表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第三章「悪魔の天使」
113/184

第一一三話「メガネは外せるから良いんだよ派とメガネは絶対着けてないと駄目だよ派」

 私たちが家に辿(たど)り着いたのは午前九時(ごろ)だった。アンナを()れていたから時間が()かってしまったよ。


「リーファちゃん! みんな無事(ぶじ)だったか!」


 家の前ではずっと待っていたらしいサマエルさんとシャムシエルが立っていた。余程(よほど)心配していたのか、サマエルさんはアンナのことをぎゅぅっと()()める。アンナには(さら)われていたという自覚(じかく)が無いため、(わけ)も分からず長姉(ちょうし)に抱き締められて頭の上に疑問符(ぎもんふ)()かんでいる様子(ようす)だった。


「って、シェムハザだっけ? アンタも一緒(いっしょ)だったんだ。そういやアザゼルの副官(ふくかん)だったっけ」

「そうだ。君は変わらんな、サマエルよ」


 あ、そうなの? アザゼルを様付けで呼んでいたのはそういうことだったのか。


「……リーファ、事情を話せずすまなかった。苦労(くろう)を掛けたな」

「シャムシエル……。いいえ、仕方の無いことです。力天使(ヴァーチャーズ)と言えば能天使(パワーズ)よりも(くらい)が上ですよね?」

「……そうか、マスティマ様の正体(しょうたい)が分かったのだな」


 シャムシエルはミスティがこの場に居ないことからすべてを(さと)ったようだった。


「さ、ここで立ち話も何ですし、中に入りましょ。お母さん(つか)れちゃったわ。リーファちゃん、お風呂(ふろ)背中(せなか)流してくれない?」

「……分かりました。と言いますか、わたくしも疲れているのですが……」


 なんとなく釈然(しゃくぜん)としないものを感じながら、私は母さん、アンナと一緒にお風呂へ入ったのだった。




「上がりました。お待たせをいたしまして(もう)(わけ)御座(ござ)いません」


 お風呂ですっかり汗を流した私たちがリビングへ(もど)ってくると、のんびりしているサマエルさんとアザゼル、そして何やら話題が紛糾(ふんきゅう)している様子(ようす)のシャムシエルとシェムハザが居た。


「なに、(かま)わない。こちらはこちらで()もる話もあったからな」

「そうなのですね。……ところで、あの二人は何故(なぜ)あのように()り上がっているのですか?」

「わかんない」


 シャムシエルたちを指さしながらサマエルさんとアザゼルに問うてみるも、二人も分からないらしく、(とも)(かた)(すく)めている。


「だからな、メガネは基本()けたままで居て()しいという君の気持ちも理解(りかい)出来(でき)ないことも無いが、メガネというのは(はず)した時のギャップが良いのだ。()の美しさがあってこそだろう?」

「いやいや、シェムハザ殿(どの)。メガネが似合(にあ)う娘というのは、メガネが素の美しさを(さら)に引き立てているからなのだ。それを外してしまっては結果的(けっかてき)魅力(みりょく)が落ちてしまう。私は断然(だんぜん)外さない()だな」

「………………」


 なんだろう、すっごく理解したらいけない話のような気がしてきた。サマエルさんたちもそれを分かっていてこの二人を放置(ほうち)しているのかも知れない。


「シャムシエルお姉ちゃんたち、何話してるの?」

「アンナちゃん? (さわ)っちゃいけませんよ~」


 二人に近づこうとしたアンナの(かた)(つか)み、母さんがやんわりと止めた。もはや()れてはいけない存在(そんざい)にされてるよ……。




 五月蠅(うるさ)いのでシャムシエルたちの論争(ろんそう)無理矢理(むりやり)()()って中断(ちゅうだん)させた後、私たちは魔術で陛下(へいか)連絡(れんらく)を入れていた。どうやら謁見(えっけん)中らしいので待っていると、ややあってから陛下に()()(むね)の連絡が来た。


「待たせたな、アナスタシアよ。ミスティというシスターに動きがあったと聞いているが」

「はい、実は……」


 母さんが代表して、昨晩(さくばん)あったことを陛下へ説明する。その流れで勿論(もちろん)アザゼルとシェムハザの紹介(しょうかい)もしておいた。


 事情を把握(はあく)した陛下は、「また厄介事(やっかいごと)()()んだな」と頭をお(かか)えになった。今回の(けん)はどちらかと言うと私の存在が原因なので申し訳ない気持ちになる。


神国(しんこく)の天使マスティマか……。あいわかった、御前(ごぜん)の天使ラグエルへ連絡を入れておく。其方(そなた)()も十分に警戒(けいかい)しておくのだぞ」

「よろしくお願いいたします」


 陛下との通信を切って、私は小さく溜息(ためいき)()く。ラグエル様やメタトロン様ならシャラに理解(りかい)もあったので大丈夫だろうけど、(ちょう)保守(ほしゅ)派を(せい)してまでマスティマを止めて(いただ)けるかは微妙(びみょう)な所だ。あの方々にも立場(たちば)というものがあるだろうし。


「そんな顔をしなくても大丈夫よ、リーファちゃん。きっと御前の天使だったら上手くやってくれるわ」

「そうであれば良いのですが……」


 私は一抹(いちまつ)の不安を(むね)に小さく(うな)った。マスティマは神罰(しんばつ)と言っていた。標的(ひょうてき)は私だけに(しぼ)ってくれればいいんだけど。


「そう言えばさ、アンタたちはこれからどーすんの?」

「む、俺たちか?」

「どうする……ですか。確かに、マスティマから解放(かいほう)された我々は自由ですし、何処(どこ)へなりとも行けるのですな」


 クッキーを()まみながらサマエルさんに(こた)えるアザゼルとシェムハザ。あー、アザゼルが随分(ずいぶん)食べるので数が()ってきた。また焼かないと。


「そうだな、聖女リーファは(おん)もあるし、こちらで働かせて(もら)うというのはどうだ?」


 え、アザゼルがここに()み込みでってこと? うーん、正体バレたくないんだよなぁ。


「まぁまぁ、アザゼル様。ここは百合(ゆり)の……ではなかった、乙女の(その)です。男の我々が居てはお邪魔(じゃま)になってしまうこともあるでしょう」

「ふむ、一理(いちり)あるな……」


 シェムハザが(さと)してくれたけど、何か言いかけたな。百合ってなんだ。なんかシャムシエルが強く(うなず)いているのが気になる。


「んじゃー、村に住むのはどうよ? アザゼルは家事(かじ)得意(とくい)っしょ? 酒場とか食堂で働いたり、あとはミスティが居なくなったし、(かり)教会で神父(しんぷ)の手伝いとかしたら? 神父のおっちゃん、ずいぶん年だし、(よろこ)んでくれると思うよ」

「酒場に食堂、仮教会か、なるほど」


 感心したように頷いているアザゼル。悪魔の(くせ)に教会で働くことへの抵抗(ていこう)は無いのか…


◆ひとことふたこと


出会ってはいけない者同士が出会ってしまいました(笑)

それにしてもタイトルの酷さよ。

言うまでもありませんが、この世界でメガネは既に存在しています。


クリスマスイブ、ということで物語に関係無い話ですが一つ。

この時期に飾られるクリスマスツリーですが、これはキリスト教由来ではありません。

ドイツの伝統行事「ユール」発祥で、そこで飾っていたもみの木が元となっています。そこからキリスト教が取り入れたのですね。

ツリーのオーナメントには、東方の三賢者を導いたベツレヘムの星を模したてっぺんの星飾りや知恵の実を模したりんごの飾りなどそれぞれ意味があり、調べてみると面白いですよ。


--


次回は明日21時半頃に更新予定です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ