいてくれるだけで頑張れマシュ!)
ハイ! もちろん書き始めた頃と心は変わっておりません(/・ω・)/
『完結目指してがんばります』なのなのですッ♡
しかし、更新が遅くなり申し訳ありません(>へ<)
今後とも、よろしくお願い致しまする~☆




