91 いつもと違う朝
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コンコン、コンコン。
(あっ、星様かな?)
朝食後、食器の片付けや、もろもろ準備が終わる頃。玄関の扉を叩く音がした。
「はぁ~い!」
今日も変わらず、いそいそとお弁当の準備をする月。訪問者へ返事をしつつも、今はちょっと手が離せない。
(うーん……頼んじゃおうかな!)
居間で二人、楽しそうにゴロゴロと遊んでいる可愛い双子ちゃんに、申し訳ないなと思いながらも、お願いをする。
「メル・ティル~ごめん、げん……」
お願いを言いかけたところで、月は二人の動きに気付き笑いが込み上げてくる。もうすでに二人は玄関の前に立ち、今まさに扉を開けようとしていたからだ。
「あぁ、うっふふふ。ありがとう」
微笑みながらそう言うと、メル・ティルはチラッと月の方を見て、にっこぉ♪
「にゃにゃ?」「にゃっは?!」
そしてゆっくりと、扉を開けて――。
ガチャッ……。
キャキャキャ―――ッ!
「「おっはにゃあ~ん、セリィ―!!」」
訪問者は予想通り、星だった。
(良かった、星様だ……)。
いつもなら、メル・ティルを出迎える側の月。しかし今日は、その二人が玄関でお客様に「いらっしゃい!」と、言っている姿があって。
それを、遠目で見ている自分。その初めて見る状況が、なんだかとても可笑しく思えてきて、一人で笑いながら最後のおかずをお弁当に詰め、準備を終えた。
「やぁ、メルティ。おはよう」
(昨日のお約束通り、いつもメル・ティルが迎えに来る時間と、きっかり同じで。星様……ありがたい気遣いですよぉ)。
――でも。いつもと違う朝は、なんだかソワソワしちゃう。
「星様、おはようございます! あ、あの、えっと。私、荷物取ってきますね! すみません、もう少し待っていてください」
月は、少し落ち着かない様子で、しかし、とても新鮮な気持ちになりながらも、急いで奥の部屋へ鞄を取りに行った。
「月! そんなに急がなくてもいいよ」
そう言いながら星は、月が居間からいなくなったのを確認するとすぐに、二人に話をし始める。星の表情は厳しく、真剣そのもの。そしてメルルとティルへ聞いた内容は「ちゃんと月を護り、警備は出来たのか?」というものだった。
「僕が帰る時には寝ていたからね。信用はしているが……念の為、確認だ」
星は、メルルとティルの高さに目線を合わせると、あの深く蒼い瞳で二人の目を見つめ、質問をした。
「分ってるにゃ」「だいじょぶの」
「「月ねんねは護るじかん!!」」
そう話すメル・ティルは、両手を顎の下でグーッ! がんばったぁーのポーズ。二人は珍しく、クスリとも笑わず真面目な顔で答えている。
「そうか、良かった。さすが……メルティだね」
一瞬、ピリついた雰囲気は元に戻り、一気に優しい空気に変化する。そして星の穏やかな声が、二人を褒め称えた。
「よく頑張ったね、ありがとう」
お礼を言いながら、頭ナデナデ~、ヨシヨシ~♪
ちょうどそこへ、月が出かける支度を終え、部屋から出てきた。爽やかな表情、そして満面の笑みで星に話しかける。
「お待たせしました♪ 今日はとても気持ちの良い朝ですねぇ」
「おはよう、月。うん、よく眠れたみたいだね」
「ふえっ?! あの、は、はい!」
(今日も? 星様には、私の心が読まれているみたい)。
メル・ティルがいてくれたおかげで、ぐっすりと眠れた事を、星にピタリと当てられてしまった月は、少し戸惑ってしまった。
「あの星様。本日は朝早くからお迎えに来て頂きまして、ありがとうございます。心より、感謝致します」
そして今日はなぜか? 無意識に丁寧なお辞儀とご挨拶の姿勢になった。
「ふふっ。丁寧なご挨拶、どうも」
星は、その月の姿に微笑み、優しい声で答える。
「「つきつきぃ~♪」」
「あっ、はぁい。少し待ってねぇ……よし! さぁ、メルルさん、ティルさん♪ 今日のお弁当ですよぉ、どうぞ~」
はぁ~いと、メル・ティルに手渡す。
「わぁ~い美味しいにゅ」
(いや、まだ食べてないからぁ!)
「おかずはなぁにぃ~?」
(あぁ、まだ食べちゃだめよぉ!)
「ぷっ! ふふふ」
「んにゃっ! ほ、ほしさまぁ???」
「いや、ごめん。メルティも面白いが、月のその慌てる様子がまた……」
星は、あの言葉を言いかけて、ハッとして口をつぐんだ。
「はぅー、もぉ~……」
プンプンと言いながらも、今日もパワー全開! の二人を見て、膨らましていた月のほっぺたは、すぐに笑顔に変わる。
そして星と月は、メル・ティルを見て、ほやほやっと癒された。
(いつものルーチンとは違ったけれど、楽しくて賑やかなのは変わらない)。
「では、そろそろ行こうか」
「「にゃーい」」
星の呼びかけで、返事をするメル・ティル。
「さぁ、月も行こう」
(星様は今日も、優しく声をかけてくれる)。
「あの、星様!」
そんな星に、月は渡したいものがあった。
「うん? どうしたの?」
「こ、これ。あの! お弁当を……」
星の分までお弁当を作っていた月。しかし、いざ渡すとなると恥ずかしくなり、なかなか言い出せなくなっていた。
「な、なんと! 僕のも作ってくれていたの?」
――コクッ。と、頬を赤らめながら頷く月。
「い、お嫌でなければ……」
「月……。それは」
(あぁやっぱり? 何だか今日はいらないって断られそうな気がしていたから)。
「い、いいのです!! すみません、勝手に作って」
あたふたと月が話していると、星が笑って答えた。
「違うよ、勘違いしないで月。それは、今日のランチの時間に頂こうと思って」
――エッ?
「いつもの場所で、一緒にどうかな?」
星の突然の誘いに、月の心臓はまた、ドキドキが止まらなくなる。
(いつもご一緒しているのに! 改めて言われると!)
「はぃ。う、嬉しいです。あり、とぅ……います」
恥ずかしさと緊張で声は小さくなり、高鳴る鼓動は体中に響いている気がした。そして言葉は、フェードアウト。
「ふふっ。では、ランチの時間にまた」
「は、はい」
――本当の意味での“幸せ”……って?
ガチャッ……――!!
「「出発なのらぁ~♪♪」」
「メルティ! 走ると危ないよ」
メルル、ティル、星の順番で部屋を出て行った。
月は、部屋の戸締り確認を終えると、昨日星にもらった、アンティークハートの置物から、結界を強くするために掛けていた『蒼い石のブレスレット』を、優しく手に取った。そして今日も、右手首に付けると、キラッと星屑のように光る蒼い石を、大切そうに愛でた。
「全ての人々が、幸せな一日になりますように……」
そう、呟きながら。
そして星の、いつもならサラッと言えていた、あの言葉。
なぜか今は、いつものように言えなくなっていた『言葉』
――慌てる様子がまた、『可愛いと思って』と。
本当はそう、言いたかったのだった。
最後までお読みいただきありがとうございます♪
次話は……太陽君の……?
おたのしみにぃ(*´▽`*)




